2018年1月20日

【獣医師監修】歯周病だけじゃない?犬の歯が抜ける原因と対処法

監修にご協力いただきました!

小竹正純先生

多摩獣医科病院  院長

2002年麻布大学獣医学部獣医学科卒業

2006年多摩獣医科病院 勤務

2016年多摩獣医科病院 院長就任(現在に至る)

[川崎市獣医師会、日本小動物歯科研究会、再生医療研究会所属]

愛犬の歯がポロリと抜け落ちた!

子犬(月齢6ヶ月~1歳くらい)なら生え変わりの可能性が高いですが、成犬でそんな場面に遭遇すると動揺しますよね。

成犬なのに歯が抜ける理由のほとんどは「歯周病」と「破折・咬耗」のどちらかです。いずれの理由でも早めに動物病院で診察を受ける必要があります。

健康な歯が抜けたなら「破折・咬耗」かも

柴犬の歯

健康な歯の特徴

歯肉の色が薄めのピンク

人間と同様に歯茎が健康である場合は、歯肉は薄いピンク色をしています。

歯肉の色が均一

健康な犬の歯肉の色は均一です。

もし、歯と歯肉の付け根の部分が赤くなっていたり腫れているような場合は、歯肉炎の可能性があります。

歯ブラシをかけても出血しない

健康な歯茎は、歯ブラシでブラッシングしても出血しないのが通常です。

もし歯肉炎や歯槽膿漏を発症している場合は、歯茎からの出血がみられるようになります。

歯ブラシをした際に、出血がみられるようであればこれらの病気の可能性があります。

口臭がない

健康な犬は口臭がありません。

もし少しでも口臭がある場合は、口腔内の異常によるものと考えられます。

上記に挙げたように、健康な状態であるのに、歯が折れてしまったようであれば破折や咬耗の疑いがあります。

また、歯の健康状態が悪いようであれば歯肉炎や歯周病など口腔内の異常を疑いましょう。(※歯周病の詳細については次の章で触れています)

破折・咬耗(折れる・擦り切れる)が起きる理由

草に鼻を近づける犬

硬いものを長時間噛んでいる

犬は噛む力が強いため、木や骨など固い物をおもちゃ代わりに噛んでいると、顎の力がそのまま歯にかかってしまいます。

そして、噛む力に比例して歯の強度も高い、というわけでもないのです。

最近では、デンタルケアの一環として牛のアキレスなどの固いおやつを与える飼い主さんもいますが、実はこれも歯の破折に繋がることがありますので与える際には十分に注意しましょう。

おもちゃが歯の“やすり”になってしまう

毛足の長いおもちゃ(硬式テニスボールなど)を野外で使うことで、毛の間に砂利が入り“やすり”のように歯を削ってしまう場合もあります。

屋内、屋外で同じおもちゃを使って遊んでいる場合は、屋外での使用後にしっかりおもちゃを洗ってあげましょう。

意外と犬の歯は脆い!

犬の歯はあまり強くなく、特に臼歯はハサミのような形状になっているため、力のかかり具合によっては簡単に割れたり欠けたりすることがあります。

さらに歯を覆っているエナメル質が、犬はなんと人間の歯の1/5程度しかないのも脆さの原因となっているようです。

歯の破折・咬耗は“怪我”です

もしも愛犬の歯が破折や咬耗を起こしてしまった場合は、必ず動物病院を受診しましょう。

破折や咬耗によって、歯の中にある血管や神経の通っている軟らかい組織である歯髄(しずい)が露出してしまうと、出血や激しい痛みを伴います。

また歯髄が露出している部分は菌が入りやすく、根尖膿瘍(こんせんのうよう)などの感染症を起こす可能性もあります。

口内のトラブルは見つけにくいこともありますので、急に大好きなおやつを食べなくなった、食欲がない、口内に出血が見られるような場合は、必ず動物病院で診てもらうことをおすすめします。

【深刻度別】犬の歯周病の症状

ポメラニアンの顔

軽度の歯肉炎【緊急度:★★☆☆☆】

・歯肉が赤く腫れる
・ブラッシングで出血

軽度の歯肉炎では、歯肉が赤く腫れたり、ブラッシングで出血するなどの症状がみられます。

この段階で気づけば歯垢や歯石を除去し口内をキレイにすれば、比較的治療も簡単に済むようです。

ただし、症状としては現れないため、この段階で飼い主さんが気づくのは難しいようです。

日頃から歯磨きを習慣にすることで、早い段階で気づいてあげられるのがベストです。

できるだけ幼いうちから歯磨きの習慣をつけたり、こまめに口内をチェックして予防することが大切です。

少し進行した歯肉炎【緊急度:★★★☆☆】

・口臭が強くなる
・歯肉の炎症、後退が見られる
・歯周ポケットができる
・歯に動揺がみられる

歯肉炎が少し進行すると上記のような症状がみられるようになります。

歯肉が赤く炎症を起こしている、腫れてプヨプヨしている、口臭が強くなるなどの症状がみられるようであれば早めに動物病院を受診しましょう。

重度の歯肉炎【緊急度:★★★★★】

・歯周ポケットが深くなる
・歯周ポケットから膿が発生する
・歯がぐらつく
・歯周病菌などが内臓に悪影響を与えることも

さらに進行し重度になると、噛むと痛みがでたり、歯がグラグラする、抜け落ちるなどの症状があらわれ、食事がまともに食べられなくなります。

また最悪の場合、歯周病菌が血液を通って全身に広がることで、心臓や肝臓などに負担をかけ内臓疾患を引き起こすこともあります。

ほかにも、下顎の骨が溶けてしまったり、歯の根に膿が溜まり目の下が腫れてしまう「歯根膿瘍」などを発症することもあります。

歯周病になりやすい犬種

犬用ベッドに座るフレブル

小型犬

小型犬は骨格や顎が小さいため歯周病にかかりやすいと言われています。

特に、人気犬種のトイプードルやチワワは前歯や犬歯が密集していて歯と歯の間が狭く、ちゃんとケアしていても歯のトラブルが起きやすくなってしまいます。

もちろん大型犬も歯周病になるリスクはありますが、どちらかというと「歯肉過形成」が多くみられます。

歯肉過形成とは、歯肉が腫れて歯が隠れてしまう歯周病の一種です。

これに対し小型犬は、歯周辺の組織が壊れる歯周病が多くみられるのが特徴です。

短頭種

パグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストンテリアなどの短頭種は、上顎が短いという特殊な構造をしています。

そのため、上顎犬歯が横並びのような形状になるため、前臼歯の歯並びが悪化しやすく歯周病が進行しやすいため注意が必要です。


犬の歯周病の治療法&予防法

歯磨きをされる犬 歯肉が赤く腫れる程度の歯肉炎の場合は、歯垢や歯石をキレイに除去し、毎日歯磨きをすることで改善が期待できます。

しかし症状が進行してしまった場合は、動物病院にて麻酔をした上での処置が必要となります。

具体的には歯垢や歯石の除去、歯の根の掃除、研磨、歯周ポケットの掃除などを行います。必要があれば、抜歯、切開などを行います。

動物病院へ行く際、可能であれば抜けた歯を持参しましょう。必須ではありませんが、抜けた歯の状態で原因がわかりやすくなることもあります。

犬の歯周病を予防するには

歯周病の予防になんといっても大切なのは“歯磨き”です。

口内のネバネバや、歯垢を除去することが必要不可欠となってきます。

犬の歯垢は、およそ2~3日で歯石になってしまうと言われていますので、1日1回歯磨きをするのがベストです。

しかし「愛犬が歯磨き嫌いで……」という悩みを抱える飼い主さんも少なくないのではないでしょうか。

歯磨きが苦手な犬の場合、いきなり歯ブラシを口に入れたり、からだを抑え込んで歯磨きをするようなことはやめましょう。

ますます歯磨きが嫌いになってしまいます。

はじめはガーゼを指に巻いて歯を擦ったり、指サック状の歯ブラシを使用するなどの工夫をしてみましょう。

少しずつ慣れてきたら、徐々に歯ブラシを使って磨けるよう練習をします。

毎日の歯ブラシで、歯垢や歯石をためないことが歯周病には最も大切です!

仰向けになるトイプードル 成犬の8割もが罹っているという「歯周病」。

ふとしたきっかけで起きてしまう「歯の破折・咬耗」。

どちらも放っておくと内臓疾患などに繋がる可能性もあります。

成犬なのに歯が抜けた、という場合は迷わず動物病院へ相談してみて下さい。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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