2017年6月9日
【獣医師監修】【犬の嘔吐】吐き戻しの原因と対策について
監修にご協力いただきました!
中村匡佑先生
アイリス犬猫病院 院長
2009年 日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業、その後札幌市内の動物病院を経て
2015年 アイリス犬猫病院開院
[日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属]
「愛犬が突然吐いてしまった」そんな時、どんな原因が潜んでいるのでしょうか。すぐにでも動物病院に行った方が良いのか?それとも、少し様子を見た方が良いのか、迷うことは多いのではないでしょうか。
なかでも特に迷うのは「吐き戻し」をした時だと思います。
今回は、吐き戻しとは何か?という事から、原因や治療について詳しくお話ししたいと思います。
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そもそも吐き戻しってどんな状態?
吐き戻しとは、主に未消化の食べ物を吐くことを指します。「吐く」という状態には、大きく分けて3種類あり、完全に区別できないこともありますが、症状から区別をすることができれば、原因を突き止めるヒントになります。
嚥下(えんげ)障害
「嚥下障害」とは、口の中・喉元・食道の異常によって、食べ物や水の飲み込みが困難な場合や痛みを伴う様子をいいます。吐出(としゅつ)
「吐出」とは、ケポッと吐く様子をいい、食道の内容物を吐き出すことです。特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
・食後すぐに吐くことが多い
・前兆の症状がみられない(涎を垂らす・口をクチャクチャするなど)
・お腹の動きを伴わない
・未消化なものがみられることが多い
・食道の形(筒状)のまま吐くことが多い
・前兆の症状がみられない(涎を垂らす・口をクチャクチャするなど)
・お腹の動きを伴わない
・未消化なものがみられることが多い
・食道の形(筒状)のまま吐くことが多い
嘔吐
「嘔吐」とは、ゲボーッと吐く様子をいい、胃や腸の内容物をお腹の力を使って吐き出すことです。特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
・食後数分後から数時間後に吐くことが多い
・前兆の症状がある(涎を垂らす・口をクチャクチャする・落ち着きない行動をするなど)
・お腹をペコペコ動かす
・消化されたものや胆汁を吐くことが多い
・前兆の症状がある(涎を垂らす・口をクチャクチャする・落ち着きない行動をするなど)
・お腹をペコペコ動かす
・消化されたものや胆汁を吐くことが多い
一概に「吐く」といっても、それぞれに特徴など違いがあります。動物病院に行った時に、上記のポイントを参考に症状を正しく伝えてみて下さい。
吐き戻しの原因と対策について
長い時間、空腹の状態が続くと嘔吐が起こる事があります。空腹の状態で吐き戻しが起こるので、透明や白い胃液や、時に黄色い胆汁を吐くことが多いです。見極めるポイントしては、まず空腹の時間帯である事、ご飯を食べる前である事、吐いた後はケロっとしている事などです。
空腹性の嘔吐の場合、食事の回数を増やすことが一つの回避方法です。1日に2回の食事を与えるケースが多いとは思いますが、1日の量を決めて、その中から複数回に分けてご飯をあげるだけで回避できます。
食事性
食事性の嘔吐の原因としては、「早食い」や「いつもと違う食べ物を食べた」などがあります。早食いが原因の場合、食後すぐに未消化の食べ物を吐出します。犬はご飯を丸飲みして、短時間で食べ終わることが多いです。早食いをすることで吐出をしやすい犬には、早食い防止用のお皿を使用したり、ご飯をお湯などでふやかしたりすることで、食事の時間を長くする工夫が必要です。
いつもと違う食べ物を食べたことが原因の場合、消化されたものを嘔吐することが多いです。普段とは違うドライフードやおやつ、人の食べ物などどんなモノでも起こる可能性はあります。
ドライフードを変更する場合などは、いきなり変えるのではなく、1週間ほどかけて、ゆっくり切り替えることで予防できます。
車酔い
人でも車酔いで吐き気を催すことはあると思います。それは犬も同様です。車酔いをしてしまう犬の場合、動物病院で酔い止めを処方してもらうと良いでしょう。口の病気、喉元の病気
口の病気や喉元の病気でも嚥下障害による吐き戻しが起こる場合もあります。重度の歯周病や、口の中や喉元に腫瘍がある場合、神経障害がある場合などに嚥下障害が起こります。食欲があり、食べようとするけれども、上手く食べ物を飲み込めない状態になります。状況が重篤な場合は、食欲が無いこともあります。
治療法は、それぞれの原因疾患に対するものになります。
例えば、重度の歯周病がある場合、全身麻酔をかけて歯石除去を行い、その後、歯肉炎に対して炎症を抑える治療をやることで改善されます。
食べる時によく食べ物をこぼすようになったり、食後に口をモゴモゴと頻繁に動かしてみたりすることが見られたら、お口の中もしっかりチェックしてみましょう。
異物による閉塞
消化管にモノが詰まる事で吐き戻しが起こります。詰まりやすい場所は、細くなっている胃の出口(幽門)、回盲結腸部(小腸と盲腸の間)が多いと言われていますが、詰まるものによっては、食道や小腸の途中で詰まってしまう場合もよくあります。食べたら吐く、水を飲んで吐く、お腹が痛そう、元気が無い、食欲が無い、などの症状がみられたら閉塞の可能性があります。腸管内に完全にモノが詰まっている場合、腸が壊死する可能性もあるので、注意が必要です。嘔吐物がうんちと同じ臭いだと感じる場合は、腸閉塞が起きている可能性もあるので、その場合はすぐ動物病院に連れて行って下さい。
診断をする際には、異食癖があるかどうかが重要になってきます。何でも口に入れて飲み込んでしまう犬の場合、閉塞を起こす可能性が高く、こういった癖を持っている犬には、きちんとしたしつけが必要になってきます。また、空腹がそういう行動をさせている事もあるので、ご飯の回数を増やすなどの工夫をしてみるのも良いかもしれません。
閉塞の診断は、レントゲン検査、エコー検査、バリウム検査などを使って行われます。閉塞の可能性が高いと診断された場合、胃であれば内視鏡による摘出が可能な事もありますが、大きさや閉塞している場所によっては、手術が必要になる場合もあります。
食道炎・胃炎
胃や食道に炎症が起きることで、吐出や嘔吐が起こります。食道炎は、口に入れた異物や薬、加熱し過ぎたご飯、胃酸の逆流などが原因で吐出が引き起
こされます。
胃炎は、不適切な食事、薬、ウイルスや寄生虫などが原因で嘔吐が起こります。
レントゲン検査やエコー検査、造影検査などの画像診断に加えて、状態によっては内視鏡検
査と生検によって診断されます。
治療は、粘膜の修復剤、粘膜の保護剤、制酸剤、消化管運動改善剤などを状況に応じて用い
ます。食事は、消化の良いものに変えるのも一つの治療法です。治療に時間がかかる事も多
いので、根気強く付き合っていく必要があることもあります。
胃拡張・胃捻転症候群
胃拡張・胃捻転症候群は突然発症し、死に至る事も多い病気の一つです。大型の胸の深い犬種(グレートデン、ジャーマン・シェパードなど)に多いと言われています。食べ物や水の一気食いや一気飲み、食後すぐの運動などが原因と言われていますが、完全には解明されていません。
症状としては、吐きたそうにしているけど吐けない、涎がすごい、お腹が膨れている、呼吸が苦しそう、などがあげられます。胃拡張が長時間に及ぶと、様々な合併症が生じて最悪な場合、死に至ります。
この病気は早急な治療が必要になります。多くの場合、緊急の処置を行った後、胃の捻転の整復をするための手術を行います。特に胸の深い大型犬が吐きたそうにしているけど、吐けないという状態であれば、すぐに動物病院に連れて行って、治療を受けてください。
膵炎(すいえん)
膵臓に炎症が起こる事で嘔吐が起こります。犬に起こる膵炎は急性のことが多く、早急な治療が必要になります。症状は、重症度によりますが、嘔吐、下痢、腹痛、元気・食欲が無いなどです。特に、急性で重篤な場合、お腹が床に付けられない程、お腹を痛がる様子が見られます。
診断は、血液検査、レントゲン検査、エコー検査を用いて行われます。
治療は、点滴を行い、制吐剤、消化管運動改善薬、鎮痛剤などを用います。状態が重篤な
場合、合併症が生じ、死に至ることもあります。
膵炎を疑うような症状がみられた場合、すぐに動物病院に連れて行ってください。
炎症性腸疾患
腸に炎症が起こることで嘔吐が起こります。炎症性腸疾患が原因の場合、慢性的な嘔吐を示す事が多いです。血液検査・レントゲン検査・エコー検査、最終的には内視鏡もしくは開腹による生検検査で診断されます。
治療法は、食事を低アレルギー食に替え、薬として、抗炎症療法の薬、制吐剤、消化管運動改善薬整腸剤などを用います。治療が長期化することも多く、薬を継続的に飲み続けないとならない場合もあります。
腫瘍
中高齢以上になってくると、消化管に腫瘍ができる事があります。良性のものもあれば、悪性のものもあります。慢性的な嘔吐、体重減少を症状として示すことが多いです。
診断は、まず血液検査・レントゲン検査・エコー検査を行い、状況によっては内視鏡検
査や、開腹、エコーを用いての生検検査が行われます。
治療法は、腫瘍の種類によって異なりますが、外科的治療や抗がん剤が行われることが多い
です。
また、腸管の腫瘍以外に、お腹の中に腫瘍ができた場合でも吐き戻すことがあります。腫瘍
が大きすぎて、腸管が圧迫されることが原因です。この場合は、圧迫の原因となっている腫
瘍を取り除くことで治療できます。
消化器以外の病気
吐き戻しをした時、原因は消化管にあると思いがちですが、他の臓器が悪くても吐き戻しが起こる事もあります。その原因としては、腎臓や肝臓、神経疾患がある場合です。その場合、吐き戻し以外に症状があることが多いです。例えば、腎臓が悪いと飲水量が増えたり、肝臓が悪い場合は黄疸が見られたり、神経疾患があると発作などの神経症状がみられることが多いです。
治療法は、原因疾患の治療が第一優先です。
こんな吐き戻しは危険!
吐き戻しの原因は沢山あります。様子をみていても大丈夫な吐き戻しもあれば、すぐに動物病院に連れて行かないといけない吐き戻しもあります。
危険な吐き戻しのポイントは、以下のようなことが挙げられます。
・1日の中で何度も吐いている場合
・元気が無い、食欲が無い場合
・お腹を痛そうにしている様子がある場合
・吐いているものからうんちの臭いがする場合
・吐きたそうなのに吐けない場合(特に胸の深い大型犬)
・元気が無い、食欲が無い場合
・お腹を痛そうにしている様子がある場合
・吐いているものからうんちの臭いがする場合
・吐きたそうなのに吐けない場合(特に胸の深い大型犬)
上記のような場合は、すぐに動物病院に連れて行って、治療をしてもらいましょう。
お家で日ごろからできるケアは?
犬は人と違って、吐きやすい身体のつくりをしています。特に、短頭種(フレンチブルドック・パグ・シーズーなど)やチワワ、プードル、ポメラニアンなどの小型犬が嘔吐の多い犬種と言われています。例えば、以下のような少しの工夫で吐き戻しを減らすことができます。
・一気食いや一気飲みする犬には、早食い防止用のお皿を使う
・ご飯の回数を増やし、1回量を少なくする
・食後の運動は避ける
・ご飯の回数を増やし、1回量を少なくする
・食後の運動は避ける
愛犬に合った工夫をするだけで、吐き戻しの回数を減らすことができるかもしれません。
吐いた時の状況を観察しておくことが大切
「吐き戻し」の理由は、多くあります。危険性の低いものから、早急な対応が必要となるものまで様々です。動物病院に行くにしても、吐いた時の状況を正確に伝える事が診察をする上で重要なポイントになります。最初の見極めをするのは飼い主です。「どんなタイミングで吐いた?」「どんなものを吐いた?」「お腹は痛そうか?」など、しっかり観察してみてください。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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