2017年10月26日

【弁護士が解説】散歩中に愛犬が他人を咬んだ!治療費や賠償金は?

監修にご協力いただきました!

平成15年3月 東北学院大学法学部 卒業
平成17年3月 東北学院大学法学研究科 修士課程 修了
平成17年10月 司法試験 合格
平成19年10月 石井慎也法律事務所 入所
平成24年3月 法律事務所絆 入所
平成28年8月 はづき法律事務所 開設

寒い季節になってくると、人間顔負けのお洒落な服を着て散歩する犬を見かけるようになりますね。

愛らしさに思わず飼い主に声をかけ、寄ってきた犬を撫でようと手を伸ばす…。

微笑ましい光景ですが、もし、何かの拍子に愛犬が相手を咬んでしまったらどうなるでしょうか。

犬による咬傷事故のデータを見ると、事故の態様としては、公共の場所で散歩中、通行人を咬んでしまうというパターンが多いようです。

愛犬が人を咬んでしまったら…

病院の待合室 愛犬が人を咬んで怪我をさせてしまった場合、まずは謝罪して傷の状態を確認し、できれば医療機関の受診を勧めましょう。

病院に行くことを強制はできませんが、動物の咬み傷は、傷跡が小さくても後に化膿して重症化するケースも少なくありませんので、そのことを伝えて注意を促すべきだと思われます。

また、咬傷事故を起こした犬の飼い主には、各自治体の条例等により、保健所等への届出や狂犬病に罹患していないことについて獣医師の検診を受けて証明書を提出することが義務付けられています。

最寄りの保健所等に確認の上、漏れなく手続を行いましょう。

被害者に対する賠償責任

ノートにメモを取る人 民法718条は、動物の占有者・管理者の責任として、その動物が他人に与えた損害を賠償する責任を負うと定めています。

したがって、被害者から、怪我の治療費や通院のための交通費、慰謝料等を請求されれば、一定額を支払う責任は免れられないでしょう。

また、もし被害者の怪我の状態が酷くて仕事を休まなければならなかった、などの事情があれば、欠勤による減収分も賠償しなければならない可能性があります。

以前、某芸能人が飼育していた大型犬がマンションの隣人を咬んだ事件では、犬に対する恐怖心から被害者が転居してしまい、不動産管理会社が飼い主に対し「被害者転居により失われた家賃収入相当額」を損害として請求したという報道がありました。

頭を撫でられるフレンチブルドッグ 飼い主がどこまでの賠償責任を負うかという問題はなかなか判断が難しいこともありますが、たとえ怪我の程度が軽くても、思いがけず高額な賠償責任を負う可能性があることは認識しておくべきでしょう。

なお、被害者の方のほうから愛犬に近づき、「飼い主の承諾も得ずに手を出した」というようなケースでは、被害者の方にも過失があるとして、一定の過失相殺(発生した損害総額から、被害者の方の落ち度をふまえ何割か差し引くこと)がなされるかもしれません。

事故直後、まずは謝罪すべき場面で被害者の落ち度を指摘することは避けるべきですが、後に賠償額を巡って紛争が起きることもありますので、事故が起きた状況については、時間が経過してからでもきちんと説明できるよう、できるだけ記録を残しておくことをお勧めします。


咬みつき事故を未然に防ぐには?

散歩中の飼い主と犬 当たり前のことですが、愛犬が人を攻撃したり咬んだりしないように、普段からしっかりしつけを行うことが基本です。

そして、愛犬の性格や行動傾向を把握し、もし人を咬む危険がある場合には「見知らぬ相手には触らせない」、「他人の手が届くような場所には係留しない」、「散歩の場所を選び通行人と距離をとる」など、十分に注意をしなければなりません。

この点、犬の係留場所付近に「咬むので危険」等の張り紙で通行人に警告するだけでは十分な注意とは言えませんので、檻や扉で隔離するなど物理的に確実な措置を講じる必要があります。

犬を触る子ども また、通行人が手を出して咬まれたというケースでは、被害者が子どもであることが少なくありません。

特に幼い子どもの場合、咬まれた拍子に倒れて頭を打ってしまうなど、予想外の怪我を負う危険もあります。

たとえ大人しい犬であっても、見知らぬ子どもと触れ合うような場面では、よく気を付けて見守らなくてはなりません。

なお、事故そのものを未然に防ぐ措置とは言えませんが、ペット保険や自動車保険に付帯した個人賠償責任保険に加入し、愛犬が咬傷事故を起こした場合の賠償責任に備えておくことも、飼い主としては検討に値する選択肢といえるでしょう。

まとめ

飼い主を見上げる犬 実際に、犬の咬傷事故で弁護士に相談に来こられる被害者は、「怪我はたいしたことがないけれど、飼い主の対応に誠意がなくて納得できない」と怒っておられることが多くあります。

大切な愛犬が他人を咬んでしまったら、飼い主の方も動転してしまうと思いますが、誠意を尽くして謝罪することに勝る対応はありませんので覚えておいてくださいね。

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文:髙城晶紀
宮城県仙台市のはづき法律事務所代表。
男女問題や相続、借金などの一般民事事件及び刑事事件に対応。
ペットを巡る法律問題に関するご相談・ご依頼も多数。 動物との共生を考える弁護士の会・東北(通称・ハーモニー)に所属。


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