2018年1月27日

【獣医師監修】もしかして病気? 犬が足を引きずる理由

監修にご協力いただきました!

東京都立川市出身

国学院大学久我山高校 卒業
麻布大学獣医学科 卒業

国立市ふく動物病院 勤務
日本獣医皮膚科学会 所属
東京農工大学皮膚科 研修医
渋谷区 SHIBUYAフレンズ動物病院 院長

「足を引きずっている」「いつもなら走り回るのに、今日は大人しい」「最近なんだか歩き方が変わった」「片足だけ地面につけずに歩いている」「フラフラしながら歩いている」このように、ドッグランや散歩中などに、犬の歩き方がふと気になったことはありませんか?

歩き方に不自然な点がみられる場合、足腰に何らかの病気を患っている可能性があります。

今回は、このようなときに考えられる疾患やトラブルについてまとめてみました。

犬が足を引きずる原因とは?

飼い主と犬の足

怪我をかばっている

犬は常に裸足で歩いている状態です。

お散歩の途中で、肉球にガラスの破片や植物のトゲが刺さるということも考えられます。

また肉球の間に小石が挟まった、ダニがついている、真夏の熱いアスファルトを歩いて火傷を負ってしまったときなどは、痛みによって歩き方がいつもと違うようになることがあります。

お散歩から帰ってきてからも、しきりに足の裏を気にしている、出血している、足を地面につけて歩きたがらないなどの症状が見られるようであれば、怪我の可能性が疑われます。

もしもこのような症状がある場合は、傷口を消毒する、火傷がある場合はアイシングをするなどの応急処置をし、早急に動物病院を受診することをおすすめします。

どんなに小さな傷でも舐め続けることで雑菌が入るなど、症状が悪化する可能性があるので放置はしないようにしましょう。

早めに治療をすれば、ほとんどが完治します。

病気

足腰の関節が原因で起こる症状だった場合、ほかにも不調が隠れている可能性があります。

詳しい病気や症状については、次の章でご紹介します。

「足をひきずる」症状がみられる病気

獣医師とラブラドール

膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

【症状】

・足を引きずる
・片足を上げたまま立つことが多い
・スキップしているような歩き方に見える
・極端なX脚やO脚
・足を触ると嫌がる

膝の骨が正常な位置からずれてしまう疾患で、症状によって病名が分かれます。

脱臼:完全に外れてしまうこと
亜脱臼:ずれてしまうこと
内方脱臼:内側にずれること
外方脱臼:外側にずれること

この中で一番多い症状は、内側にずれる「膝蓋骨内方脱臼」です。

チワワ、ポメラニアン、マルチーズ、トイプードルなどの小型犬に起こることが多く、そのほとんどが先天性の遺伝によるものです。

交通事故、高いところから飛び降りた衝撃、転倒など、後天性な要因によって引き起こすこともあります。

【治療法】

軽度の場合は運動をコントロールするなどして経過観察することもありますが、重度の場合は、膝蓋骨を元の位置に戻す外科手術を早期に行う方法が有効です。

股関節形成不全

芝生に伏せる犬の前足

【症状】

・足を引きずる
・歩行のたびに腰が左右に揺れる
・うさぎのように飛び跳ねる、スキップしているように見える
・運動を嫌がる
・後ろ足がうまく折りたためない
・階段を昇ることができない

股関節が正常に形成されない病気です。

本来なら骨盤の“おわん”のようなくぼみと、大腿骨頭がぴったりと密着することで股関節が形成されます。

しかし、くぼみが浅い状態であったり、変形してしまったりすることで股関節形成不全が起こります。

原因のほとんどは遺伝的なもので、生後5~8ヵ月の成長期、中年~高齢期に症状が現れることが多いようです。

また、この疾患は小型犬や中型犬よりも、ジャーマンシェパードや、ラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバーなどの大型犬に多く発症するのも特徴です。

ほかにも発育期に、肥満や過度の運動(ものを引っ張るなど)によっても起こる場合もあります。

【治療法】

犬が成長期の段階である場合は、できるだけ安静にしておいた上で食事量や運動量を調整し、関節が正常に成長するのを待ちます。

痛みが発症しているような場合は投薬治療し、併せて食事や運動をコントロールによって症状の悪化をくい止めます。

投薬治療でも改善がみられず、運動も困難となるような場合は外科手術を行うこともあります。

椎間板ヘルニア

【症状】

・足を引きずり、歩き方がおかしい
・運動を嫌がる
・前足、後ろ足、胸部付近の麻痺
・背中を地面にこすりつける
・自分の意志で排尿や排便ができなくなる

布団から顔を出す犬と飼い主の足 背骨と背骨の間にある「椎間板」と呼ばれるクッションが変形し、本来あるべき場所から突出してしまう病気です。

症状は片側のみ、両側に現れるなどいろいろなタイプがあります。

背骨への負担や加齢、肥満、遺伝的体質などが原因として挙げられます。

ミニチュア・ダックスフント、シーズー、ウェルシュ・コーギー、ペキニーズ、アメリカン・コッカ―スパニエルなど小型犬や胴長短足の犬は発症する可能性が高いと言われています。

【治療法】

軽度の場合、投薬治療を行い安静にしながら様子をみます。

また進行の予防として、肥満解消や過度の運動制限なども行います。

重度のケースでは、外科手術が必要となることもあります。

変形性関節症

犬の変形性関節症とは、骨と骨を繋いでいる関節が炎症を起こし、変形した状態のことです。

同じ場所に繰り返し炎症を起こすことで、軟骨がすり減ってしまうこともあります。

変形性関節症の一番の原因は”加齢”ですが、過度の運動、肥満、関節リウマチ、捻挫、膝蓋骨脱臼、骨折、股関節形成不全などさまざまな疾患が原因で変形性関節症が引き起こされることもあります。

【症状】

・足を引きずる
・歩き方がおかしい
・運動を嫌がるようになった
・関節の動きがかたい、変形、腫れなどがみられる
・触ると嫌がる

【治療法】

疾患によって変形性関節症が引き起こされている場合、まずはそれらの基礎疾患の治療を先に行います。

明確な原因が分からない場合は、投薬治療を行い、炎症や痛みを軽減し様子をみます。

前十字靭帯断裂

砂浜に伏せる犬 前十字靭帯断裂は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ前十字靭帯が切れてしまう病気です。

軽傷であれば数日で症状は治まりますが、何度も同じような損傷を繰り返すことで完全に靭帯が切れてしまうこともあります。

交通事故などで外から急激な圧力がかかったり、フリスビー競技を行う犬は激しいダッシュやターン時にかかる負担により発症する場合もあります。

また、肥満や高齢によって靭帯が弱くなっている場合は、少しジャンプしただけで切れてしまうこともあります。

靭帯が切れてしまうと、関節の中でクッションの役割をしている半月板に負担がかかります。

この半月板が損傷したり、関節炎が起こると痛みは強くなります。

【症状】

・足を引きずる
・1本の足を上げて歩く
・立ったり座ったりが困難
・関節に水が溜まり腫れる
・足を触られるのを嫌がる

【治療法】

軽度の場合は、投薬治療と患部を固定するなどし、安静を保ちながら治療を行います。

重度の場合や小型犬でない場合は、重度の変形性関節疾患へと進行するため、外科治療が強く勧められます。


犬の足腰を予防する3つのポイント

ランニングする飼い主と犬 犬の足腰は思ったよりも弱く、原因となる疾患もいろいろとあるのがお分かりいただけたかと思います。

犬の足腰は”予防”することも大切なのです。

そこで、どの病気にも共通する予防法のポイントを3つご紹介したいと思います。

1.滑りにくい環境にする

まず床がフローリングなどで滑りやすい場合、足腰に大きな負担がかかるため病気の原因となることがあります。

コルクマットやカーペットを敷き、滑りにくくなるように工夫しましょう。

また、足裏の毛が長過ぎると、それが原因で滑りやすくなってしまいます。

定期的に足裏にバリカンをかけるなどして、対策を立てましょう。

2.飛び降り防止

ソファやベッドからの飛び降りも、日常的に繰り返すことで足腰に負担がかかります。

階段やスロープをつけたり、段差の下にマットを敷くなどして足腰への負担をやわらげましょう。

3.肥満防止のために食事管理

肥満により、足腰に負担がかかることで、足腰のダメージに繋がります。

特に小型犬や胴長短足の犬は、肥満というだけで負担が通常よりも大きくなるので注意が必要です。

肥満気味の犬は日頃から体重管理をしっかりとしましょう。

疾患には、先天性のものもありますが、これらを注意することで”予防”に繋がりますので、ぜひ参考になさってみてください。

靴を履いた犬と飼い主 「足を引きずる」症状がみられた場合、身体のどこかに疾患を抱えていることは確実です。

そのまま放置せずに、早急に動物病院を受診するようにしましょう。

基本疾患が原因で新たな疾患を引き起こす場合もありますので、早期発見、早期治療をおすすめします。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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