2017年6月13日
【獣医師監修】犬の鼻水(鼻づまり)は放置NG! 原因と対処法
監修にご協力いただきました!
小竹正純先生
多摩獣医科病院 院長
2002年麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2006年多摩獣医科病院 勤務
2016年多摩獣医科病院 院長就任(現在に至る)
[川崎市獣医師会、日本小動物歯科研究会、再生医療研究会所属]
くしゃみを連発しているので風邪かなと思っていたら、鼻水が出始めた。1日様子を見ようとおもったら、鼻水がだんだんひどくなっていく。
元気があり、食欲があると様子を見たくなりますが、意外と重大な病気が隠れているかもしれません。
今回は、犬の鼻水の原因と対処法について解説します。
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犬が鼻水を垂らす原因とは
犬が鼻水をたらす原因にはどのようなものがあるのでしょうか?鼻水は「病気が原因の鼻水」「病気が原因ではない鼻水」に分けることができます。
病気が原因ではない鼻水
病気が原因ではない鼻水には次のようなものが考えられます。- 気候の変化によるもの
- 刺激臭によるもの
- 犬種によるもの(短頭種)
上記が原因の場合は病的な鼻水ではないので、様子を見ても大丈夫なケースと言えます。
長引いたり、なかなか改善しない場合は、獣医師の診察を受けることをお勧めします。では、それぞれ詳しく見ていきます。
気候の変化によるもの
特に、秋から冬になるにつれて、気温がぐっと寒くなる時期に起こりやすくなります。暖かい部屋から、散歩などで外へ出たときに起こりやすいのが特徴です。鼻水には、空気に湿り気を与えるという役割もあります。
乾燥した空気や冷たい空気が急に鼻の奥に入ると、粘膜が乾燥して大きな刺激になります。
それを防ぐためにも、鼻水が分泌され空気に湿度を与える働きは重要です。
刺激臭によるもの
鼻の奥には、においを感じ取る臭細胞があります。刺激臭は臭細胞を刺激したときに痛みとして感じられます。そのため、鼻を守るために粘液である鼻水を多く分泌して、鼻の細胞を守ろうとする働きが起こります。
犬種によるもの(短頭種)
パグやシーズーなどを代表とする鼻の短い犬種は、鼻道の形が曲がったり歪んでいることが多く、吸い込んだ空気もスムーズに流れません。反対に鼻の奥の粘膜で作られる鼻水もスムーズに排泄されず、鼻の奥が多湿になりやすい傾向があります。そのために溜り気味になった鼻水が漏れるように鼻の穴から出ることが多くなります。
病気が原因の鼻水
病気が原因の鼻水には、どのようなものが考えられるのでしょうか?主に以下のようなものがあげられます。
- アレルギー症状
- 細菌やウイルスなどの感染症
- 鼻炎
- 鼻周辺の病気(歯周病・鼻の腫瘍など)
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
アレルギー症状
人の場合、アレルギーで鼻水が出るときに真っ先に思いつくのが花粉症です。実は犬にも花粉症があり「季節性アレルギー」といいます。花粉が飛ぶ時期に合わせて目やにや涙目と同時にくしゃみ・鼻水がひどくなることがあります。鼻は外から入ってくる細菌・ウイルス・花粉やほこりを真っ先に受け止める場所です。
基本的に犬は鼻呼吸をしますので、外から入ってくる空気は必ず鼻の穴を通ります。
この空気の中に犬にとってアレルギーを起こすものが含まれていると、アレルギー反応が起こり、外に追い出すためにくしゃみが出たり、沢山のアレルゲンが体内に侵入しないように大量の鼻汁を分泌し絡めとる働きが起こります。
その結果通常より沢山の鼻水が出るようになります。
細菌やウイルスなどの感染症
基本的にはアレルギー症状のときと同じように、外から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体を鼻水が絡めとり対外へ出すために、大量の鼻水が出るようになります。特に呼吸器系に感染しやすい細菌やウイルスは鼻の奥の粘膜面で繁殖する傾向がありますので、鼻水の量は多くなります。
鼻炎
鼻炎には「急性」「慢性」「アレルギー性」があります。ここでは急性と慢性について解説します。急性鼻炎の場合、ウイルスや細菌が感染することで「くしゃみ・鼻水」が出ます。内服薬の投与や安静にすることで症状がよくなります。
一方、慢性鼻炎の場合は鼻炎の症状を繰り返しているので、鼻腔粘膜が充血した状態が続いたり、鼻腔の壁が肥厚してしまいなかなか良化しません。
鼻が詰まったようになり、においもわかりにくくなります。
鼻周辺の病気
鼻周辺の病気で代表的なものには、「歯周病」と「鼻腔内腫瘍」があります。歯周病
特に上顎の歯肉に炎症が起こったり、歯に歯石がたくさん付着した場合に、鼻に炎症が起こりやすくなります。上顎と鼻腔は非常に近く、上顎歯肉の炎症は重度になると鼻にまで及びます。その結果、鼻水がたくさん出るようになります。炎症のひどい側の鼻腔に炎症が起こるので、片側だけから鼻水が大量に出る時は、歯周病が原因の場合があります。
鼻腔内腫瘍
鼻の奥に腫瘍ができることがありますが、外から見えないために発見が遅れることが多く、治療も難しい腫瘍です。初期症状は鼻汁が出るで、風邪などの症状とよく似ています。最初はサラサラした鼻汁ですが、だんだん膿性の鼻汁になり血が混じるようになります。
初期症状の時には呼吸困難はありませんが、腫瘍のサイズが大きくなると呼吸困難がひどくなります。
さらに大きくなると鼻が盛り上がってきたり、目やにが多くなる、顔が片側だけ膨らんで見えるなどの症状が起こります。
症状からわかる犬の鼻水の原因と対処法
犬の鼻水やそれに伴う症状で原因をおおよそつかむことができます。症状別原因と対処法について解説します。犬が鼻づまり、膿性の鼻汁を出す
<原因>
腫瘍、歯周病、鼻炎、副鼻炎など<対処法>
腫瘍
腫瘍の場合は慢性的な鼻汁(膿様、血膿様)が片側の鼻から出ることが多いのが特徴です。外から見てもわかりにくいことが多く、長期的に鼻汁が出るならば、確認のためにCTを撮る場合もありますので早めに診察を受けるようにしましょう。
歯周病
片鼻からの鼻汁の場合は必ず口を確認します。歯石の付着が重度の場合は、歯石が原因の歯周病で、根尖膿瘍がある可能性が高いです。麻酔下で歯石を除去・ぐらつきのある歯を抜歯することで症状は改善します。
麻酔をかけるリスクが高い場合は、抗生剤と消炎剤の投与などの処置をする場合があります。
鼻炎、副鼻炎
細菌感染があり、白血球が細菌を貪食処理した後に出る膿の混じった鼻水です。獣医師による診断のもと、抗生剤や鼻汁粘液溶解剤、消炎剤などを内服し安静にすることが大切です。
透明でさらさらした鼻水を流している
<原因>
アレルギー、刺激臭、気候変化<対処法>
アレルギー
アレルギーの原因は、ハウスダストや花粉などが多いので、空気清浄機を利用し空気中のアレルゲンをできるだけ除去したり、症状がひどい場合には投薬する場合もありますので、まずは獣医師の診察を受け、適切な処置を受けるようにしましょう。刺激臭
刺激臭は、痛みとして感じられるものです。あまりにも強い場合は鼻の粘膜をいためてしまったり、最悪の場合は鼻の感覚が鈍くなることもあります。犬は鼻をふさぐことができませんので、換気をよくするか、においの元から遠ざけましょう。
気候変化
寒すぎる、暑すぎる、急激な気温変化は鼻汁の元です。暖かい部屋から寒い外に散歩に行ったりすると、急激な気温変化から鼻水が沢山出ることもあります。室内犬の場合は、お部屋の暖房の温度をあげすぎないことも大切です。
水っぽいさらさらな鼻水→どろついた鼻水
<原因>
ケンネルコフの疑い<対処法>
ケンネルコフは、アデノウイルス2型や犬パラインフルエンザウイルスなどが原因になる子犬に多い伝染病です。まず、大切なのは混合ワクチンを接種することです。ワクチンを打っても感染がゼロになるわけではありませんが、体の中に病気に対する抗体を持ちますので、たとえ感染しても症状は比較的軽くなります。
初期症状はくしゃみと軽い鼻水ですが、疑わしい場合は早めに動物病院を受診しましょう。こじれてしまうと肺炎を起こすことがあり命にかかわります。
目の充血が伴う
<原因>
アレルギー<対処法>
目の充血が伴う鼻水の場合は、アレルギーのことが多いです。空気清浄機を利用し空気中のアレルゲンをできるだけ除去したり、症状がひどい場合には、抗ヒスタミン薬やステロイド薬を投与する場合もあります。元気が無く、発熱などが伴う
<原因>
感染症<対処法>
元気がなかったり、発熱を伴う場合は細菌やウイルスの感染を疑います。症状が悪化すると、肺炎を起こすこともありますのでしっかり治療する必要があります。特に、呼吸の悪化に注意してください。呼吸しにくくなると犬座姿勢(犬座り)をとり横になることを嫌うようになります。
また、犬座姿勢で鼻を上に向ける様な姿勢になると、さらに呼吸が苦しくなっていることがわかります。緊急事態ですので酸素吸入(スポーツ用の酸素ボンベが手に入りやすく便利です)しながら動物病院にすぐ行きましょう。
まとめ
鼻水は、異物の排除や吸い込んだ空気に湿度を与えるなどの役割を持っています。鼻の外に鼻水が出ている状態は、量が少なくても何らかの問題が起こっている可能性があります。できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
その場合、鼻水の量はどのくらいか、鼻水の色、どちらの鼻の穴から出ているのかをチェックして受診すると診断や治療のヒントになります。
治療が遅れるとそれだけ治癒までに時間がかかるようになりますから、早期発見・早期治療で快適な毎日を送れるようにしてあげましょう。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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