2017年6月13日

【獣医師監修】メスに多い犬の膀胱炎!症状・原因・治療法について

監修にご協力いただきました!

櫻井洋平先生

BiBi犬猫病院  院長

2008年3月 麻布大学獣医学部獣医学科卒業

2008年4月〜2013年11月 横浜市内動物病院勤務

2011年4月〜2015年3月 麻布大学附属動物病院 腎泌尿器科・外科 専科研修医として研修

2013年12月〜2015年5月 千葉県内動物病院勤務

2015年7月〜2016年2月 宮城県内動物病院勤務

2016年11月〜 仙台市にBiBi犬猫病院を開院

最近、愛犬のトイレの回数が多くなった、尿の状態が以前と変わったなど、愛犬の排泄に関して違和感を感じていませんか?それは、もしかしたら膀胱炎かもしれません。

膀胱炎とは、尿道を伝って膀胱に入った細菌が、膀胱の粘膜に付着し炎症を起こす病気です。オスよりも、尿道が太く短いメスのほうが罹りやすいといわれています。

放置しておくと再発を繰り返すばかりか、結石や腎盂腎炎を引き起こし、どんどん重症化する可能性もあります。

犬の膀胱炎の症状って?

水をたくさん飲んでいるビーグル 犬が膀胱炎になると、下記のような症状がみられます。

食欲不振

健康のバロメーターとなる食事。膀胱炎に限らず、体に不調があると食欲不振になることがあります。

頻尿

初期の段階では頻尿が見られます。突然トイレ以外で粗相をするようになったという場合、まずは1日のトイレの回数がどのくらいかをチェックしましょう。

排泄しているとき、いつもと違ったりしていませんか?痛みがあると腰を丸めて排泄をしたり、排泄の際に鳴くこともあります。

また、何度もオシッコをしようとするがまったく出ない、チョロチョロしか出ない場合もありますので注意して観察してみてください。

水を飲む量が増える

頻尿になると水を飲む量も増えてきます。いつもより多量に水を飲んでいるようであれば、泌尿器系に異常があるかもしれません。

犬が1日に必要とする水分量は「体重(kg)×50ml)と言われています。ただし、これはあくまでも目安です。

水分量には個体差があります。無理に与えようとすると、かえってストレスとなります。

日頃から水分をあまり摂らない犬の場合は、ウェットフードを利用するなどして、自然と水分を摂れるように工夫しましょう。

陰部を舐める

犬は痛み、痒み、臭いがある場所を、執拗に舐める習性があります。特にメス犬が外陰部を舐める場合、膀胱炎により膣から分泌物が出ている可能性があります。

尿の臭いが強くなる

健康な犬でも多少アンモニアの臭いがしますが、膀胱に異常がある場合はツーンと鼻につくような臭いがします。

色の濃い尿がでる、濁ったような尿がでる

健康な状態の尿の色は、薄い黄色もしくはオレンジがかった黄色です。茶色やコーヒーのように黒っぽい色だったり、白っぽく濁っている場合は細菌が混入している場合があります。

血尿がでる

血尿が出る場合は膀胱炎の可能性が高く、初期症状の頻尿よりもさらに症状が進行していることもありますので、早急に病院へ行きましょう。

その他、尿路結石などで尿管が傷ついて血尿が出ている可能性も考えられます。原因を問わず、血尿がみられた時点で診察を受けるべきだと思っておきましょう。

通常、健康な犬の排尿はオス・メス共に1日4~5回程度です(マーキングなどは除く)。

排尿の回数がこの平均値より大幅に上回る場合は、泌尿器系の病気の疑いがあります。

ただし回数に関しては個体差もありますので、通常時が何回くらいかを把握しておくと、いざというときに判別しやすいです。

お散歩でしか排泄をしない犬の場合は、飼い主もオシッコの変化に気づきにくい傾向にあります。毎日のお散歩で、オシッコのチェックを欠かさないようにしましょう。

犬の膀胱炎の原因とは

気怠そうに床に横たわっているビーグル

【犬の膀胱炎の原因1】細菌感染

膀胱炎の中でも圧倒的に多いのが、大腸菌やブドウ球菌が膀胱に入り、炎症を起こすことで発症する「細菌感染による膀胱炎」です。

感染経路は尿道口が多く、しゃがんで排泄すること、尿道が短いことからメスは膀胱炎に罹りやすいと言われています。

年齢は5~6歳前後が最も多く、免疫力が低下した犬や老犬はオス・メス関係なく感染します。

【犬の膀胱炎の原因2】尿路結石

尿中の成分が結晶化することにより膀胱を刺激し、炎症を起こす原因となります。

尿路結石の中でも一番多いと言われている膀胱結石とは、膀胱の中に無機質な石状の塊(結石)ができることで、痛みや血尿などの症状が現れます。

結石の多くはストルバイト結石(燐酸アンモニウムマグネシウム)からできていることが多く、ミニチュアシュナウザー、ヨークシャテリア、ダルメシアン、ダックスフンド、チワワなどが尿路結石にかかりやすい犬種と言われています。

愛犬の飲み水にミネラルウォーターを与えている場合も要注意です。ミネラルウォーターには「カルシウム」や「マグネシウム」が多く含まれており、これらの過剰摂取により結石を引き起こすこともあります。

【犬の膀胱炎の原因3】ストレス

繊細な性格の犬は、トイレの位置が変わったなど環境の変化で、今までスムーズにできていた排泄がうまくいかなくなることがあります。

また、お留守番の長い犬、運動が十分でない犬などはストレスが溜まります。

ストレスによって免疫力が低下すると、細菌に感染しやすくなるため、膀胱炎を発症することがあります。内臓疾患のストレスから膀胱炎に繋がることも少なくありません。

【犬の膀胱炎の原因4】腫瘍、外傷による炎症

腫瘍や交通事故によって膀胱が傷つけられ、膀胱炎を発症するケースもあります。腫瘍の治療に用いる薬剤が関与している場合もありますので、気になることがあれば獣医師へ相談をしましょう。

【犬の膀胱炎の原因5】気候

冬場など寒くなると水分を摂取する量が極端に減るため、膀胱炎に罹りやすくなると言われています。

飲水量が少ないと膀胱内に細菌が長時間とどまり続けるため、水分を適度に摂る必要があるのです。

例えばドッグフードをお湯でふやかしてから与えたり、ウェットフードを利用するなどして自然に水分が摂れるように工夫しましょう。


犬の膀胱炎の治療法

体調が悪そうなビーグルが獣医に診察を受けている様子
膀胱炎の原因を特定するために尿検査をします。見た目、尿中の白血球の量、タンパク、ph、結晶の有無などを調べます。

さらに、尿を培養して細菌の種類を調べる方法もあります。診断結果をもとに、下記のような治療を行います。

投薬

膀胱炎を起こしている細菌が分かったら、適した抗生物質を2~3週間ほど投与します。

細菌の種類は、大腸菌やブドウ球菌、プロテウス属が最も多く全体の半数以上を占めています。

細菌が完全にいなくなるまで抗生物質を飲む必要がありますので、治療を止めるタイミングは獣医師の指示に従いましょう。

また抗生物質を投与しても、改善が見られない場合は薬が合っていない場合がありますので、その旨を獣医師へ伝えるようにしてください。

水をたくさん飲ませて、できるだけ早く膀胱内の細菌の排出するのも有効です。

基礎疾患の治療

何度も再発を繰り返して慢性化している場合は、結石や腫瘍、皮膚炎や内臓疾患などから膀胱炎を発症している場合もあります。その場合は、原因となる疾患の治療を同時に行う必要があります。

完治のポイントは「獣医師の指示を守ること」

膀胱炎の治療でもっとも大切なのは“膀胱内の細菌をしっかり減らすこと”です。

症状に改善がみられたから、と自己判断で通院や服薬を途中で勝手に止めたりすると再発率が高くなりますので、完治するまで治療を続けましょう。

再発を繰り返すと、膀胱がんの発症率を高めてしまうこともあります。

膀胱炎自体は命に関わる病気ではないのですが、膀胱炎の再発や慢性化により併発する病気は恐ろしいものが多いので、絶対に軽視しないようにしてください。

犬の膀胱炎を予防するコツ

床に置かれたキレイなトイレシート

生活環境を清潔に保つ

膀胱炎は細菌の感染によって起こることがほとんどです。よって細菌を寄せ付けない、清潔な環境を作ってあげることがとても重要です。特にキレイ好きな子は、シートに排泄物があるとオシッコを我慢してしまうこともあります。犬のトイレを徹底的にキレイに掃除し、排泄をしたらすぐに片づけるように心がけましょう。

排尿を適切に行わせる

膀胱炎を予防する上で最も大切なことは「排尿は我慢をさせないこと」です。

“排泄はお散歩の時にするもの”というしつけはとても危険です。

特にマンション住まいで、行きたいときにお散歩にいけない、長時間お留守番をさせるような状況にある場合は、トイレシートで排泄できるようにしつけをしましょう。

自分でしつける自信がない場合は、ドッグトレーナーなど専門家へお願いするのもおすすめです。

トイレシートで排泄ができるようにしつけておけば、雨の日でもトイレの心配をする必要はありませんし、老犬になってお散歩にあまり行きたがらくなったときでも排泄の心配をすることがないので安心、というメリットもあります。

飲み水や食事を見直す

一日中ダラダラと食事をする習慣は、尿をアルカリに傾ける傾向があります。残した餌はそのままにせず、早めに片づけるようにしましょう。

食事にメリハリをつけることも大切です。

お散歩の後、おしりを拭く

お散歩の後、おしりを拭いてあげるのも効果的です。膀胱炎は、細菌の混入が原因です。

清潔にしてあげることで予防にも繋がります。

膀胱炎を予防する食べ物

飼い主の手からエサを食べているビーグル

クランベリー

クランベリーというと日本ではあまり馴染みのないフルーツですが、海外ではジュースやソース、ジャムなどに多く使われていてハーブとしても有名です。

クランベリーの効果・効能としては、主に膀胱炎・尿道炎・尿路結石の予防に効果があるといわれています。

クランベリーに含まれる「キナ酸」は、腸に大腸菌が住みにくい環境を作ってくれるのです。

クランベリーはパウダー状のサプリが市販されていますので、ご飯などに振りかけて摂取するのがお手軽です。

最近では、ドッグフードにクランベリーの抽出液が含まれているものもあり気軽に取り入れられます。

エキナセア

膀胱炎にはエキナセアもおすすめです。エキナセアはキク科の多年草で、北米のインディアンが風邪などの予防に使われてきたハーブです。

免疫力を高める働きがあり、抗ウイルス作用や抗感染作用があるので、膀胱炎などの細菌の感染から守ってくれる働きをします。

エキナセアもパウダー状のサプリが市販されていますので、クランベリー同様にご飯に振りかけて摂取するのがおすすめです。

クランベリーとエキナセアは、同時に摂ることでさらなる効果を発揮することができます。

まとめ

一般的にはメスに多いと言われている膀胱炎ですが、寒い季節には性別に関係なく発症することが多いと言われています。

環境の改善や排泄習慣を見直しすることで予防することもできますし、早期発見・早期治療で完治します。

もし愛犬の排泄に異常を感じたら、早めに動物病院を受診するようにしましょう。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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