2017年6月9日

【獣医師監修】病気の可能性も?犬の咳の原因と対処法

監修にご協力いただきました!

2009年 日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業、その後札幌市内の動物病院を経て

2015年 アイリス犬猫病院開院
[日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属]

咳とは口から喉に入ってくる刺激物や異物を体の外に出そうとする現象です。しかし、隠れた病気が原因となってでる咳ももちろんあります。

犬も“乾いた咳” “水っぽい咳”など色々な種類の咳をするので「これは病気のサインなの?」と判断に悩む飼い主も増えています。また若い犬の咳と高齢になってからの咳とでは原因や症状、咳の種類によって治療法も対処法もさまざまです。

予防接種などで予防できる咳もあれば、命に関わるような病気の場合もあるので、愛犬の咳が気になる方は一緒に確認していきましょう。

犬の咳の症状から考えられる病気

辛そうに伏せているシーズー
犬の咳は症状によって治療法も検査方法も異なります。
また診察の時に肝心の症状が治まってしまうことで正確に診断ができないというケースもあるので、携帯やビデオで動画を撮影して獣医師に見せる方法もおすすめです。

乾いた咳をする

犬フィラリア症

フィラリア症とは、犬糸状虫が動脈内に寄生し成長します。近年、フィラリアの予防薬の普及によりフィラリア症は減少していますが、感染している犬はゼロではありません。

犬糸状虫は感染している犬から蚊を媒介し、感染していない予防薬を投薬していない犬に感染します。咳がでるころには病状は進行しているためそのまま放置してしまうと死に至ります。

感染初期は無症状です。犬糸状虫の寿命は6年から7年といわれており、犬糸状虫が死んだ時に肺に詰まることで犬が咳をします。

心臓疾患

僧帽弁閉鎖不全症やその他の心臓疾患では血液の循環が悪くなり、その結果心臓が拡大することで気管を圧迫します。この場合は乾いた咳をします。
乾いた咳から湿った咳に変わった場合は心臓病の悪化により心不全を起こしている可能性があり、注意が必要です。

ケンネルコフ(伝染性気管支炎)・ジステンバー感染症

ケンネルコフ・ジステンバー感染症はウイルス性の病気です。特に子犬に多い病気といわれていて、細菌やウイルスの感染で起こります。人のインフルエンザと同様、乾燥に強く冬場に多い病気です。ペットショップやブリーダーなど狭い空間でたくさんの子犬がいる場合は感染が広がります。

子犬だけではなく老犬で免疫が低下した犬、また予防接種を受けていない犬に感染しやすい病気です。

何か詰まったような(痰が絡むような)咳をする

気管虚脱

気管虚脱は気管の軟骨が弱くなってしまい、呼吸とともに気管軟骨がつぶれてしまいます。その結果、空気のスピードが速くなることで刺激になり、咳がでます。中高齢の小型犬(特にポメラニアンやパグなど)に多い病気で、ガチョウの鳴き声のような咳が特徴です。

平らになった気管に空気の通りが悪くなるので寝ているときでも“ヒューヒュー”と喉が鳴ります。朝、夜と気温が下がると冷たい空気が気管を刺激して咳も酷くなります。

湿った水っぽい咳

肺炎

肺炎は細菌やウイルス感染が原因で起こる病気です。または食べ物を誤嚥することでも起こります。肺炎は発熱を伴い食欲が減少しますが、場合によっては命に関わる病気です

肺水腫

肺水腫は肺に水がたまる病気で、喘息のように“ゼコゼコ”といった咳を繰り返し止まらないのが特徴です。心臓疾患や癌など様々な病気で引き起こされます。肺が水に浸っている状態なので、チアノーゼ(舌が紫になる状態)呼吸困難を引き起こします。(大学の先生はこの状況を陸にいながらおぼれている状態と比喩していました。)

胸水

胸水は胸に水がたまる病気で、体内の水分(血液など)循環が悪くなり、感染症(膿胸)やリンパ液が貯留(乳び胸)することで引き起こる病気です。主に心臓疾患・腎臓病・肝臓病など循環を維持している臓器に異常が現われると起こります。

生活習慣(アレルギー)から起こる咳

煙草を持つ手 (例)アレルギーの原因
・タバコの煙
・ハウスダスト
・ステンレス食器

人同様、犬にもアレルギーによる咳をすることもあります。
咳だけではなく鼻水やクシャミ、皮膚や目の周りの痒みとしてアレルギー症状は出ます。

これらの症状は単発で咳をするだけであれば経過観察で済む場合と、咳が続いて止まらない場合とでは治療も対処方法も異なります。
「咳が長いな?」「何か吐こうとしているけど出ない」という症状がでて、初めて飼い主が気づくというケースが多いようです。

いつもと違う様子の時は動物病院で診察を受けてください。

次に症状別で対処法について細かくご説明します。

犬の咳に対する治療・対処方法

獣医師の診察を受けるゴールデン・レトリバー

犬フィラリア症の治療方法

犬糸状虫の寄生している数などで異なりますが、初期は無症状であることが多いので見過ごしがちです。まず飼い主が気づくのが“咳”です。症状が進行してしまうと散歩を嫌がり動きたがらなくなります。急激に痩せお腹だけが膨らみ腹水がたまり、腹水により内臓が圧迫され食欲がなくなります。

フィラリア症は予防薬で防げる病気です。予防期間は蚊が発生し始めて一ヶ月後から蚊がいなくなって(冬)さらに一ヶ月後までの投薬が必要です。蚊の発生する時期などは地域によってさまざまです。愛犬の生活環境に合わせて投薬を行うといいと思います。

寄生数が少ない場合

寄生数が少なく犬の体調がいい場合、犬糸状虫を殺す注射や飲み薬を使用します。
この注射(飲み薬)は、寄生数が多い場合には、注射によって一気に死んだ犬糸状虫が肺に流れてしまうので危険が伴います。

寄生数が多い場合

寄生数が多い場合は、首の動脈から専用の医療器具などを使って犬糸状虫(成虫)を取り出す方法もあります。
エコー検査でだいたいの寄生数が把握できるので動物病院でエコー検査やフィラリア抗原検査を受けてください。

お家での対処法

対処療法にはなりますが、散歩に行きたがらない、動きたがらない時は無理に動かさず安静に過ごせる場所を作ってあげるとよいでしょう。
また、状態が急変することが多い病気なので急な時に備えて、夜間でも診察可能な救急病院をあらかじめ調べておくといいと思います。

心臓疾患(僧帽弁閉鎖不全・心臓弁膜症)の治療法

僧帽弁閉鎖不全症は小型犬、または7歳を過ぎた高齢に多く、特にマルチーズやシーズーに多いといわれています。
高齢になるころから心臓に負担の少ない食事に切り替えると同時に、健康診断を受け獣医師による聴診を受けましょう。心臓の音(リズム)には無い雑音が聞けるため、初期の心臓病に気づくというメリットがあります。

検査で雑音が出た場合

雑音が出てきた場合は詳しく心臓エコー検査、レントゲン、心電図検査を受けてどれくらい心臓に負担がかかっているか検査する必要があります。
初期段階から治療できるACE阻害薬(血管拡張薬)の投薬で進行を遅らせることが可能です。投薬が始まると生涯投薬を続けていかなくてはいけません。

定期的に獣医師による聴診・エコー検査を受けながら愛犬の状態を把握し治療を受けましょう。
初期の心臓病であっても三ヶ月に1度は聴診を受け、症状の進行に合わせてエコー検査を受けると変化に気づくことができ早期治療に繋がります。

その他に、むやみに愛犬を興奮させず、散歩も健康な時の半分の時間に抑え、回数を減らして安静に過ごせる環境を整える事をお勧めします。

ケンネルコフ(伝染性気管支炎)・ジステンバー感染症の治療法

獣医師の診察を受ける犬 これらの感染症は予防接種で防げる病気です。予防接種は子犬の時期に2回から3回接種します。成犬になっても予防接種は続きます。「外に出ないから」「他の犬とは接触しないから」と追加接種を行わない飼い主もいるのが現状です。しかしこれらの感染症は空気感染です。飼い主が外から持ち帰り愛犬に感染することもあります。

予防・対処法として成犬になっても1年に1回の追加接種を行い感染を未然にふせぐことです。

感染してしまった場合

感染症にかかってしまった場合は、動物病院で診察・治療を受け自宅では処方された薬を継続して投薬してください。

肺炎の治療法

肺炎は、ウイルス感染や細菌、寄生虫などで引き起こる呼吸器系の病気です。気管支炎などが悪化することで肺に炎症が起こり、咳が止まらなくなり呼吸困難になる恐れがあります。

伝染病が引き金になることもあります。その他にも誤嚥性肺炎など、食事や水が食道ではなく気管に入ってしまうことで肺炎が起きる場合もあります。
肺炎は発熱を伴い食欲がなくなります。動物病院での入院治療が必要な場合もあるのでレントゲン検査や血液検査を受け獣医師の指示に従い治療を行いましょう。

予防接種を定期的に受け、誤飲を防ぐ為に、勢いよく食事や水を摂取しないよう躾も必要だと思います。

肺水腫の治療法

肺水腫は、肺が水浸しのようになり呼吸困難に陥る病気です。肺に溜った水は外から抜くことはできないため、原因によって利尿剤や強心剤などを使い肺に貯まった水が
引くのを待ちます。

呼吸困難になるため、舌の色が紫になるチアノーゼが起こります。息苦しくなっているので横になって眠ることができずにお座りの体制しかできなくなります。

チアノーゼの兆候が見られた場合

チアノーゼが起きた場合は、命に関わるのですぐに動物病院を受診してください。
肺水腫が改善されても自宅での生涯に渡る投薬は続きます。1日飲み忘れたくらいでは影響は差ほどありませんが、飲み忘れが続くと肺水腫を繰り返すことになります。

獣医師の指示通りしっかり投薬を続けてください。

胸水の治療法

胸水は心臓疾患、肝臓病、腎臓病が原因で体内の水分(血液)循環が悪くなることで起こる病気です。集中して肺の周りに水が溜まると肺が圧迫され呼吸困難になり他の臓器に大きな負担がかかり食欲の低下や運動をしなくなります。

症状によって利尿剤を投与し体の水分を減らして行きます。犬の状態に応じて肋骨から医療用の針を刺して胸水を抜く、という処置が施されることもあり、抜けた液の色や成分などで病気の原因の確定診断ができます。水分が抜けることで犬も呼吸が楽になり食欲が戻り運動ができるまでに回復することもあるでしょう。

自宅での対処法

自宅での対処法については肺炎や肺水腫同様、病状に合った投薬が必然となります。散歩や運動も、愛犬は自分が病気だという認識はないので飼い主が調節して体の負担にならないようにしましょう。

食事も「食べてくれるから」とたくさん与えると嘔吐したり咳でむせて誤飲したりと危険ですので、通常の量で与える回数を増やして空腹時間が長くならないように工夫してください。食欲の増加も使用する薬が影響しているということもあります。


生活習慣(アレルギー)による犬の咳の治療・対処方法

犬のアレルギーは、人と同様に皮膚(目の周囲)の赤みや痒み、鼻水やクシャミ、咳、胃腸炎と様々な症状がでます。タバコの煙やハウスダスト、中にはステンレスの食器で口の周りが赤み、痒みや咳などの症状がでることもあります。

アレルギーの確定診断は動物病院で採血をし、専門の検査センターに依頼することで診断できます。
しかしアレルギーは体質ですので完治させることは困難です。

予防として症状を出させないようにアレルギー物質(アレルゲン)を特定し排除していく必要があります。
治療としては、症状が軽いうちは抗ヒスタミン剤を使用してコントロールできます。

症状が酷い場合は、ステロイド剤が使われます。ステロイド剤の使用は注意が必要です。
獣医師の指示に従って投薬を行い愛犬の症状を和らげてあげてください。

まとめ

飼い主に抱きかかえられる犬 心臓病や内臓の病気などは、定期的に動物病院で健康診断を受けることで早期発見・早期治療ができます。
また、症状の軽い重いに関わらず、「大丈夫かな?」と思ったらかかりつけの獣医師に相談するようにしましょう。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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