2018年1月26日
【獣医師監修】子犬の食糞!うんちを食べる理由や考えられる病気
監修にご協力いただきました!
小竹正純先生
多摩獣医科病院 院長
2002年麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2006年多摩獣医科病院 勤務
2016年多摩獣医科病院 院長就任(現在に至る)
[川崎市獣医師会、日本小動物歯科研究会、再生医療研究会所属]
愛犬が排泄後うんちを食べる姿を見てしまったら、驚いてしまいますよね。
この食糞行動には、色々な原因があります。
そしてそれは、簡単に改善できることだったり、日々の生活の中の意外な問題点に気づかされるきっかけになったりもします。
食糞に悩まされている場合は、愛犬の行動をよく観察し、まずは解決への糸口を見つけて下さい。
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子犬が食糞する4つの理由
子犬が食糞するのには、理由があります。大きく分けると、4つの原因に分けられます。(1)食事の問題、(2)行動学的な問題、(3)生理的な問題、(4)病気の問題です。
(1)食事の問題
愛犬が食べている食事や食生活に問題があることがあります。空腹
身体に必要なカロリーを摂取できていないと“空腹”状態になります。その空腹を補うために、うんちを食べてしまうことがあります。
消化の悪い食事
きちんと食事をあげていても、その食事の質が悪かったり、食事が愛犬に合わなかったりする場合、うんちは未消化な状態で排泄されてしまいます。そのようなうんちが、子犬にとって「まだ食べられるもの」という認識になってしまっている可能性があります。
食事量が多すぎる
食事量が多いと、消化がしっかりとできない場合があります。そのような食事だと、うんちは未消化な状態になっているので、こちらも子犬にとって食べ物という認識になる可能性があります。
栄養素が偏っている
食事内の栄養素、特にビタミンやミネラルに偏りがある場合、栄養バランスをとるために食糞をすることがあります。(2)行動学的な問題
飼い主の気を引こうとしている
以前、うんちをした時の飼い主の反応が愛犬にとって嬉しいものだった場合、「また反応してほしい」という意思が働いている可能性があります。例えば、食糞をした時、飼い主が「キャー、やめて!!」と興奮するような反応をした場合、飼い主としては不快を示したつもりかと思いますが、犬にとっては“飼い主が喜んでいる”と捉えてしまうのです。
欲求不満や退屈
子犬の時は非常に好奇心が旺盛です。そういう時期に、一人での留守番が多いなど、犬にとって退屈な環境があった場合、うんちで遊んだ結果食糞をする可能性があります。
うんちを飼い主から隠そうとしている
うんちをした時に飼い主に怒られた記憶がある場合、「うんちをする事は悪いこと」という認識になっているかもしれません。なので、愛犬は怒られないために自ら食べることで処理をしている可能性があります。
(3)生理的な問題
子犬の習性
子犬は外の世界に対して非常に好奇心旺盛です。人間の手のように“触覚で確認する”ということがむずかしいため、犬は口に一度入れることで対象物を知ろうとします。
その興味や冒険の一環として、うんちを口に入れてしまっている可能性があります。
また、子犬の消化管は未発達なので、成犬と比べると消化がうまくできません。
なので、子犬がしたうんちは未消化なものが出ている可能性が高く、そういったうんちは子犬にとっては食べ物という認識になっている可能性もあります。
子犬の習性により食糞をしている場合は、成長をすると共になくなっていく可能性が高いです。
母犬のマネ
母犬が子犬のうんちを食べる姿をみて、その行動をマネしているケースがあります。母犬が子犬のうんちを食べる行動はよくみられるもので、巣の中にある排せつ物の臭いにつられて捕食者が巣に近づいてこないように、子どものうんちを食べてしまうという本能を持っています。
また、巣を清潔に保つ意味合いもあるかと思います。
ですので、母犬が子犬のうんちを食べてしまうのは本能的な部分があります。
この母犬の行動を子犬がマネをしてしまっていることもあるかもしれません。
しかし、母犬の食糞が出産後に始まったものであれば子犬の成長と共になくなる可能性が高く、それは子犬も同様です。
(4)病気の問題
寄生虫疾患
子犬に多い病気の一つに寄生虫の感染があります。消化管内に寄生虫の寄生があると、食事をしても消化不良となり、栄養素がきちんと身体に吸収されない状態になってしまいます。
つまり食事をしても身体は飢餓状態になっているということです。
子犬から排泄された便は、未消化な状態になっているので、犬にとっては良い臭いがします。
そして、子犬自身は食事をしていても吸収がうまくいっていないので、空腹状態が続いてしまいます。
こういう状態の子犬にとっては、“うんち”は食べ物に思えるということです。
下痢や吐き戻しなどの消化器症状がなくても、寄生虫疾患を患っている可能性はあります。
子犬の時は何度か糞便検査、寄生虫が検査で見つからなくても駆虫薬の定期投与が推奨されます。
子犬の定期駆虫の目安は、生後3カ月までは2週間に1回、生後3カ月~生後6か月までは1カ月に1回、その後は3カ月に1回の定期駆虫を疾病予防管理センター(CDC)が提唱しています。
消化能力の低下
消化能力が低下している場合、または消化管の発達が未発達だった場合、子犬の身体が必要としているカロリーを十分吸収できていない状態になっている可能性があります。食べていても身体は、さらにカロリーを必要としているので、食糞をしてしまっているのです。
消化能力が落ちる病気は様々あります。
その中で、子犬に多い病気としては、先にもお話しした寄生虫疾患です。
他には、食物アレルギーや膵外分泌不全症などがあります。
食物アレルギーは、今食べている食事の中にアレルギーを起こすものが含まれている場合に、糞便回数の増加、皮膚の痒みなどの症状が現れます。
食事を変えたタイミングで消化器症状が出た場合などは、考慮する必要があるかもしれません。
また、膵外分泌不全症は、膵臓から分泌される消化酵素(食べ物の消化・分解を助けるもの)の分泌が十分できない病気です。
そのため、口から入った食べ物が十分消化できない状態で便として出てきます。
特に、脂肪がきちんと消化されずに便として出てくるので、脂肪便という白っぽい便が出るのが特徴の一つです。
この病気は、ジャーマンシェパードで遺伝性が示唆されているので、ジャーマンシェパードの子犬でこのような症状が見られたら、要注意です。
多食になる病気
病気の影響で、食欲が過剰になることがあります。先でお話した“膵外分泌不全症”もその一つです。
膵外分泌不全症の症状としては、多食、食べるのに痩せる、脂肪便などがあげられます。
また、その他の病気としては、“クッシング症候群”も多食になります。
クッシング症候群とは、副腎という臓器から分泌されるコルチゾールというホルモンの影響により多飲多尿・多食・腹囲膨満・皮膚が薄くなるなどの症状を示します。
この病気の多くは中年齢以上でみられますが、稀ではありますが、1歳未満でもみられることがあります。
子犬の食糞対策について
食事の問題の場合
食糞の原因で多いのが“食事の問題”です。食事量が不足していたいり、食事内容に偏りがあったり、食事のタイミングが不適切だったりといった要因が食糞のきっかけとなります。
食事量に関しては、しっかり体重に見合った量が食べられているかが重要です。
多くても、少なくても問題になります。
子犬は、日々成長していますので、知らないうちに身体が大きくなっていて、食事量が適正量に達していなかったということは少なくないと思います。
病院あるいは家の中でも、子犬の時期は頻繁に体重を測定するのをおすすめします。
体重を測定したら、その体重に見合った食事をあげているかを必ず確認してください。
食事内容に関しては、子犬用の食事をあげているかが一つのポイントです。
多くの犬用の食事は、ステージ毎に用意されています。
子犬用のフードには成長期に必要な栄養素がバランスよく配合されています。
そのようなフードではなく、おやつ中心の食生活やバランスの悪い食事を食べていると、十分な栄養を摂取することができないために、食糞行動に繋がってしまう可能性があります。
子犬用の食事をすでにあげている場合は、別の子犬用のフードに切り替えてみるのも一つかもしれません。
食事のタイミングに関しては、空腹時間が長いことが食糞と強く関連していると思われます。
ですので、空腹時間を現在より短くするのも一つの対策です。
例えば、1日2回の食事であるのであれば、1日3回にするということです。
1日の総摂取カロリーが適切であれば、1日に食事を与える回数自体を増やしても問題ありません。
このように、食事量・食事内容・食事のタイミングを一度見直してみて下さい。
食事を見直すだけで、食糞行動がなくなる可能性はあります。
現在の食事が適切かどうか不安な場合は、かかりつけの獣医師に相談して下さい。
行動学的な問題の場合
愛犬が食糞行動を起こした時の飼い主の反応は非常に大事です。飼い主の関心を得たい子犬は、食糞で飼い主の注意を自分に向けようとします。
一方、排便をすると叱られると思っている子は、見つかる前にうんちを食べて隠そうとしたり、隠れてうんちをしたりします。
ここで大事なことは、子犬がどんな理由で食糞行動をしてしまっているかです。
関心を得るために食糞している場合
関心を得たいという理由で行っているのであれば、まず愛犬が食糞をした際に、反応をしないことです。「うんちなんて食べてっ―!」と慌てるのではなく、無言で片付けて下さい。
もし、可能であれば、うんちをした直後に別の事に気をそらしてあげる事も有効かと思います。
うんちを隠そうとしている場合
うんちを隠そうとして食べているのであれば、過去の自分の行動を思い返してください。もし、愛犬がうんちをした時に怒ったことがあるのであれば、うんちを隠そうとしている可能性があります。
こういう場合は、決してうんちをトイレ以外の場所でしたとしても怒らないでください。
トイレできちんとできた時は、思いっきり褒めてあげて下さい。
そうすることで、“うんち=怒られる”という認識がなくなり、次第に食糞をしなくなる可能性があります。
病気の問題の場合
病気の問題に関しては、当然ながら原因となっている病気を治すことが大事です。寄生虫の感染があるのであれば、適切な薬を用いた駆虫をする必要があります。
しかし、寄生虫の感染に関しては、検査で100%見つかるとも限りません。
ですので、定期駆虫の実施をおすすめします。
子犬の定期駆虫の目安は、生後3カ月までは2週間に1回、生後3カ月~生後6か月までは1カ月に1回、その後は3カ月に1回の定期駆虫を疾病予防管理センター(CDC)が提唱しています。
食物アレルギーが疑われる場合は、本来であれば除去食試験の実施が必要です。
しかし、除去食試験を行うには、子犬の時期は不適切です。
ですので、アレルギーを疑う時は、現在食べている食事を変更してみる所から始めてみましょう。
その他の病気、膵外分泌不全症やクッシング症候群に関しては、それらの病気が疑われる際に行う検査があります。
その検査で、確定できればそれぞれの病気の治療をしていきます。
まとめ
子犬の食糞は、飼い主にとっては治したい行動の一つだと思います。そのためには、どこに原因があるかをしっかり見極める必要があります。
実際衝撃的なシーンだと思いますので「食糞していること」自体に気がとられがちですが、まずは食糞の前後の様子などをしっかり観察してみてくださいね。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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