2017年6月9日

【獣医師監修】犬の目が赤くなる原因と考えられる病気

監修にご協力いただきました!

岡田雅也先生

そら動物病院  院長

2007年帯広畜産大学卒

京都大学大学院医学研究科中途退学(在学中、臨床獣医師としてバイトを経験)

兵庫県内の動物病院で3年

愛知県内の動物病院で3年(副院長)

2015年11月8日そら動物病院開業

愛犬の目が赤くなっている場合、原因によって自宅でのケアや対処法、動物病院での治療法は異なります。

マズル(鼻)が短い犬種や目が出ている犬種は、眼球に傷がついたり目のケガが多いので特に注意が必要です。

今回は、犬の目が赤くなっている時の原因と考えられる病気について解説していきます。

犬の目が赤くなる原因

ダックスが飼い主に抱きしめられている様子

外部からの刺激によるもの

例)
・ゴミやほこりが入った
・刺激物(人が使う殺虫剤やスプレーなど)に対する反応

病気による目の充血

眼の表面が赤い場合(充血や血管新生)

・逆さ睫毛、できもの(腫瘤)、異物など角膜に対する刺激
・アレルギー
・結膜炎
・角膜潰瘍
・角膜炎
・乾性角結膜炎(ドライアイ)
・ぶどう膜炎
・緑内障   など

眼の中が赤い場合(眼内出血)

・先天性(コリーアイ異常など)
・角膜穿孔
・重度のぶどう膜炎
・緑内障
・白内障
・腫瘍
・網膜剥離
・眼底出血   など

このようにただ一言で目が赤いといっても考えられる病気はたくさんあります。

経過を観察していても大丈夫な症状から放置していると症状が悪化して失明してしまう病気と様々です。

次に病気別の症状について細かくご説明します。

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次ページ:病気別の症状について

病気別の症状について

悲しそうな表情の犬

眼瞼炎

何らかの原因により瞼に炎症が起きている状態です。

原因としては、細菌性や寄生虫性、免疫介在性があり、まれに真菌性にも起こります。

症状は瞼の腫脹や脱毛、痛みによる眼瞼痙攣・流涙などが見られます。

瞼が腫れること比較的早く症状に気づくでしょう。

早めに動物病院を受診して、症状や原因に合った治療をしてください。

眼瞼内反症

眼瞼内反症は、瞼が内側に入り込み瞼やまつ毛が結膜、角膜を刺激します。

先天性と後天性に区別されますが、先天性の場合は遺伝的な素因が大きく、ラブラドール・レトリバー、ゴールデンレトリバー、ブルドッグ、パグ、トイプードル、マルチーズ、キャバリアなどが好発犬種です。

目に強い痛みや痒みを伴い、目ヤニや涙がたくさん出ます。

また、ドライアイや角膜炎を引き起こし、最悪の場合は失明の危険性もありますので、早期の受診、治療が必要です。

結膜炎

結膜炎は、人と同様に細菌やウイルス感染や刺激物などが目に入り結膜(目を大きく開いた時に見える白い膜:白目)に炎症が起きる病気です。

生まれつき瞼の形やまつげの生えかたが変わった犬は結膜炎を起こしやすいです。目をショボショボさせたり涙や目ヤニがでます。

結膜炎は抗生剤や炎症をとる目薬で比較的早く完治しますが、繰り返したりなかなか治らない時は他の病気が隠れている場合があるので、少しでも「おかしいな?」と思うときは、早めに獣医師の診察を受けるようにしましょう。

角膜炎

角膜炎は「角膜」という目の表面にある透明の膜に炎症が起きることです。

犬の角膜炎は一時的な物である場合と、自己免疫疾患で、継続的に治療が必要な場合があります。

初めは軽い角膜炎でも、早期に対処してあげなくては炎症が長引いてしまい完治するまでに時間がかかってしまうので、早い段階で獣医師の診察を受けてください。
タオルケットに包まれる犬
次ページ:乾性角膜炎(ドライアイ)

乾性角膜炎(ドライアイ)

乾性角膜炎(ドライアイ)は人でも良く知られている病気です。

特にシーズーやパグ、キャバリア、ウェスティー、アメリカン・コッカー・スパニエルといった犬種に多いのが特徴です。

大多数が自己免疫疾患や涙腺の異常(アレルギー、感染などによる眼瞼炎など)で涙を分泌しにくくなることで起こります。

その他、薬剤性、内分泌疾患、神経原性、先天性などがあります。

目の乾燥や結膜の充血で痛みや痒みを伴い、目ヤニが多くなることで気づきます。

診断は特殊なシルマー涙液試験紙を用いて検査をし、1分間にどれだけの涙が出るか犬の涙量を測定します。

正常犬の涙は1分間に15mm以上です。15㎜以下でドライアイを疑い、10mm以下でドライアイ、5㎜以下で重度ドライアイといわれています。

治療は大きく分けて涙腺刺激を促す点眼と涙液補充を目的とした点眼療法に分かれます。

まずアレルギーや感染などによる眼瞼炎の治療として、抗生点眼やステロイド点眼で様子を見ます。

涙液量に変化なければ、自己免疫疾患による治療として、免疫抑制剤の眼軟膏をします。

それでも涙液量が増えなければ、人口涙液の点眼や軟膏をして乾燥を防ぐ治療をします。

診断が遅れると治療がなかなか上手くいかないことが多いので、早期に獣医師の診察を受け症状にあった治療を受けてください。

角膜損傷・角膜潰瘍

レンズに傷がついたり、潰瘍になったりする原因としては、外傷性(異物、逆さ睫毛、シャンプー・洗剤などによる薬剤性など)が多いです。

散歩中に草木などが当たり傷ついたり、目にほこりや刺激物が入った時に、その時に傷がついてしまうことが挙げられます。

角膜が傷つくと痛みや痒みが気になり、前足で擦ったり、床に擦りつけてしまったりして酷くなり、最悪の場合、角膜が融けてしまい(融解性角膜潰瘍)、穴が開くこと(角膜穿孔)により失明することもあります。

「愛犬が片目をしばしばしている」、「目を開けられない」、「涙が多く出る」などの異常があるときは、速やかに動物病院で診察を受け、点眼やエリザベスカラーなどを用いて傷が悪化しないように処置をする必要があります。

眼内出血

目の中、虹彩・毛様体・脈絡膜・網膜などの血管が、何らかの原因で出血することです。

原因として、先天性疾患(コリーアイ異常など)、後天的疾患(角膜穿孔、ぶどう膜炎、緑内障、白内障、網膜剥離、眼底出血、腫瘍、凝固異常など)があります。

レンズ全体が赤くなり、視野に影響が出てくるので、愛犬の「目が赤いな?」と気づいた時は速やかに動物病院で獣医師の診察を受けて、症状に合った治療を行ってください。

緑内障

緑内障は、人と同様に眼圧が上がり失明に繋がる病気です。

特徴としては、白目の充血が酷いことが挙げられ、その他の症状として瞳孔が開いたままになることもあるので片目だけ黒目が大きく見えたりすることで異変に気づきます。

緑内障は痛みを伴い、食欲や元気がなくなり、顔の周りや頭を触られることを極端に嫌がるようになることが多いです。

ただ、眼が赤いだけの場合もありますので、要注意です。

そして数日~1週間程度で失明します。

また、慢性化してしまうと牛眼といって牛の眼のように大きく出っ張った眼になり、いろいろな障害が出てきます。

緑内障の原因は、眼球の中にある眼房水(眼球の中にある水)の流れが原因不明で悪くなったり(原発緑内障)、炎症やレンズの脱臼、腫瘍などによって悪くなる(続発緑内障)のが原因といわれています。

柴犬、アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズーなどが好発犬種です。

治療としては眼圧を下げる点眼を1日3回から5回程度、症状に合わせて行う内科療法か、レーザーを当てたりやインプラントを入れたりする外科療法があります。

ただ、最終的には眼圧のコントロールができなくなり、失明してしまいます。

眼圧が高く失明した目は、痛みを減らすために手術で義眼を入れたり、眼球摘出をしたりすることもあります。

愛犬が目を気にしている時は、自宅で様子を見ずに早急に動物病院で専門家の診察を受けてください。

次ページ:犬の目が充血している場合の応急処置


犬の目が充血している場合の応急処置

エリザベスカラーをつけている犬 目が充血している場合には、市販の犬用目薬などを活用することができますが、症状に応じてできるだけ早く獣医師による診察を受けることをおすすめします。

また、愛犬が前足で掻いたり、床に擦りつけたりする場合は、エリザベスカラーをつけてあげると角膜に傷がついたり充血が酷くならずに済みます。

エリザベスカラーは動物病院で購入できますが、ホームセンターなどでも簡易的な物を販売しているので、1つ自宅にあると便利です。

目の病気は症状の軽い重いに関わらず、失明に繋がることもあるので、動物病院で診察を受けるようにしましょう。

次に、普段から自宅でできる目のケアや予防について、細かくご説明します。

自宅でできる目の予防とケアについて

伏せた状態でこちらを見る犬
例)
●子犬の頃から躾の一環として目の周りを触られることに慣れさせる
●目の周りを常に清潔に保つ(目ヤニや涙を取り除く)
●長毛犬種などトリミングの時に目の周りの毛を短くカットしてもらう
●目の健康チェックを習慣にする
これらのケアは実際に点眼するときにとても重要になります。目の病気は、飲み薬などの効果がなかなか届きにくい場所です。

点眼ができなくては治療も困難になります。ドライアイや角膜損傷などは早期発見が何より効果的です。

目薬を点眼するときは、犬の正面から目薬を持っていくと怖がるので、頭をなでながら愛犬の耳の後ろから点眼薬をたらすとスムーズに点眼できます。

犬の目に良いといわれるサプリメントも動物病院で購入できるので、「愛犬の目が心配」「目のケアをもっとしてあげたい」と思った時は一度、専門家に相談すると良いでしょう。

まとめ

こちらへ走ってくる犬 犬は人の目線より低い地面に近い位置で生活をし、地面に近い所を散歩で歩くので、ハウスダスト、砂や草木などの刺激を受けやすいのです。

愛犬の目の異常は普段のケアで飼い主が一番早く気づける病気です。

目の病気は、早期に気づくことがとても重要なのです。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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