2019年3月31日
犬の「しゃっくり」の原因・対処法・気を付ける病気について
監修にご協力いただきました!
櫻井洋平先生
BiBi犬猫病院 院長
2008年3月 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2008年4月〜2013年11月 横浜市内動物病院勤務
2011年4月〜2015年3月 麻布大学附属動物病院 腎泌尿器科・外科 専科研修医として研修
2013年12月〜2015年5月 千葉県内動物病院勤務
2015年7月〜2016年2月 宮城県内動物病院勤務
2016年11月〜 仙台市にBiBi犬猫病院を開院
愛犬が食後や睡眠中にしゃっくりをしている……そんな様子を見て驚いた経験はありませんか?
実は、犬も人間と同様にしゃっくりをします。
しかし、しゃっくりがなかなか止まらないという場合や、苦しそうな表情を見せる、などという場合は重篤な病気の可能性もありますので注意が必要です。
特に睡眠中のしゃっくりは、その後嘔吐する可能性も考えられますので注意しましょう。
今回は、しゃっくりが出たときの対処法や注意点などをご紹介します。
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犬が「しゃっくり」をするメカニズム
犬のしゃっくりは人間と同様に、胸部と腹部の間に位置する「横隔膜の痙攣」から起こります。しゃっくりは筋肉の不随意収縮の一種で、お腹の中に溜まった空気やガスを排出する役目もあります。
基本的に、しゃっくりは生理的現象なのであまり深刻になることはありません。
特に子犬のうちは頻繁に起こります。
ただし、これまではまったく無かったのに頻繁に起こるようになった、長時間続く、いつもと様子が違うというような場合は、なにか別の疾患が隠れている場合もありますので、獣医師へ診てもらいましょう。
次に、しゃっくりが起きる原因について説明していきます。
犬がしゃっくりをする8つの原因
早食いによる負担
しゃっくりの原因として一番多いのが「早食い」です。ご飯を食べた後にしゃっくりをすることが多いという場合は、早食いの癖が原因となっているケースがほとんどです。
胃に入った食べ物が消化されずに逆流してしまうことから横隔膜が刺激されて起こります。
例えば、早食いを防止するフードボウルを使用したり、ドックフードの粒の大きさや量、固さが合っていない場合もあるので変えてみるのもよい方法です。
胃腸の不調
胃腸の不調によるしゃっくりの原因は、いくつか考えられます。水分不足によって起こる消化不良
水分不足の場合は、まずは1日どれくらいのお水を飲んでいるかをチェックしましょう。もし水をあまり飲んでいないようであれば、ドックフードをお湯でふやかして与えたり、茹で野菜をトッピングするなど自然と水分補給ができるようになる工夫をしましょう。
また食後すぐに運動することで、胃の中にガスが発生し、しゃっくりが起きることもあります。
寄生虫の感染による不調
もう一つは、寄生虫の感染によって起こるケースです。寄生虫が原因で胃炎や消化不良を起こしやすくなり、しゃっくりが起こることがあります。
冷たいものを食べたことによる負担
冷たいものが急に胃の中に入ると、横隔膜が痙攣を起こすことがあります。熱中症対策などで、氷や冷たいものを与えすぎるとしゃっくりの原因になることがありますので注意しましょう。
呼吸器の異常
肺や気管支などの呼吸器の疾患が原因の場合もあります。病気により併発
頻繁にしゃっくりを繰り返す、長時間続く、咳や嘔吐などを伴うといった場合は、病気により併発している可能性がありますので、気になることがあれば動物病院を受診しましょう。精神的なストレスによるもの
子犬を家に迎えたばかりのときや、引っ越しなどによる環境の変化など、不安や緊張などの精神的ストレスによりしゃっくりを起こす場合があります。この場合は、まず安心させてあげることが第一です。
しゃっくりが出はじめたら、やさしく撫でてあげたり抱っこしてあげるようにしましょう。
また運動不足や長時間のお留守番などによりストレスが溜まり、交感神経が過剰になることで起こる場合もありますので、適度にスキンシップをはかったり、お散歩で気分転換をするようにしましょう。
寒さによる体への負担
寒い季節になるとしゃっくりが出る場合、低体温症の可能性があります。この場合、体の冷えが一番の原因となります。
日頃過ごしている場所や、寝床が寒くないかなど見直す必要があります。
特に寒冷地では、暖房や犬用のヒーターをうまく利用して寒さ対策をしましょう。
誤飲によるもの
異物を飲み込んだことにより起こる可能性もあります。犬は気になるものを、咥えて飲み込む習性があります。
異物は胃の中で消化されず胃酸とともに逆流するため、その刺激によってしゃっくりが起こる場合があります。
睡眠中のしゃっくりはココに注意!
睡眠中にしゃっくりをする場合、まずは起きている間もしゃっくりをするかどうかを確認しましょう。起きている間にしないようであれば寝言であったり、夢を見ている可能性があります。
このような場合は、特に心配はいりません。
ただし、何らかの病気が隠れている場合、しゃっくりをしながら嘔吐することもありますので、しゃっくりの前後を注意深く観察しましょう。
またしゃっくりと似たような症状で、「逆くしゃみ」というものがあります。
ブルドック、パグ、フレンチブルドック、ペキニーズなどの短頭種に多く、鼻から強く空気を吸い過ぎて起こる症状です。
「ブーブー」と音を立てながら、体全体で息を吸い込んでいるように見えます。
このような症状が起こったら、鼻の穴を抑えて吸い込む空気の量を調整してあげることで止まります。こちらも特に心配はいりません。
「しゃっくり」から考えられる犬の病気とは?
消化器系の病気
胃腸に内部寄生虫が感染している場合の腸内異常や、胃捻転などを起こしている場合にしゃっくりが起こることがあります。内部寄生虫とは回虫、鉤虫、条虫などが主で、感染すると元気がなくなったり、下痢や嘔吐を繰り返したり、血便などの消化器系の症状が現れます。
胃捻転は、食後に激しい運動をすると胃がねじれてしまう疾患で、命にかかわることもあり非常に危険です。
循環器系の病気
心臓病、心膜炎、心臓肥大といった心臓の病が原因となることもあります。一口に心臓病と言っても種類があり、最も多いのが弁膜症の一つである「僧房弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」です。
他にも、心筋の異常による「心筋症」や、感染症が原因の「フィラリア症」、「拡張型心筋症」、「狭心症」さまざまな種類があります。
心臓病の主な症状は、咳が出る、少しの運動で呼吸が荒くなる、苦しそうにするなどが挙げられます。
呼吸器系の病気
犬の喘息はアレルギー性のものがほとんどで、気管支が突然収縮し呼吸困難や咳などの症状が現れます。また肺炎の場合は、咳、吐き気、呼吸困難、元気がない、食欲不振などの症状がみられ発熱を伴います。
脳の病気
脳梗塞、脳腫瘍、てんかんなどの脳の病気から起こる場合があります。この場合、しゃっくりが長引き、なかなか止まらなくなります。
脳梗塞は血栓が動脈に詰まる疾患です。
症状としては、人間と同様にめまいや手足のしびれなどがあります。
犬に起こるこれらの症状の原因を的確に見抜くことは難しいので、いつもと違う様子が見られた時点で早めに動物病院を受診しましょう。
脳腫瘍は、脳内に腫瘍ができる疾患です。
発生部位によって症状は異なりますが、臆病になった、塞ぎ込んで散歩に出たがらないなどの精神的疾患や、眼振、斜視、真っすぐ歩けない、ふらついて歩行が困難になるなど症状は多岐に渡ります。
てんかんは、脳内の神経が興奮することで起こる発作です。
突然倒れる、泡を吹く、手足を左右に突っ張るなどの症状が現れます。
発作が起こる頻度は個々によって様々ですが、少しでも当てはまる症状があれば獣医師へ相談しましょう。
犬の「しゃっくり」を止めてあげる方法
水を飲ませる
しゃっくりを止めるのに「お水を飲ませるとよい」というのは、犬も同じです。だだし、お皿から飲むと、かえって咽てしまうことがありますので、指を水で濡らして少しずつ舐めさせてあげるようにしましょう。
やさしくマッサージをする
胃と助骨の間にあるみぞおちの辺りを、手のひらを使ってやさしく数回押しながらマッサージします。体を起こしていた方がしゃっくりが止まりやすいので、お座りをさせた状態で行うことをおすすめします。
数回押しても止まらない場合は、別の方法を考えましょう。
おやつをあげる
目の前におやつを見せ、気をそらすことで止まることがあります。逆に、いつもなら喜ぶおやつに興味を示さないようであれば、しゃっくり以外の不調を抱えている可能性も考えられます。
ただし、嘔吐や咳などを伴う場合は、直後におやつを与えないでください。
呼吸を整える
軽く運動をすることで呼吸が整い、しゃっくりが止まることがあります。この場合、室内でおもちゃを投げて取ってくる程度の運動で十分です。
まとめ
しゃっくり自体はそれほど心配する必要のないものです。しかし、長時間続くような場合や、咳やくしゃみ、嘔吐を伴う、いつもと様子が違うような場合は、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
早食いや、冷たい飲食、食後すぐの運動などは、しゃっくり以外のトラブルを引き起こすきっかけにもなるので、心当たりのある方はこの機会に見直してあげて下さいね。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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