2017年9月13日

【専門家が解説】犬の爪切りは自宅でできる?やり方や頻度など

監修にご協力いただきました!

氏原由佳理先生

トリマー 

トリマー歴9年。愛玩動物飼養管理士1級。ホリスティックケア・カウンセラー。

動物の専門学校を卒業後、ペットショップ、動物病院でトリマーとして勤務。

現在は自宅でサロンを開業し「心地よいトリミング」をテーマに、犬の気持ちに寄り添った負担の少ないトリミングを実践中。ちょっと大きめトイプードルと暮らしてます。

「忙しくてなかなかサロンに連れていけない」そんな飼い主の事情とは関係なく、犬の爪は伸びていきます。しかし、自宅で犬の爪切りをするにも、やり方が分からないと切ることができません。

そんな飼い主に、犬の爪切りの方法や頻度、注意点について解説します。

どうして犬の爪切りが必要なのか

飼い主と散歩する犬 犬の爪は歩くことで少しずつすり減っていきますが、部屋の中で暮らす小型犬は、散歩の時間が短いので、伸びていくペースの方が早くなります。

犬の爪はカーブを描くように伸びていきます。そのため犬の爪を切らずに放置していると、爪の行き場がなくなって横倒しになります。

こうなると歩くたびに爪が皮膚に食い込んで痛みが発生しますし、足先から伝わる刺激によって骨や関節を傷めたりします。

また、伸びすぎた爪が絨毯やサークルなどに引っかかる事で、根本から取れてしまうこともあります。

このように犬の爪を切らずに放置していると、生活の邪魔になったり、犬の健康を損ねる原因になったりするため、定期的な爪切りが欠かせません。

犬の爪切りを自宅ですることについて

爪を切ってもらうトイプードル 犬にとって爪切りはとても嫌な作業です。なぜなら犬の爪の中には血管と神経が通っているからです。爪切りで血管や神経に触れてしまうと痛みを感じます。

しかしどこまで血管や神経が通っているのかは見た目では分かりにくいです。

そのため、自宅で犬の爪を切ることで思いがけず出血してしまい、犬に痛い思いをさせてしまうかもしれません。

また、出血を恐れてしっかりと切れない可能性もあります。そのため自宅での爪切りは、トリミング代の節約という理由で行うべきではないでしょう。

では、犬の爪を自宅で切る理由とは何でしょうか。例えばすごく臆病な犬や、寝たきりの老犬など、外に連れ出すのが難しい犬は自宅で爪切りをするしかありません。

それにトリミングサロンに行く時間がない人も、そのままにしていると犬の爪が伸びすぎてしまうため、自宅で爪切りをしてあげないといけません。

このようにトリミングサロンを利用できない理由がある場合に、自宅で爪切りをしてあげると良いでしょう。


犬の爪切りに必要な道具

犬用爪切り

爪切り

必ず犬専用の爪切りを使いましょう。犬の爪は筒状になっているため、人間用の爪切りは使えません。犬の爪切りには、ギロチンタイプとニッパータイプの 2 種類があります。基本的にはどちらを使っても構いません。

ただしニッパータイプは切る力が弱く、太い爪は切れないかもしれません。そのため初心者は使いやすいギロチンタイプを選ぶと良いでしょう。

爪やすり

これも犬専用のやすりを使いましょう。爪を切った後は角が残ります。そのままだと飼い主さんが抱っこをしたときに引っかかれたり、犬が体を掻いたときに皮膚を傷つけてしまったりします。

止血剤

自宅で犬の爪切りをするときは止血剤も用意しておきましょう。深爪すると出血してしまいます。その時に止血剤がなければ出血を止めることができません。

お線香の灰でも代用できますが、いつでもあるわけではありません。止血剤はペットショップなどで販売されています。少々高いですが、自宅で犬の爪切りをするなら絶対に必要です。

犬の爪の切り方

右前足の爪を切られる犬

STEP1 犬を落ち着かせる

自宅で爪を切る前は犬を落ち着かせておきましょう。興奮している状態で爪切りをしようと思っても、なかなか切らせてくれません。寝起きなど犬がリラックスしているときを見計らって爪切りしましょう。

STEP2 犬の爪を切る

まずギロチンタイプの爪切りは、握ったときに可動する部分を下にして持ちます。爪切りの上側のパーツに親指を当て、残り 4 本の指で下側のパーツを支えましょう。

犬の爪は後ろ足から切っていきます。左手で犬の足先を持ち、後ろ方向に持ち上げます。すると肉球が見える状態になったと思います。

次に、左手の指で犬の爪の根本を動かないように支え、爪切りのわっかになっている部分を犬の爪に通して切っていきます。このとき、一気に切ろうとすると深爪する可能性が高いです。犬の爪はまっすぐにバツンと切るのではなく、角を取るように斜めに 1 ~ 2 ミリずつ切っていきましょう。

白い爪の犬は、横から見たときにピンク色の血管が透けて見えます。血管を傷つけないように慎重に切っていきましょう。後ろ足が終わったら前足の爪も同じように切っていきます。

STEP3 やすりをかける

爪切りが終わったらやすりをかけていきます。やすりは爪の先にむかって一方向に動かします。角が取れて滑らかになるまで続けてください。やすりをかけ終わったら、犬の爪を触って痛いところはないかを確かめてみましょう。

POINT 出血させてしまったら…

爪切りで出血させてしまったら、止血剤を指にとり、出血している部分にすり込みます。しばらく指で押さえてください。

太い血管を切ってしまった場合はなかなか血が止まりません。あせらずにもう一度止血剤を重ねて塗りましょう。

爪切りの際の注意点

肉球

黒い爪を切るときは

白い爪の犬は血管が透けて見えますが、黒い爪の犬は血管が見えません。そのためどこまで切って良いかが分かりにくく、深爪しやすいです。

黒い爪を切る場合は、爪の断面に注目してみましょう。少しずつ切っていくと、やがて爪の断面に黒い芯のようなものが見えてきます。また、粉っぽかった断面がしっとりとしてきます。これが出たら血管が近い証拠です。そこで切るのをやめておきましょう。

切るときはスパッと切る

犬の爪切りをするときにためらってゆっくり切ると、爪が押しつぶされて痛みを感じやすく、犬が痛がります。また飼い主さんの不安が伝わることで犬がソワソワし始めます。そのため、切ると決めたら一気に素早く切りましょう。

狼爪(ろうそう)も忘れずに切る

狼爪(ろうそう)とは犬の親指にあたる爪です。犬の前足には狼爪があります。まれに後ろ足に狼爪をもつ犬も存在します。

狼爪を切り忘れると、伸びたときに犬の体に刺さり、皮膚が炎症を起こしてしまいます。狼爪は生まれたときに切除することが多いため、犬によっては狼爪がない場合もあります。

爪切りを嫌がる犬の対処法

険しい表情の犬

爪切りにトラウマがある犬

爪切りに対して嫌なイメージがついている犬は、自宅で爪を切ろうとすると嫌がって暴れます。犬が動くとさらに深爪する可能性があるため、誰かにおさえてもらいながら作業しましょう。

また、爪切りに対してトラウマがある犬の場合は、すべての爪を一度に切ろうとすると大変で、犬にも飼い主さんにも負担がかかってしまいます。そのため、 1 日に 1 本ずつでも良いので少しずつ時間をかけて切ってあげてください。

時間をかけられるというのは、自宅で爪を切るメリットでもあります。そして 1 本の爪が切れたらご褒美をあげるなど、爪切りに対する嫌なイメージを払拭していきましょう。

足の先を触られたくない犬

犬は基本的に足の先を触られたくはありません。足先を触られたくない犬は、後ろ足は切らせてくれても、前足になると嫌がって噛んだりします。その場合も誰かにおさえてもらいながら作業すると良いでしょう。

ただし首を持つと犬が動いたときに締まりやすく、苦しい思いをさせてしまいます。その場合は、あごの骨と後頭部を同時に持って保定すると犬は頭が動かせず、苦しくありません。

落ち着きのない犬

落ち着きのない犬の爪切りをするのは大変です。犬が興奮しているときに爪を切るのは避けましょう。また、犬がちょうど乗るくらいの少し高めの台の上で爪を切る方法もおすすめです。

犬の行動範囲を狭めることで、動きを制限することができます。台の上には滑り止めを敷いておきましょう。

爪切りの適切な頻度

犬の足先 犬の爪は 1 ヶ月に 1 度くらいを目安に切ってあげましょう。ただし爪が伸びるスピードやすり減り具合などは個体差が大きいため、一概には言えません。

爪切りが必要な時期を見分ける他の方法としては、犬が立ったときに爪が地面についているかで判断すると良いでしょう。その場合は犬が歩くたびにカチャカチャと音がなるはずです。

しかし犬によってはすでに血管が長く伸びている場合もあります。血管や神経が伸びている場合は、その手前までしか切れません。その子の爪の状態をみて判断してあげてください。

まとめ

飼い主と手を合わせる犬 「忙しくてサロンに連れていけない」「寝たきりで外に連れていけない」「うちの子は臆病でサロンに行くと体調を崩す」それでも犬の爪は時間の経過とともに伸びていくため、定期的な爪切りが欠かせません。

自宅で犬の爪切りをするときは、時間をかけて少しずつ切ってあげましょう。

氏原由佳理 文:氏原 由佳理

トリマー歴9年。愛玩動物飼養管理士1級。ホリスティックケア・カウンセラー。

動物の専門学校を卒業後、ペットショップ、動物病院でトリマーとして勤務。現在は自宅でサロンを開業し「心地よいトリミング」をテーマに、犬の気持ちに寄り添った負担の少ないトリミングを実践中。ちょっと大きめトイプードルと暮らしてます。

この記事が気に入ったら
Qpetに「いいね!」しよう



合わせて読みたい


  • もしもマガジン Qpet協力ドクターの紹介
  • PAGE TOP