2017年6月13日
【獣医師監修】犬の目やにの原因と正しいケア方法
毎朝目やにを取ってあげても、すぐに目やにがたくさん出てくるのは何が原因なのでしょうか?また、治療はどのように行うのでしょうか?
今回は目やにが発生してしまう原因、また目やにの日々のケアについても併せて解説します。
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犬の目やにが出る原因とは?
目やには細菌感染、涙の量の減少、眼瞼の形やまつ毛の生え方など、さまざまな原因で発生します。原因は、その目やにの状態で大まかに分類できます。
そもそも“目やに”ってなに?
「目やに」は大きく2つの種類に分けられます。「目の正常な代謝で作られる目やに」と「目に炎症が起こった結果作られる目やに」です。
目の正常な代謝で作られる目やに
“正常な目やに”は目に入った雑菌や角膜などから剥がれ落ちた古い細胞などを涙が洗い流したものをくるんで排泄するためにできるものです。涙には、角膜や結膜への栄養補給、瞼の動きをスムーズにする、目に入った異物を洗い流す、雑菌の消毒などの働きがあります。
目から分泌されるのは涙だけではなく、眼のふちにあるマイボーム腺からは油も分泌されています。
マイボーム腺から分泌される油は、瞬きするたびに涙に混じって分泌され、眼球の表面を薄くコーティングすることで目を乾燥から防ぐ役割があります。
目に炎症が起こった結果作られる目やに
目にウイルスや細菌、異物が入った時は、体を守るために免疫反応が起こります。白血球などの貪食細胞と呼ばれるものが集まり、侵入した微生物や異物を取り込み分解しようと働くのです。
その結果、膿が混じった黄色っぽい目やにが出ます。
目に侵入した微生物は毒素を排泄するので炎症が起こり、目が赤くなったり、結膜が腫れてしまうこともあります。
それ以外にも何らかの原因で涙の分泌が悪くなった結果、目が乾燥してしまい痛みが出るドライアイという症状があります。
この場合も涙の量が少ないことから目の表面のごみや雑菌を洗い流すことができなくなり感染を受けやすくなります。
ドライアイの場合もやはり症状の悪化とともに黄色い目やにが大量に出るようになることが多いです。
犬の目やにの状態から原因を探る
「目やににも種類があるということはわかったけど、うちの犬の目やにはどっちなの?」そこでポイントとなるのが、目やにの色やテクスチャです。目やにの状態をみれば、何が原因かある程度予測することが出来ます。
透明~白い目やに
涙がたくさん出て固まっている状態です。少量であれば、角膜などからはがれた古い細胞や雑菌などがくるまれて排泄されただけなので正常な目やにです。
目やにの量が多い場合は逆まつ毛や、眼瞼が内側に入り込んだりすること(眼瞼内反症)で目の表面が刺激されて涙がたくさん出てしまっている可能性があるので、目の周りに異常がないか確認してあげて下さい。
茶色い目やに
透明~白っぽい目やにが時間経過とともに茶色く変色することがあります。涙は98%が水分で、残りの2%はタンパク質やリン酸塩です。その涙に含まれるたんぱく質が変色し固まっている状態だと考えられます。
黄色くさらっとした目やに
細菌感染が起こっている状態です。細菌感染し結膜炎や角膜炎などが起こると、膿が出るため黄色っぽくなります。黄色または緑色でべたべたした目やに
細菌感染や分泌物がたくさん出ている状態です。細菌感染がひどい時にも起こりますが、ドライアイのように涙の分泌が悪く分泌物がたくさん出ているときにも起こります。治療が必要な犬の目やにの特徴と治療方法
目やにには、“病気が原因の目やに”と、そうでないものとがあります。仮に病気が原因ではない目やにであったとしても、だんだん悪化していくと治療したほうが良い場合もあるので経過観察が重要となります。
病気が原因ではない目やに
病気が原因ではありませんが、目やにの量が多く目の周囲にただれや痒みなどが起こる場合は診察が必要です。<目やにの特徴と原因>
「透明~白い・茶色い目やに」が目安です。逆まつげ
本来まつ毛は外向きに生えていますが、内向きや斜め方向に生えると目の表面を刺激して涙や目やにが出るようになります。治療方法:外向きに生えず目に刺激を与えているまつ毛を除去します。処置は動物病院に相談の上で行って下さい。
眼瞼内反
眼瞼が内側に反り返っている状態です。まつ毛が目の表面に触れるので目の痛みや痒みが起こります。また、刺激が続くと流涙症や結膜炎・角膜炎を起こします。
先天性と後天性がありますが、先天性はセント・バーナード、ブルドッグ、秋田犬で多くみられます。
後天性は眼瞼のケガや角膜炎や結膜炎などの原因があげられます。
治療方法:内服薬や点眼薬では改善が難しい場合は、外科手術を行います。
眼瞼外反
眼瞼が外側に反り返っている状態です。眼瞼には涙を溜めておくという役割がありますが、眼瞼が外に反り返ると涙を溜めることができず、目が乾燥しがちになります。
目が乾燥すると眼瞼にあるマイボーム腺から分泌液がたくさん分泌され、目の表面に過剰な油の膜をはります。
また、涙が少ないために目の表面の雑菌や異物を洗い流す力が弱くなり感染が起こりやすくなります。
先天性のものと後天性のものがありますが、先天性はセント・バーナード、ブルドッグ、ボクサーなどでよく見られます。
後天性は、眼瞼のケガや顔面神経麻痺などによる眼瞼の痙攣などの原因があげられます。
治療方法:内服薬や点眼薬では改善が難しい場合は、外科手術を行います。
流涙症
流涙症はさまざまな原因で起こります。逆まつげや眼瞼内反・眼瞼外反でも起こりますが他にも原因があります。特に小型犬でよく起こりがちなのが「鼻涙管狭窄」です。眼瞼の目頭側には涙点という小さな穴が開いています。この穴は鼻涙管という管の入り口で、出口は鼻の奥です。
涙腺で作られた涙はこの通路を通り排泄されます。ところが鼻涙管が狭窄したり閉塞したりしている場合があります。
このような場合、涙は作られますが排泄がうまくいかないので目の外にあふれ出します。そのために常に涙で目の周りが濡れた状態になり眼瞼炎や皮膚炎をおこします。
眼瞼が炎症を起こすと腫れるために眼瞼内反のような状態になり、まつ毛が目の表面に刺激を与えさらに涙が出るようになります。このような悪循環を起こすとさらに涙目や目やにがひどくなっていきます。
治療方法:涙が流れている原因を調べます。鼻涙管狭窄が原因の場合は、鼻涙管を広げる処置を行いますが数ヶ月で狭窄する事がほとんどです。原因に対する対象療法を行います。
病気が原因の目やにの特徴と治療方法
病気が原因になりますので、様子を見ないで早めに動物病院で治療を受けましょう。<目やにの特徴と原因>
「黄色・緑色の目やに」が目安です。角膜炎
角膜の表面に傷や感染が起こり炎症となった結果、涙が出たり痛みが出ます。感染が進むと角膜が白く濁ったようになり、失明の恐れもあります。
また、炎症がひどくなると角膜表面がびらんを起こし角膜潰瘍になる場合もありますので要注意です。
治療方法:感染が原因になりますので抗菌作用や抗炎症作用のある点眼薬を用います。症状が重い場合は内服薬を併用します。
また、目をこする場合はエリザベスカラーを用います。
角膜潰瘍
角膜の病気は傷の深さで分類されています。角膜びらん:傷が浅いもの
角膜潰瘍:傷が深いもの
角膜穿孔:傷が深く角膜を貫通するもの
このような角膜の病気は角膜に傷ができ、さらに細菌感染が起こることが原因になります。痛みなどの違和感からこすったりすることでさらに悪化します。膿様の目やにが出ることが多く、充血もひどくなります。
治療が遅れると目の表面に白い幕が張ったようになり視界が非常に悪くなります。最悪の場合は角膜が破けることで目の中の器官が穴から外に飛び出だしてしまい、目の構造が失われることもあります。
治療方法:内科的、外科的治療含めさまざまな治療法があります。いずれも角膜の再生力を引き出すことが重要となり、治療にはある程度長い期間を要します。
結膜炎
結膜は白目の周囲を覆う膜で、結膜炎は犬の目の病気の中では一番多く見られるものです。細菌感染やアレルギー、目をこする行為、眼に入った異物が原因で炎症を起こします。結膜が充血して涙や目やにがたくさん出ます。
治療方法:感染が原因になりますので抗菌作用や抗炎症作用のある点眼薬をもちいます。症状が重い場合は内服薬を併用します。
また、目をこする場合はエリザベスカラーを用います。
ドライアイ
涙は眼瞼にある涙腺から分泌されています。しかし、免疫が下がったり外傷などが原因になり涙腺の機能が正常に働かなくなることがあります。ドライアイは涙腺の機能が下がることによって、涙の分泌量が減少して目が乾いてしまった状態です。
粘り気のある目やにが出て、角膜炎や角膜潰瘍ができたり、角膜が黒く濁ったりすることもあります。
ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、シーズー、ペキニーズ、パグなどがなりやすい病気です。
治療方法:人工涙液やヒアルロン酸の点眼薬で目の乾きを補います。
緑内障
緑内障は眼圧が異常に上昇することで、視神経に障害が起こりやがて視力を失う病気です。眼球の中は眼房水という液体があり、眼圧を一定に保つ働きをしています。眼房水は目で作られる液体ですが、一定の割合で作られ排泄されます。しかし、この排泄がうまくいかなくなると眼房水が目の中に溜まってしまい眼圧が上がります。目の中から外に向かって圧力がどんどんかかるのでかなりの痛みを伴います。
目が片方だけ大きく見えたり、頭を触るのを異常に嫌がります。感染や流涙症も併発しやすく、目やにも出やすくなります。
緑内障は目の救急疾患です。
治療方法:眼圧が高くなっているので眼圧を下げる点眼薬や重度の場合は入院し眼圧降下薬を投与します。
チェリーアイ
犬の目頭には第3眼瞼(瞬膜)があります。本来これは眼瞼の内側に入っていますが、眼瞼の外に飛び出してしまうと、肉のかたまりのように見えます。第3眼瞼の中には軟骨と涙腺があります。この軟骨が折れ曲がってしまうと眼瞼の外に出たままになり戻らなくなってしまいます。
このような状態が続くと飛び出した第3眼瞼がめの表面に刺激を与えてしまうために涙が多く出たり目やにの原因になります。
治療方法:眼瞼から飛び出している第三眼瞼を外科手術で整復します。飛び出している部分を切除すると第三眼瞼内にある涙腺が同時に切除されるのでドライアイになることが多いため切除せず整復したほうがよいでしょう。
マイボーム腺炎
眼瞼にはマイボーム腺という分泌腺があります。ここからは涙の蒸発を防ぐ油性の分泌物が分泌されます。この分泌腺が感染症などの理由で炎症を起こすと眼瞼が腫れてしまったり、分泌腺の出口が閉塞して分泌物が固まり眼瞼にできものができることもあります。
マイボーム腺炎とドライアイは密接な関係があり併発するケースが多いです。
治療方法:感染が原因になりますので抗菌作用や抗炎症作用のある点眼薬をもちいます。症状が重い場合は内服薬を併用します。また、目をこする場合はエリザベスカラーを用います。
腫瘍
眼瞼にはマイボーム腺腫やメラノーマなどの腫瘍ができることがあります。小さな腫瘍は目に対して大きな影響を与えませんが、目の内側に向かってだんだん大きくなると瞬きするたびに目の表面に刺激を与え炎症が起こります。その結果、目やにや涙が多く出るようになります。治療方法:眼瞼に腫瘍がある場合は早めに切除したほうがよいです。腫瘍が大きくなると切除する範囲が広がり縫合したときに目が引きつれたようになることがあります。
切除する場所にもよりますが完全に目を閉じることができなくなり薄く目が開いた状態になると感染や炎症が起こりやすくなります。
安全かつ清潔に! 犬の目やにの上手なとり方
目にべったりついた目やに。引っ張ると痛がりますし、なかなかきれいに取れません。犬に負担をかけずにキレイに目やにをとってあげるには、以下のような方法をおすすめします。ホットタオルを使いましょう
触って熱くない程度にさましたほっとタオルで目の上に当てて、目やにをふやかしてから取りましょう。拭くときには上から下へ
目を拭くときに横に拭いたり、下から上に拭くと目の表面に傷が入ることがあります。必ず上から下へ目を閉じさせるように拭きます。まとめ
目やにが出る原因はたくさんあるので、まずは目やにの状態をみて大体の原因を把握することからはじめましょう。どんな原因だったにせよ、そのまま様子を見るのではなく、早めに動物病院でちゃんと診断してもらいましょう。早期診断、早期治療が大切です。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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