2017年10月24日

【獣医師監修】犬のワクチン予防接種~種類と防げる病気について~

監修にご協力いただきました!

1996年 山口大学農学部獣医学科卒業(現:山口大学共同獣医学部)

2006年 ふくふく動物病院開業

新しく愛犬をお迎えするときに必要となることはいくつかあります。主に予防に関することですが、ワクチン接種、狂犬病予防接種、フィラリア予防、ノミ・マダニ予防などが挙げられます。

今回は予防接種を打つタイミングとワクチンの種類について解説します。

犬に予防接種をするタイミング

子犬に囲まれて寝ているゴールデンレトリバー 犬をお迎えした際は、外の世界へ出る準備としてワクチン接種により抵抗力をつけます。

そして、ワクチンを打つタイミングは子犬と成犬では異なります。

ワクチンプログラム

(1)混合ワクチン

🐶子犬
初めてのワクチンは3回、翌年からは年に 1 回。
🐶成犬
子犬と異なり初年度も1回、翌年からも年に 1 回。

愛犬と出会う場所は「ペットショップ」「ブリーダー」「保護施設」などが主になると思いますが、お迎えする日齢によって 1 回目のワクチン接種が済んでいる場合とまだ済んでいない場合にわかれます。

済んでいる場合は「いつ、何種のワクチンを接種したのか?」を確認しておきましょう。この接種日から 1 か月後に 2 回目の予防接種を行いますので、 1 回目のワクチン接種日がわからないと 2 回目のタイミングがわからなくなります。

ワクチンプログラムには様々なものがありますが、本記事では世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチンガイドプログラムに沿って記述します。

・ 1 回目の接種:生後 8 週間後
・ 2 回目の接種:生後 12 週間後
・ 3 回目の接種:生後 16 週間後
・その後は3回目の接種日から1年後ごと
1 回目の予防接種時には母犬からの移行抗体で子犬が守られている場合があり、ワクチン接種を行っても母犬の移行抗体に攻撃され十分に抗体価が上がらず病気から守れない場合があります。

そのため、その後 2 回使接種を行い 1 年間病気から守ることができるだけの免疫力をつけます。

(2)狂犬病ワクチン

狂犬病ワクチンは、生後 90 日以上の犬に接種の義務があります。また、年齢にかかわりなく家にお迎えした日から 30 日以内に市町村に登録することも義務付けられています。

登録すると登録鑑札が発行され台帳に記載されます。この登録は一生に一回です。予防接種は毎年 1 回で、注射済鑑札は注射を打つたびにもらいます。

混合ワクチンとタイミングが重なることが多いので、どのようにすればよいのかはかかりつけの動物病院で相談し、体調を見ながら接種しましょう。

ワクチンの種類

ワクチンと注射器 ワクチンには多くの種類があり、種類や必要性、成分別で様々な分類があります。そのため「どのワクチンがいいのか?」「それぞれどう違うのか?」と混乱した経験のある飼い主の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここではワクチンの種類について、分類別に説明していきます。

(1)混合ワクチンと狂犬病ワクチン

ワクチンには 2 種類あります。一つは「混合ワクチン」、もう一つは「狂犬病ワクチン」です。

・混合ワクチン
予防できる感染症の数によって数字がつき 2 種混合ワクチン、 6 種混合ワクチンのように数字をつけて呼ばれます。

・狂犬病ワクチン
狂犬病のみが予防できるワクチンです。

(2)コアワクチンとノンコアワクチン

「コアワクチン」「ノンコアワクチン」という分類の方法もあります。

・コアワクチン
世界中で感染が認められている感染症で、命に係わる感染症から犬を守るためにすべての犬が接種すべきワクチンのことを言います。
コアワクチンの名称: 狂犬病ウイルス、犬パルボウイルス、犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス1型

・ノンコアワクチン
生活している地域の環境やライフスタイルによっては、健康上のリスクが生じる犬のみに接種したほうがよいワクチンのことを指します。
ノンコアワクチンの名称: パラインフルエンザウイルス、レプトスピラ

(3)生ワクチンと不活化ワクチン

これもワクチンの分類ですが、その成分になる抗原がどのような状態なのかによって「生」「不活化」に分類します。

・生ワクチン
病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱め、生きているが病原性を弱めたワクチンのことを言います。

毒性が弱められていますが生きていますので、免疫反応がしっかり起こり、少ない接種回数で抗体価が上がります。

・不活化ワクチン
病原体となるウイルスや細菌の感染能力を失わせた(不活化・殺菌)ものを材料にしたワクチンです。

抗体が接種後増える勢いが緩やかなので、追加接種を行い抗体価がしっかり上がるようにする必要があります。

(4)混合ワクチンの種類

混合ワクチンの種類 ※以下一覧は図と同じ内容になります

2種混合ワクチン
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬ジステンパーウイルス感染症

5種混合ワクチン
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬ジステンパーウイルス感染症
  • 犬アデノウイルス感染症
  • 犬パラインフルエンザウイルス感染症
  • 犬伝染性肝炎

6種混合ワクチン
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬ジステンパーウイルス感染症
  • 犬アデノウイルス感染症
  • 犬パラインフルエンザウイルス感染症
  • 犬伝染性肝炎
  • コロナウイルス感染症

7種混合ワクチン
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬ジステンパーウイルス感染症
  • 犬アデノウイルス感染症
  • 犬パラインフルエンザウイルス感染症
  • 犬伝染性肝炎
  • コロナウイルス感染症
  • レプトスピラ(1種類)

8種混合ワクチン
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬ジステンパーウイルス感染症
  • 犬アデノウイルス感染症
  • 犬パラインフルエンザウイルス感染症
  • 犬伝染性肝炎
  • コロナウイルス感染症
  • レプトスピラ(2種類)


ワクチン接種により防げる病気

注射器を持つ手を見つめるシーズー ではワクチンで防ぐことができる病気にはどのようなものがあり、どのような症状が出るのでしょうか?

パルボウイルス感染症

激しい嘔吐、下痢を起こし、食欲がなくなり、急激に衰弱します。重症になると脱水症状が進み、短時間で死亡することがあります。伝染性が強く、死亡率が高い病気です。

犬ジステンパー

高熱、目やに、鼻水が出て、元気や食欲がなくなり、嘔吐や下痢もします。また、病気が進むと神経系がおかされ、麻痺などの後遺症が起こることがあります。死亡率の高い病気です。

イヌ伝染性肝炎

発熱、腹痛、嘔吐、下痢が見られ、眼が白く濁ることがあります。生後 1 年未満の子犬が感染すると、まったく症状を示さず突然死することがあります。

犬アデノウイルス感染症

発熱、食欲不振、くしゃみ、鼻水、短く乾いた咳が見られ、肺炎を起こすこともあります。他のウイルスとの混合感染により症状が重くなり、死亡率が高くなる病気です。

犬パラインフルエンザウイルス感染症

カゼ症状がみられ、混合感染や二次感染が起こると重症になり死亡することがあります。伝染性が非常に強い病気です。

犬コロナウイルス感染症

成犬の場合は、軽度の胃腸炎ですむことが多いのですが、犬パルボウイルスとの混合感染では重症化することもあります。子犬の場合は嘔吐と重度の水様性下痢を引きおこします。

犬レプトスピラ感染症【人獣共通感染症】

レプトスピラ症は、レプトスピラという細菌による感染症です。

レプトスピラに感染しているネズミなどの野生動物の尿や、その尿に汚染された水や土を介して皮膚や口から感染します。

犬を含むほとんどの哺乳類に感染し、発熱や嘔吐、脱水、出血などを引き越します。重症化すると死亡することもあります。

また、人獣共通感染症なので人にも感染する要注意の病気です。

狂犬病【人獣共通感染症】

狂犬病に感染している動物にかまれることでうつる病気です。ほとんどの哺乳類に感染し、神経症状から狂乱状態になり100%死亡する恐ろしい病気です。

【人獣共通感染症】…動物から人間にうつる感染症

ワクチン接種にかかる費用

ワクチンと紙幣 ワクチン接種に必要な料金は、種類によって変わります。ワクチンの費用は動物病院によって異なりますので、最寄りの動物病院にお問合せください。

2種混合ワクチン: 4,500円
5種混合ワクチン: 7,000円
6種混合ワクチン: 8,000円
7種混合ワクチン: 9,000円
8種混合ワクチン: 10,000円
狂犬病ワクチン: 登録…3,000円、注射済鑑札発行手数料…550円、注射代金…3,400円(病院内で接種)
※別途、診察料が必要になります。

飼い主の足の上に自分の前足を重ねているボーダーコリーの子犬 ワクチンは命に係わる伝染病から体を守るための抗体を体内に作り、病気に対する準備として大切なものです。

ワクチンを打ったら絶対に病気にかからなくなるのではありませんが、重症化するところを軽症で抑えることができます。

どの混合ワクチンを打つのかは生活環境や体調によって異なりますが、狂犬病予防接種は犬をお迎えした後は義務です。

かかりつけの動物病院でしっかり相談して、最適なワクチンを接種して大切な家族を守ってあげましょう。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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