2017年10月18日

【行政書士が解説】Q「もしもに備えて、ペットへ財産を遺す方法はありますか?」

監修にご協力いただきました!

平成元年3月 法政大学法学部法律学科卒業

(司法試験浪人)
平成4年3月 株式会社市進(現、株式会社市進ホールディングス) 入社
平成25年1月 行政書士試験 合格
平成28年2月 行政書士齊藤学法務事務所 開設

残念ながら、日本の法律ではペットに財産を遺すことはできません。それでも、愛するペットのために何とか財産を遺してやりたいと、知恵を絞った飼い主の方は大勢おられました。

そのアイデアが「負担付き相続(遺贈)」というものです。

「負担付き相続(遺贈)」で愛犬に財産を遺す仕組み

積み重ねられたトランクの上に伏せるジャックラッセルテリア 通常の相続(遺贈)の場合、遺言書には次のような言葉が並びます。

「●●に、すべての財産を相続させる(遺贈する)」

「□□には、自宅不動産を相続させる(遺贈する)」

負担付き相続(遺贈)の場合には、先ほどの文言に条件が付きます。

私の飼っている柴犬の花子のめんどうをみてくれることを条件に●●に、すべての財産を相続させる(遺贈する)」

我が家の猫たちをこのまま自宅で飼い続けることを条件に□□には、自宅不動産を相続させる(遺贈する)」

直接ペットに財産を遺すことはできないので、相続(遺贈)に条件を付けて、結果としてペットに財産が使われるように遺言書を遺すのです。

しかしこの方法には弱点があるのです。

愛犬への「負担付き相続(遺贈)」にもリスクはある

飼い主の両手で顔を包まれている犬 相続人(受贈者)が「そんな条件が付くなら、遺産は要らない」と言う可能性があります。

また、条件付きで構わないと相続(受贈)しておきながら、誰にも気付かれないようにペットを処分してしまう…、という恐ろしいことが起きる可能性もゼロではありません。

つまり、遺言を書いた後のことを誰も保証できないのです。

そして最大の弱点は、この方法は飼い主さんが亡くならないと始まらないということです。もしも病に倒れたら、もしも認知症になってしまったら、「負担付き相続(遺贈)」では太刀打ちできません。

そこで最近登場したアイデアが、民事信託の仕組みを使った方法、ペットのための信託です。



「ペット信託」なら突然の病気や入院でも安心

基本的な仕組みは次のようなものです。

飼い主さんが「ペット」と「ペットを飼う費用」を信用できる人に託すのです。法律用語では、このときの飼い主さんを「委託者(いたくしゃ)」、託された人を「受託者(じゅたくしゃ)」と言います。

更に、託した「ペット」と「資産」を「ちゃんと管理して」と受託者に注意したり、「引き渡せ」と言えたりする権利を「受益権(じゅえきけん)」と言い、それを持つ人を「受益者(じゅえきしゃ)」と呼びます。分かりやすいように図にしてみましょう。
ペット信託
この仕組みを使うと、飼い主さんが入院や施設入所された場合にも対応できます。お元気なときはペットと暮らし、万が一のときはちゃんとめんどうをみてくれる人がいて、その費用も工面できているという状態です。

飼い主さんと託される人とは、事前に契約内容を確認してお互い納得の上で契約書を交わしますから、飼い主さんが亡くなってからも問題はありません。

信託した資産は相続財産とは別の扱いになりますから、遺産分割の対象にもなりません。

つまり信託した資産は、すべて愛するペットのために使われるのです。

飼い主の男女と砂浜を散歩中の犬 それでも人間のすることですから、心配だと思われる方もおられます。その場合には、この信託という仕組みを見守る信託監督人を置くことができます。

民事信託についての詳細は、信託を専門とする弁護士・司法書士・行政書士等の専門家にご確認くださいね。

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文:齊藤 学
小学生時代は小説家、中学生時代には弁護士になる夢を持つ。高校生の頃に獣医学部を目指すも、数学が苦手で挫折。小説家と弁護士を天秤にかけ、弁護士の道を選んだものの、結果は見事惨敗。

東日本大震災をきっかけに、法律の勉強に再チャレンジ。家族を説得して脱サラし、行政書士事務所を開設。

日々持ち込まれるご相談やご依頼手続きに走り回りながら、ご縁に感謝する日々を送っております。


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