2017年11月11日

【獣医師監修】犬が蜂に刺されたら!~症状・応急処置~

監修にご協力いただきました!

2009年 日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業、その後札幌市内の動物病院を経て

2015年 アイリス犬猫病院開院
[日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属]

アウトドアなどの野外での活動が増える季節、川遊びやキャンプなど、犬を連れておでかけするイベントが盛り沢山の方も多いと思います。

そんな時期に気を付けたいのが「蜂」です。犬も蜂に刺されたら、状況によってさまざまな症状を示します。

正しい知識を知って、正しい対応をできるようにしておきましょう。

愛犬家が“気を付けるべき蜂”について

花に囲まれた白い犬 ミツバチやアシナガバチ、スズメバチなど私たちの周りには多くのハチ毒を持った蜂がいます。

蜂たちは、春頃に巣作りを始め、初夏になると第一世代の働き蜂が羽化し、それ以降急速に巣を拡大していきます。

8月頃からは次の世代の蜂たちの卵が産み付けられます。

そして、9月から10月頃にその卵から次世代の蜂たちが羽化をし、繁殖時期になります。

蜂たちの警戒心が高まる8月から10月の間に、蜂に刺されることによる被害が最も多くなります。

蜂たちは、自分たちの巣を守るために、近づくと攻撃をしてきます。

初夏から秋は、犬を連れて自然が多くあるところにでかける機会も増えると思います。

その時に、不用意に蜂の巣に近づかないようにしましょう。

巣が確認できなくても、蜂を一匹でもみかけたらリードを短くして、その場を離れるよう意識して下さい。

犬が蜂に刺された時の症状とは?

蜂は「ハチ毒」を持っており、刺されるとさまざまな症状を示します。症状は大きく分けて二つあり、①局所の症状と、②全身の症状とが挙げられます。

①局所の症状

暗い部屋にいる犬
・患部の腫れ
・患部が赤くなる
・一か所を舐め続ける
・身体を触られることを嫌がる

ハチ毒の成分であるヒスタミンやセロトニンなどのアミン類、ハチ毒キニンが痛みや痒みなどの症状を引き起こします。

局所の症状は多くは約1日で消失します。

蜂に刺さたことで引き起こされる炎症によって腫れることもあります。

また、犬は痒みや痛みがあった場合、そこの部分を気にしてしきりに舐めます。

執拗に舐めたことが原因で炎症が起き、その箇所が腫れることもあります。

犬が同じ場所を良く舐めているなぁと思ったら、その個所をよく観察してみて下さい。

もし、その部分に何かに刺されたような跡があった場合、蜂の可能性もあるかもしれません。

また、犬は痛みを飼い主に言葉で伝えることができません。

痛いときは、「触らないで!」という風に嫌がったり、触ろうとすると攻撃をしてきたりもします。

犬の身体をしっかりと触ることができればいいですが、触れない場合は動物病院に行って診てもらいましょう。

②全身の症状

横になって寝るフレンチブル
・血尿(溶血によって)
・肝不全
・腎不全
・アナフィラキシーショック

ハチ毒の中に「溶血」を引き起こす成分を含んでいる蜂もいます。

溶血とは赤血球が破壊されることで、症状としては貧血や血尿、元気消失、食欲不振、呼吸が速くなるなどがあります。

蜂に刺されたら必ず溶血が起こる、というわけではありません。

しかし蜂に刺された後に上記の様な症状がみられた場合には、早急に動物病院に連れて行って下さい。

また、ハチ毒が原因で肝不全や腎不全などの臓器への障害が生じることも知られています。

元気消失や食欲不振、嘔吐、下痢など、体調に変化がある場合も、早急かつ適切な治療が必要になります。


命の危険も伴う「アナフィラキシーショック」とは?

こちらを見るシェパード 蜂に刺された時に一番注意するべきは「アナフィラキシーショック」です。

アナフィラキシーショックとは、刺されてから数分から数十分のところで症状が出てくる急性のアレルギー症状です。

アナフィラキシーショックは蜂で有名ですが、食べ物や薬などが原因となって引き起こされる場合もあります。

アナフィラキシーショックの症状はいずれも重篤

・呼吸困難
・血圧の低下(ぐったりする)
・意識の低下
・チアノーゼ(舌が真っ青になる)

多くのアナフィラキシーショックは“2回目に刺された時”に起こると言われています。

初めて蜂に刺されると、犬の身体では「蜂の毒を排除しよう!」と抗体が作られます。

2回目に蜂に刺された時には、この反応が急速に起こります。

アナフィラキシーショックが起きる仕組み

アナフィラキシーショックを引き起こすきっかけとなる抗体はIgE抗体というもので、蜂に刺されるとハチ毒に対する特異的なIgE抗体が産生されます。

IgE抗体は、肥満細胞という細胞に結合し、「感作」が成立します。

この状態で蜂に2回目刺されると、すぐに肥満細胞が活性化され、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出されます。

この化学伝達物質が各臓器に作用し、アレルギー症状を引き起こします。

アナフィラキシーショックとは、このアレルギー症状の中で呼吸困難(気道粘膜の浮腫による)や血圧の低下(ぐったりするなど)、意識の低下、チアノーゼ(酸欠になって、舌が真っ青になる)など、重篤な症状を示す状態を言います。

アナフィラキシーショックは、蜂に2回目刺されたら必ず起こるわけではありませんが、起こった場合、命の危険を伴うのです。

このような状態になったら、緊急な治療が必要となるため、すぐに動物病院に連れて行って下さい。アナフィラキシーショックはハチ毒の強弱とは関連しないので、どんな場合にも警戒は必要です。

犬が蜂に刺された時の治療法

犬の手と人の手 目の前で刺されたなど、蜂に刺されたことが分かっているのであれば、症状が出ていなくても念のため動物病院に連れて行くのがいいでしょう。

ここでは、何かしらの理由ですぐ病院へ行くことが困難な場合のために、簡単な手順をお教えします。(※病院へ行くことが可能な状況であれば、必ず診察を受けるようにしてください)

【1】毒液袋、毒針を除去する

刺されたところを見た時に、針が残っているようであれば早急に抜いた方がいいです。

しかし、指でつまんで抜こうとしてはいけません。針には透明な毒嚢という毒液の袋が付いています。

指でつまんだ時に、毒嚢の中のハチ毒を体内に押し込んでしまいます。

つままずに、爪やカードなどで弾き飛ばすようにすると良いとされています。

その後は、患部を良く洗いましょう。ハチ毒は水に溶けますので、流水で毒を絞り出すようにしながら洗うと良いでしょう。

この時、犬は痛みを感じているかもしれないので、すごく嫌がるのであれば無理強いする必要はありません。

【2】毒を吸い出す

吸引器具などがあれば、毒を追い出し、水で良く洗いましょう。

【3】患部を冷やす

刺されたところをひどく痛がったり、気にしているような様子があれば、応急処置として冷やしてあげましょう。

ケーキを買った時についてくるような保冷剤をタオルなどで巻いて押し当ててあげて下さい。

直接保冷剤を当てていると低温やけどなどをする危険性があるので、必ずタオルなどで巻いてあげましょう。

【4】痒みが強い場合

ショックのような症状はみられないが、痒みが強くずっと舐め続けているような場合は、抗ヒスタミン薬やコルチコステロイドの投薬を行います。

【5】ショックやアレルギー反応が出ていたら投薬

アナフィラキシーショックのような症状がみられた場合、早急に動物病院に連れて行って下さい。

病院では、輸液療法や、エピネフリンやコルチコステロイドの投与が行われます。

呼吸困難がみられている場合は、酸素吸入や気道確保、気管支拡張剤などの投与を行います。

アナフィラキシーショックは緊急を要する状態です。

動物病院に行く場合、事前に「蜂に刺されたので、今から行きます」と伝え、現在出ている症状を事前に連絡をしておくと良いでしょう。

事前連絡があれば、病院側も到着までに体制を整えることができます。

犬の鼻先を飛ぶ蜂

まとめ

犬とキャンプやお散歩で楽しい時間を過ごしていても、蜂に刺されることで事態は一変します。

予期せぬことが起きた時に冷静に対応するためにも、正しい知識、対応の方法を身に付けておきたいところです。

自然が多い場所におでかけの予定があるのであれば、今回お話した事を頭の片隅にでも置いていただけると幸いです。

でも、一番大事なのは「むやみに蜂の巣には近づかないこと」です!特にこれからの8~10月は要注意です。

この記事が気に入ったら
Qpetに「いいね!」しよう

文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


合わせて読みたい

PAGE TOP