2017年10月8日

【獣医師監修】犬のアトピー性皮膚炎の原因・症状・治療法を徹底解説

監修にご協力いただきました!

東京都立川市出身

国学院大学久我山高校 卒業
麻布大学獣医学科 卒業

国立市ふく動物病院 勤務
日本獣医皮膚科学会 所属
東京農工大学皮膚科 研修医
渋谷区 SHIBUYAフレンズ動物病院 院長

最近、愛犬が頻繁に身体を舐めていたり、足でかいたりする様子を見かけるようになった・・。

それはもしかすると「アトピー性皮膚炎」が原因かもしれません。

アトピー性皮膚炎というと人間が罹る疾患というイメージがありますが、犬も皮膚のバリア機能が低下することで、アレルギーの原因となるアレルゲンが体内に入り異常反応を起こします。

アトピー性皮膚炎は一度患ってしまうと完治が難しい疾患とも言われています。

長いスパンで根気よく治療しなければいけないため、疑わしい点があるようなら早めに動物病院を受診し、まずは早期発見を目指しましょう。

犬のアトピー性皮膚炎で見られる症状

犬の足 犬がアトピー性皮膚炎になった場合、次のような症状がみられます。

目や口元、腹部などに赤みがみられる

アトピー性皮膚炎は、主に目の周りや口元、腹部など被毛の薄い柔らかい部分に現れることが多く、症状が進行するにつれて皮膚が赤みを帯びてきます。

患部を頻繁に舐める

アトピー性皮膚炎の特徴は、強い痒みを伴う炎症や湿疹が生じることです。

患部を仕切りに舐めてしまうことで、それが逆に刺激となってしまい、さらに痒みが増すという悪循環を招いてしまいます。

患部を前足や後ろ足でしつこくかく

後ろ足で体を掻く犬 痒みが発生すると前足や後ろ足で頻繁にかくようになります。

皮膚をかき壊してしまうと患部に雑菌が繁殖しやすくなり、さらに痒みが増してしまいます。

皮膚からの出血、化膿

かき壊してしまうことで、出血をしたり患部が化膿してしまうこともあります。

アトピー性皮膚炎は夜中にかゆみが増すことが多く、出血するまでひっかいてしまうケースも多いようです。

顔周りであれば、エリザベスカラーを使用したり、犬用の靴下を履かせたりすることで改善を図ることができます。

被毛が薄くなる

体を舐める犬 患部を頻繁に舐めたり、ひっかくことによって、被毛が徐々に薄くなり赤みを帯びてきます。さらに症状が進行すると皮膚が黒ずんできます(色素沈着)。

フケがでる(鱗屑)

皮膚に刺激やストレスが加わることで、それに抵抗しようとし体内の反応が活発になります。

これによって皮膚の代謝が高まりフケが出ることがあります。

また、皮膚の乾燥によってもフケが発生することがあります。

一部の皮膚が固くなる(苔癬化)

炎症を繰り返すことにより、皮膚が固くかつ厚くなる状態のことです。

皮膚の苔癬化がひどくなると、外用薬の効果も比較的浸透しにくくなってしまいます。

アトピー性皮膚炎が原因である場合は、いずれの症状も左右対称に現れるのが特徴です。

目の周り、四肢、指と指の間、脇の下、腹部などに現れることが多く、初期症状では軽度の赤みや発疹を伴うことがほとんどです。

慢性化して重症になるにつれて色素沈着により皮膚の色が黒ずんできたり、膿皮症や結膜炎などの合併症を招くことがありますので早めに対処しましょう。

犬がアトピー性皮膚炎になる原因とは

芝生の上に座り体をねじる犬 犬のアトピー性皮膚炎は、遺伝的な(アトピー)体質が深く関係している病気だと考えられています。

また特定の犬種に好発しやすい傾向にあり、その75%は3歳までに何らかの形で発症が確認できるとも言われています。

アレルゲンとの接触

草むらで伏せるダルメシアン カビ、ダニ、ノミ、ほこり、花粉など、特定のアレルゲンと接触することで皮膚症状がでます。

特に5~6月の高温多湿の時期は、カビやダニが発生しやすくなり、皮膚からアレルゲンが侵入しやすくなります。

カビやダニがアレルゲンの場合は、この時期こまめに掃除機をかけるなどして部屋を清潔に保つように心掛けましょう。

また花粉がアレルゲンとなる場合は、毎年、春~秋にかけての花粉が多く飛ぶ季節に症状がでやすくなります。

犬の場合はイネ科の雑草で5~8月頃に多く飛散する「カモガヤ」や、キク科の雑草で7~10月にかけて飛散する「ブタクサ」などに反応することが多いといわれています。

花粉といえば2~3月にかけて飛散するスギを思い浮かべる方が多いと思いますが、このように花粉の種類は多く、飛散する時期も多様なのです。

遺伝的特性

ベッドの上で一点を見つめる犬 アトピー性皮膚炎は、遺伝的に環境アレルゲン(カビ、花粉、ハウスダスト)に対してアレルギー(IgE抗体)を作りやすい体質を持っている犬種が罹りやすいといわれています。

該当する犬種としては、以下が挙げられています。

・柴犬
・ウェストハイランドホワイトテリア
・フレンチブルドッグ
・シーズー
・ゴールデンレトリーバー
・ラブラドールレトリーバー
・ヨークシャー・テリア


犬のアトピー性皮膚炎の治療法

タオルで顔を拭かれるシュナウザー まずはアレルギーの症状が「いつ」「どこで」起こるのかを明確にします。

「お散歩に行ったとき」「家のある特定の部屋に入ったとき」「季節によって症状が酷くなる」など、愛犬の様子を観察した上で詳細を獣医師へ伝えるようにしましょう。

犬のアトピー性皮膚炎の診断方法

アトピーの診断方法は、まずはじめにノミ、疥癬、ニキビダニなどの寄生によって皮膚病を患っていないかを検査します。

この検査で外部寄生虫症ではない場合、次にブドウ球菌やカビなどの細菌、真菌に感染していないかを検査します。

感染症のコントロールが難しい場合は、内分泌疾患などの基礎疾患が隠れていないか検査をします。

基礎疾患が該当せず、感染症のコントロールができたうえで痒みの改善が認められない場合は、食物アレルギーを疑います。

食物アレルギーを除外するためには、除去食試験を行います。

除去食試験とは、ある1種類の低アレルギー食と水だけの生活を2ヶ月続け、痒みの変化を観察することです。

しかし、低アレルギー食のなかでも、その子にとってアレルギーを起こす食事と起こさない食事があります。

可能であれば、何種類かの低アレルギー食で、除去食試験を繰り返します。

上記にも該当しない場合は、症状の経過や生活環境などを総合的に考慮し、はじめてアトピー性皮膚炎と診断がつきます。

このように「アトピー性皮膚炎」は受診したその日に診断されることは少なく「除外診断(※1)」が適用されることが多いため、同じ病院に根気よく通院する必要があります。

(※1)除外診断…可能性のある原因を一つ一つ確認し、すべての可能性がなくなったときにはじめて診断がつくこと。

フードの見直し

ドッグフードを食べる犬 フード内のたんぱく質がアレルゲンとなっているか否かを調べるためには、アレルギーを起こしにくいとされている加水分解フードへ切り替え、症状に改善が見られるか観察するという方法もあります。

改善された場合にも、一度フードを元のものに戻して症状の再発がないかを確認します。

この間、原因の特定をスムーズにするためには、おやつなど主食以外のものは一切与えないようにする必要があります。

アレルギー療法食などもあるので、分からないことがあれば獣医師へ相談しましょう。

薬用シャンプーや保湿剤を用いたスキンケア

薬用シャンプーや保湿剤を用いたスキンケアは、家でできる最も有効な方法です。

薬用シャンプーには、皮膚の表面の余分な油や汚れを落とすとともに微生物の増殖を防ぐことができるものがあります。

使用するシャンプーは、低刺激のもの、抗菌力のあるもの、脱脂効果の強いもの、様々な薬用シャンプーの中から、皮膚の状態に合ったシャンプーを選ぶようにしましょう。

さきほど皮膚が乾燥することでアレルゲンが体内に入りやすくなるというお話をしましたが、これを予防するのが保湿剤です。

健康な犬は、皮膚の表面に水分の層があり、これがバリア機能となってアレルゲンから皮膚を守っています。

この水分の層を維持するために、セラミドと呼ばれる脂質が重要な役割を担っています。

セラミドを補う保湿剤を使ったり、ワセリンなどの保湿剤を使って全身を保湿することで痒みを軽減することができます。

外用薬

クリーム剤、軟膏剤、液剤、スプレーなどがありますが、よく使われるのがステロイド外用薬(副腎皮質ホルモン剤)です。

「ステロイド=怖い」と考え、なるべく短い期間で少量をと考える方もいるかもしれませんが、中途半端に使うとかえって症状を悪化させてしまったり長引かせてしまったりすることがあります。

ステロイドを使用する場合は、獣医師の指示に従って用法用量を守って使用するようにしましょう。

内服薬

カプセルの薬を見るパグ 犬の皮膚病の治療では外用薬を使用するのが一般的ですが、被毛があるため皮膚に届きにくい場合があります。

また、舐めてしまうこともあるので、外用薬のみでの治療は難しいことが多いです。

そのためステロイド剤や、抗ヒスタミン薬を併せて使用することもあります。

アトピー性皮膚炎が全身に広がってしまうなど重症の場合も、内服薬での治療がメインとなります。

生活環境の見直し

検査や治療の過程でアレルゲンが特定できた場合には、それを住環境から減らす工夫をする必要があります。

まだアレルゲンを特定されていない場合には、原因物質となりやすいダニ、ハウスダスト、花粉との接触を減らすために、住環境はこまめに掃除をして清潔に保つようにしましょう。

・「皮内反応検査」などで、アレルゲンが推定された場合は、それらを減らす工夫をし、「減感作治療(※2)」に臨む。
(※2)獣医師の指導のもと、注射などでアレルゲンを少量ずつ摂取することで、アレルギー反応を軽減させる治療。

・おやつなどを控える(食物中にアレルゲンが含まれていないかを判断するため、食事内容をかえたりしながら症状の改善がみられるかを観察する意図)

まとめ

飼い主を見上げるフレンチブルドック 愛犬が頻繁に身体を舐めていたり痒がっていたりする場合は、今回お話したようなポイントをしっかり観察しておきましょう。

最初に触れたように根治が難しい病気ではありますが、”強い痒み”が長く続くことで、犬のストレスもどんどん蓄積されてしまいます。

早く治療に取り掛かるためにも、気になることがあれば早めに獣医師に相談してくださいね。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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