2017年6月26日

【専門家監修】犬の留守番は長くても良い?しつけのポイントとは

監修にご協力いただきました!

中井真澄先生

Waggy Smile  代表

1964年生まれ。中央大学卒業後、中学校教諭として4年間従事。

 

1996年に日本訓練士養成学校に入学。JKC公認訓練士及び日本警察犬協会公認訓練士の資格を修得。訓練所勤務を経て、都内動物病院内で、ドッグスクールの専属トレーナーとして勤務。

 

2011年6月から半年間、Londonでの語学留学を終えて帰国。帰国後『Waggy Smile』を立ち上げる。

犬はもともと群れで暮らしていた生き物です。だからこそ、人間社会に適応するペットとして人気が高いのですが、一方で「留守番が苦手」という特性も持っています。

実際に「家に愛犬がいるから」と外出をためらう飼い主の方もいらっしゃるはずです。

しかし、そのような関係性は飼い主にとって負担が大きいばかりか、犬のためにもなりません。

社会化期に適切なトレーニングを積んでおけば、留守番が苦手な犬でもおりこうに留守番できるようになります。

子犬に教えるポイントをご紹介しますので、各項目をぜひ参考になさってください。

留守番のしつけは「犬の社会化」訓練のひとつ

床に伏せて飼い主を見上げているジャックラッセルテリアの子犬 飼い始めたばかりの子犬は特に“孤独”を嫌がるはずです。「かわいそうで一人にしておけない」となるべく一緒に過ごそうとするケースもあるでしょう。

それもまた飼い主心理の一種ですが、子犬だからこそ馴致しやすいということをよく認識していただきたいと思います。「馴致」とは、次第に慣れさせること、なじませることです。

犬の生後 3 週齢から 14 週齢あたりまでの時期は、社会性を育む「社会化期」と言います。しつけに最も適した期間ですから、お迎えした子犬のタイミングを逃さず訓練を始めることをおすすめします。

愛犬の留守番トレーニングがうまく行けば、以下のような「いいこと」があります。

子犬に留守番のしつけをするメリット

・飼い主の都合(入院など)に大きく制限がかからない
・留守番に抱く不安が軽減される
・隣人とのトラブルが回避できる
など

飼い犬がいる方であっても、家を離れなければならない理由は必ず発生するものです。犬が留守番できないままでは、誰かに預けるというわけにもいきません。

最初は飼い主もつらいと感じるでしょう。ですが、犬と人とが共生するために踏まなければならないステップのひとつでもあります。

留守番中に愛犬が問題行動を起こしてしまう理由を理解しよう

ドアを壊しているボストンテリアの子犬 そもそも犬は留守番が苦手だということを、よく理解してください。これは人間の「さびしがり」とはわけが違うのです。

本能的に「孤独」を恐れるようになっているので、留守番にはしつけが欠かせません。

「留守番はこわくない」と犬に認識させられれば、飼い主ともどもストレスを軽減できるはずです。

犬は本来群れで生きる動物です。犬は群れの中で親やその他の成犬、または子犬に囲まれて「犬の社会性」を身に付けます。

群れの大きさは問題ではなく、集団の中でこそ安心感を得るようになっています。

だからこそ、子犬で迎えた時から留守番などへの馴致が必要というわけです。

ただし、犬の留守番は 12 時間を超えると悪影響が出る恐れがあります。

しつけが完了済みであれば半日程度を目安にするといいでしょう。

トレーニング未完了の段階では、さらに短時間に抑えるべきです。

犬の留守番トレーニングは、犬の社会化期に行うべき「社会化馴致」のひとつでもあります。

しつけやすい時期を逃さず、犬の習性や本能をうまく利用しつつ成長過程に合わせて適切な訓練を行うようにしてください。

<犬を“留守番下手”にする行動をチェック!>
・外出の無い日は犬とベッタリくっついている
・突然長時間の留守番をさせる
・落ち着く場所(ハウスなど)を与えていない
・ハウストレーニングが完了しないままハウスでの留守番をさせる
・犬を飼い始めた時に、家に必ず誰かがいるという期間があった

留守番トレーニングがうまく行かないという方にはこのチェックリストが役に立つはずです。

5つのポイントで気になる項目はありませんか?当てはまるものがあったとしたら、そこから改善することをおすすめします。

犬と人間がお互い快適に「同じ群れ」で過ごすには、自分一人で過ごす時間がある程度は必要です。

留守番以外の時間に過剰なスキンシップをとっているとしたら要注意です。


犬の留守番トレーニングの前に準備を整えよう!

バスケットボールのおもちゃで遊ぶ子犬 愛犬に留守番のしつけを始める前に、飼い主と犬にはいくつか準備するものがあります。社会化期のトレーニングはトイレ、ハウス、留守番と関連しあっているものが多いので、順序を間違えないように計画を立てておくといいかもしれませんね。

子犬の留守番のしつけに必要なもの

・ハウストレーニングを完了しておく
・おもちゃ(一人で遊ぶ用)
・ごほうび(おやつ、おもちゃ、褒める行為)

ハウストレーニングを完了しないまま留守番のしつけを開始してしまうと、そのことが犬の問題行動を引き起こす原因になりかねません。

犬がハウスに慣れ、「自分の空間」「安心できる場所」としっかり認識できてから留守番の訓練に入ってください。

おもちゃはなるべく長く遊べるものを選びます。条件は「硬すぎないもの」「犬の口に入らない大きさ」「犬がかみ切れない頑丈さ」などです。例としては、フードを入れられるタイプが便利です。

複数のおもちゃを与えて遊ばせ、「一番のお気に入り」と「お気に入り」を確かめておきます。「一番のお気に入り」はあまり多用しないように調節しましょう。

子犬の留守番のしつけ方【実践】

くまのぬいぐるみを枕にして寝ているジャックラッセルテリアの子犬 子犬の留守番トレーニングはステップを踏んで実践していきます。段階のひとつひとつでしっかり馴致させることが大切です。

【STEP1】一人でいることになれさせる

・家にいる時も飼い主と別の部屋で過ごす時間をつくる
・フードがいれられるなど、長く遊べるおもちゃを与えて一人遊びに慣れさせる

事前準備で用意したおもちゃが早速活躍します。フードが入れられるおもちゃなどは、「遊べる」という楽しみに加えて、犬が工夫をした結果「おやつを食べられる」という喜びが得られます。

長時間おもちゃに集中できるため、飼い主がいないさみしさから注意をそらすことができるのです。

【STEP2】愛犬にハウスで過ごすことへ慣れさせる※徐々に時間を長くする

・ハウスは無理に入れず「いいことがある場所」とゆっくり認識させる
・ハウスにおやつを入れるところを見せ、自分の意思ではいるよう促す

ハウストレーニングにはまた独自のメソッドがあるので、別の機会に詳しくご紹介します。ハウスに慣れれば犬が自分からハウスに向かうようになります。

決して無理強いしないようにしてください。ポイントは徐々に時間を長くすることです。

【STEP3】短時間の留守番をさせてみる※徐々に時間を長くする

・玄関を出てすぐ戻る→数十分程度散歩して戻る→一時間ほど家を空けてみる
・慣れてきてもランダムに短いお出かけを挟み、「家を出たらしばらく戻らない」という不安を覚えさせない※パターン化しない

STEP3では、最初はごく短時間の「留守番」ですが、徐々に時間を長くしていきます。犬にとっては「飼い主の姿が見えない」という状態がすでに「留守番」です。

また、飼い主の外出が規則的になると、犬が慣れて「このタイミングで外に出るとしばらく帰ってこない」と学習してしまいます。留守番のタイミングをパターン化しないように考えていただきたいと思います。

【STEP4】留守番とあわせて「預けるトレーニング」も!

・子犬の時から「預ける練習」も馴致しておく
※飼い主の都合で犬を預けなければならなくなった時のため
・「預ける練習」におすすめの預け先について
ペットホテル、身内(実家)、犬友達、ペットホテルを兼ねたサロンなど
・「預ける練習」にあたって役立つしつけ
ハウストレーニング、トイレトレーニング、留守番トレーニング

入院や冠婚葬祭などで長期間家を空けなければならない場合、だれもいない家に犬を放置できませんよね。犬を連れていけるケースもあるかもしれませんが、少なくとも日本国内では困難を伴うでしょう。

そこで、留守番トレーニングと同時に「預けるトレーニング」もしておくことをおすすめします。犬に社会性を身に着けさせるしつけの一環なので、これもできるだけ早いうちに済ませておくべき段階なのです。

留守番トレーニングには「ハウストレーニング」がSTEP2として組み込まれていますよね?このように、社会化期のトレーニングは相互に関連しています。それぞれがかかわりあって前に進むので、ひとつずつの訓練を焦らずゆっくりと進めていってください。

時間の延長やステップアップは慎重に!


犬の留守番は徐々にステップアップすること、少しずつ時間を長くすることが、すべてのSTEPに共通する「コツ」です。

どんなしつけも最初はごく短時間、子犬の場合は 2 分から 3 分程度がほどよい長さです。それより短い時間であっても、「犬が疲れている」「集中していない」と感じたら終了するようにしてください。

犬がトレーニングを楽しめれば、自ら進んで飼い主が望む行動を選ぶようになるはずです。また、楽しい時間を共有する経験の積み重ねが、犬と飼い主の信頼関係をより強いものへと育ててくれます。

正しいしつけを実践しているのにどうしてもうまくいかないという時もあるかもしれません。そして、その原因がわからないケースもあるでしょう。

そうした場合には専門家にご相談なさることも選択肢のひとつです。いざというときにいつでも相談できるトレーナーなどを探しておくことをおすすめします。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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