2018年7月31日
【獣医師監修】犬が痙攣をおこした時の対処法は?~応急処置・原因について~
監修にご協力いただきました!
櫻井洋平先生
BiBi犬猫病院 院長
2008年3月 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2008年4月〜2013年11月 横浜市内動物病院勤務
2011年4月〜2015年3月 麻布大学附属動物病院 腎泌尿器科・外科 専科研修医として研修
2013年12月〜2015年5月 千葉県内動物病院勤務
2015年7月〜2016年2月 宮城県内動物病院勤務
2016年11月〜 仙台市にBiBi犬猫病院を開院
愛犬が目の前で痙攣を起こしたら、慌てますよね。
「痙攣」は突然起こるケースが多いので、事前に痙攣に関する知識を飼い主が身に付けることが大切です。
今回は痙攣が起きた際に最初にやるべきことに触れた上で、後半では考えられる原因などについてお話をしたいと思います。
もくじ [非表示]
- 1 犬が痙攣している時にとるべき行動
- 2 犬の痙攣が起きてからやるべきこと
- 2.1 愛犬を極力動かさないようにしましょう
- 2.2 痙攣が続いた時間を計る(5分以上続く場合は重積発作)
- 2.3 愛犬の周りにあるものを避ける
- 2.4 動画を撮る、または詳細のメモをとる
- 2.5 痙攣直後の様子もちゃんと見ておく
- 2.6 愛犬にあまり刺激を与えない
- 3 犬が痙攣中は不用意に顔周りに触れないように!
- 4 動物病院で伝えるべき項目
- 5 犬が痙攣を起こす原因
- 5.1 一時的な筋肉の痙攣によるものは「様子見」でOK
- 5.2 低血糖による痙攣はすぐ病院へ
- 5.3 痙攣によって愛犬の病気が見つかることも。
- 5.4 中毒による痙攣も緊急性が高い!
- 6 痙攣と一緒に見られた症状によって病気を見分ける
- 6.1 痙攣だけを繰り返す
- 6.2 発熱や風邪のような症状がみられる
- 6.3 嘔吐や下痢がみられる
犬が痙攣している時にとるべき行動
目の前で愛犬が痙攣を起こした場合、できるだけ飼い主は冷静な対応をとることが大切です。心配のあまり飼い主がパニックを起こしてしまうと、愛犬に更に負担をかける行動をしてしまう可能性があります。
そして、混乱した状態で動くと飼い主さん自身も予期せぬ怪我などを負う場合もあります。
犬の痙攣が起きてからやるべきこと
愛犬を極力動かさないようにしましょう
痙攣している犬は、意識が朦朧としている場合があります。その状態の愛犬に触れて、噛まれてしまったり、ひっかかれてしまったりする危険性があります。
お互い怪我をしないためにも、痙攣が治まるまでは愛犬を動かさないのがベストです。
しかし、段差の近くであったり、安全の確保のために動かす必要がある場合は、タオルでくるむなど動かしている間に暴れてもお互い怪我をしない工夫を必ずして下さい。
痙攣が続いた時間を計る(5分以上続く場合は重積発作)
痙攣が起こった時、痙攣が続いた時間を測って下さい。体感の時間ですと、とても長く感じてしまいます。できるだけ、時計を確認して測定してください。
痙攣が続いた時間が5分以上の場合は、重積発作の可能性があります。
重積発作は緊急の対応が必要な場合もあるので、「長い」と感じた時点でかかりつけの動物病院へ電話をつないでおき、指示を仰げる状態にしておくといいでしょう。
愛犬の周りにあるものを避ける
痙攣している犬は通常時とは異なる行動を起こすことが多いです。愛犬の近くにぶつかると危険なもの(鋭利なもの、落下してくる危険があるもの、など)がある場合、愛犬が怪我をしてしまう可能性があります。
可能な限り、愛犬の周りにあるものを遠くに避けて下さい。
動画を撮る、または詳細のメモをとる
痙攣中の様子を記録して下さい。バタンと倒れるような痙攣ですか?
体の一部分がピクピクするような痙攣ですか?
前肢と後足は、ピーンと張った状態、それともバタバタと泳いでいる状態ですか?
痙攣中、意識はありますか?
失禁をしていたり、口から泡を吹いたりしていませんか?
どのような痙攣が起きているか記録して、動物病院に行った時に獣医師に伝えて下さい。
可能なら、動画を撮って持って行けると良いと思います。
痙攣直後の様子もちゃんと見ておく
痙攣直後の様子もしっかり見てあげて下さい。痙攣の後、すぐケロッとしていることもありますし、数十分~数時間ふらつきがみられたり、異様な食欲がみられたりすることもあります。
直後の様子によって原因が特定できるケースも多いので、可能な範囲で把握しておきましょう。
愛犬にあまり刺激を与えない
痙攣が起きる時は神経が過敏になっている場合が多いです。その時に、大きな声を出してたり、強く撫で続けたりなど、刺激を与えるような行動は控えた方が良いでしょう。
犬が痙攣中は不用意に顔周りに触れないように!
先にもお話しした通り、痙攣中の愛犬は意識が無いことが多いですし、愛犬自身もパニックに陥っていることも。そのため、普段決して噛まない子でも無意識に飼い主を噛んでしまったり、怪我をさせてしまったりすることがあります。
どんな状況でも愛犬の口の周りには手を出さないようにして下さい。
痙攣中愛犬が舌を出している状態になった時は、噛んでしまわないか不安に思われるかもしれません。
その時も、決して口の近くに手を出さないで下さい。
痙攣が治まってから、舌を外してあげて下さい。
意識がはっきりしていない時に触れることで、逆に歯を食いしばってしまう危険性があるからです。
動物病院で伝えるべき項目
痙攣が起きた場合は、治まり次第すぐに病院の診察を受けた方が良いでしょう。その時に、獣医師に伝えた方が良いポイントは、以下になります。
①いつ、どのような痙攣が起きたか?
②痙攣はどれくらい続いたか?
③痙攣が起きる前、どのような様子だったか?
④痙攣が起きた後、どのような様子だったか?
②痙攣はどれくらい続いたか?
③痙攣が起きる前、どのような様子だったか?
④痙攣が起きた後、どのような様子だったか?
もし、痙攣の動画を撮れている場合はそれを獣医師に見せて下さい。
犬が痙攣を起こす原因
一時的な筋肉の痙攣によるものは「様子見」でOK
激しい運動で筋肉を酷使すると、運動後、筋肉が痙攣を起こすことがあります。足の筋肉などがピクピクする痙攣です。
この痙攣は、病的なものではありませんので、様子をみても大丈夫です。
低血糖による痙攣はすぐ病院へ
低血糖によっても痙攣が起こることがあります。低血糖症になる原因は様々あり、成長過程によるものや、病気によるものがあります。
①子犬の低血糖
生後3か月くらいまでの子犬が空腹や内臓障害、身体の冷えなどによって栄養吸収が悪化し、低血糖に陥ることがあります。特に、小型犬は要注意です。
生後3か月の子犬に6~12時間の絶食をさせるだけで、低血糖が起こってしまいます。
幼齢期の子犬の食事は、1日2回ではなく、3回以上に小分けしてあげることで予防できます。
②成犬の低血糖
5歳以上の大型犬の成犬で、空腹や興奮、過度の運動が原因で低血糖がみられることがあります。③老齢犬の低血糖
老齢犬で低血糖がみられる場合、膵臓腫瘍や肝不全の可能性が考えられます。膵臓に腫瘍ができ、さらにその腫瘍がインスリンという血糖値を下げるホルモンを産生している場合、低血糖になり、痙攣が起こることがあります。
また、肝臓の機能が低下している場合でも低血糖になる可能性があります。
糖の代謝に大きな役割を担っている臓器の一つである肝臓の機能が低下し、さらにその程度が重度だと低血糖を引き起こすのです。
④糖尿病の治療中
糖尿病の治療には主に血糖値を低下させるインスリン注射を用います。その際、インスリンの量が犬にとって多くなってしまった場合、低血糖になる可能性があります。
糖尿病の治療中の場合は、食欲や飲水量のチェックに合わせて、痙攣などの症状が出ていないかも一緒に確認して下さい。
低血糖が疑われる場合、すぐに動物病院に行って検査をした方が良いですが、応急処置として砂糖水やガムシロップなどの糖分を口に含ませて下さい。
その際、噛まれないように十分注意する事と、飲ませる時に気管に誤って入らないように注意して下さい。
口に含ませるだけで応急処置としては十分なので、「飲ませる」というよりは「口内を湿らせる」という感覚で少量を塗ってあげましょう。
痙攣によって愛犬の病気が見つかることも。
痙攣の原因はその他にも色々あり、症状の1つとして痙攣が起きる病気もたくさんあります。①てんかん
てんかんとは、てんかん発作を引き起こす原因を有する脳の障害を言います。てんかんは原因によって、「特発性てんかん」と「症候性てんかん」に分けられます。
・特発性てんかん
検査で脳内に原因が認められない原因不明のてんかんです。
1~5歳の発症が多いと言われています。
・症候性てんかん
脳内に何らかの原因が認められ、それらが原因で発作が起こるてんかんです。
水頭症などの先天性疾患、脳内腫瘍、髄膜脳炎などの脳炎などが原因としてあります。
②肝機能不全
何らかの原因で肝臓の機能が低下した場合、肝臓による解毒作用が低下し、身体に毒素が溜まり、その毒素が痙攣を引き起こしたり、糖代謝に異常が生じることで低血糖になったりして痙攣が起こることがあります。③尿毒症
腎臓病が進行し、腎臓の解毒作用が働かなくなり、身体に毒素が溜まることで様々な症状が出る状態を尿毒症と言います。嘔吐、下痢、痙攣などの症状が現れます。
血液検査をして、腎臓の数値を確認すれば、尿毒症かどうかを診断できます。
④低血糖
先にお話ししたように、低血糖でも痙攣が起きます。⑤感染症
中枢神経系(脳)にジステンパーウイルス、クリプトコッカス(真菌)が感染した場合、痙攣の原因になります。ジステンパーウイルスは、犬の混合ワクチンのコアワクチンのうちの一つです。
ジステンパーウイルスに感染すると、特効薬があるわけでは無いので、最悪の場合、命を脅かします。
ですので、ワクチンを定期的に接種することが大切です。
中毒による痙攣も緊急性が高い!
犬が誤って口にしたもので中毒を引き起こすことがあります。神経症状を示す中毒としては、殺鼠剤・殺虫剤・農薬などの薬剤、チョコレート、鉛があります。
飼い主が目を離した隙に、犬が興味本位でそれらを口にすることがあるかもしれません。
万が一、これらを口にしてしまった場合、動物病院に必ず連絡して下さい。
このように痙攣の原因は様々です。
原因を見つけるためには、動物病院で血液検査やレントゲン検査、エコー検査、状況によってはMRI検査やCT検査が必要になります。
愛犬の年齢や、状態、痙攣の状況を考慮して、必要な検査を行います。
痙攣と一緒に見られた症状によって病気を見分ける
痙攣が起こる原因が様々あるのはお話しした通りです。原因によっては、痙攣以外の症状も伴っていることが多いので、症状によって見分けるポイントをお話します。
痙攣だけを繰り返す
痙攣だけ起きる場合は、てんかんの可能性が高いです。特発性てんかんなのか、症候性のてんかんなのかは、MRI検査を含む精査をしないと確定診断はできません。
てんかんの場合、抗てんかん薬を内服することで、発作をコントロールできる場合が多いです。
発熱や風邪のような症状がみられる
痙攣の他に発熱や鼻水・くしゃみ・咳などの風邪のような症状が同時にみられた場合、犬ジステンパーウイルス感染症や犬クリプトコッカス症の可能性が高いです。免疫が低下している子犬や老犬では、このような感染症には十分注意して下さい。
嘔吐や下痢がみられる
痙攣の他に嘔吐や下痢などの消化器症状を伴っている場合、肝機能不全あるいは中毒・尿毒症の可能性が高いです。肝機能不全及び、尿毒症が起きている場合、身体の毒素が全身に回っています。
その毒素の影響で、消化管の粘膜が障害を受けてしまい嘔吐や下痢がみられます。
中毒でも同様に消化器症状がみられます。
いずれの場合も、症状としては深刻なので、動物病院に必ず受診して下さい。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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