2018年1月18日

【獣医師監修】すぐに水で冷やす!犬がやけどをした際の応急処置について

監修にご協力いただきました!

2002年麻布大学卒業

2002年目黒区の病院に勤務

2008年中央区の病院に勤務

2012年大田区の病院に勤務

2016年大田区西蒲田にてマリア動物病院開院

やけどはすぐに患部を冷やしたか否かでその経過も大きく変わります。

「愛犬がやけどをしてしまったかも!」と思ったら、飼い主はどのような処置をすればよいのか、ご自宅でできる範囲の応急処置法についてお話しします。

【読み進める前に!】愛犬のやけどが疑われる時点ですぐに水を!

飼い主にシャワーをかけてもらう犬

とにかく患部を冷水などで冷やす

愛犬がやけどをしたかもと思ったら、まず第一に患部に「冷水」をかけます。

犬は被毛で覆われているため患部を探しにくいかもしれませんが、痛みを感じていると犬は反射的に患部を舐めます。

皮膚が少し抜けていたり、患部が赤くなっていることもあるので、それらの場所を重点的に冷やすようにしましょう。

冷水のシャワーを直接、患部に当ててもいいですし、氷のうや保冷剤で患部を冷やすのも有効です。

この時、被毛をかき分けてできるだけ患部だけを冷やすようにしましょう。

これで皮膚組織へのダメージを軽減することができます。

冷やす時間の目安は10分です。10分経ったら水分をやさしく拭き取り、ガーゼなどで覆って(消毒や軟膏などは塗らず)早急に近くの動物病院へ連れていきましょう。

やけどが発覚した時点では、とにかくこの「患部を冷やす」という行動が第一になります。

飼い主さんが火傷の重症度を見分けるのは困難ですので、必ず獣医師に診てもらいましょう。

動物病院での診察までにできること(病院への連絡)

「やけどを負った(かもしれない)」「今から○○分ほどで向かう」など、やけどの深刻さに関わらず、この2点は事前に伝えておいた方がいいでしょう。

到着するとお休みだった、混んでいてスムーズに診察をうけられなかった、といった事態を避けやすくなります。

動物病院での診察までにできること(患部の処置)

皮膚の赤みだけの場合

保冷材などを患部にあて、包帯や伸縮性のある清潔な布で固定しておく

水ぶくれがみられる

患部を乾燥させないよう、生理食塩水を含ませたガーゼなどをあてておく

【深刻度別】犬がやけどした際に見られる症状

ベッドに伏せる犬

<症状>軽度のやけど

①焦げたような臭い

やけどを負った際に被毛が焦げつくことで、独特の臭いがします。

②皮膚に赤みが見られる

皮膚が赤くただれていたり、被毛が少し抜けてしまうことがあります。

しかし、たとえ軽度であっても皮膚の組織にダメージを負ったことは確かです。

冷水でひやして、早急に動物病院で診てもらいましょう。

③一か所を執拗に舐める

皮膚に赤みを帯びたり、ジンジンと痛むため気になって舐めていたら、やけどをしいている可能性があります。

④触られることを嫌がる

赤みを帯びている部分を触ると嫌がる、噛みつく、キャンと鳴くような場合はやけどをしている可能性があります。

⑤決まった寝方しかしない(患部をかばうような行動)

人間同様に、犬もちょっとした火傷でも皮膚の組織にダメージを与え、痛みを伴います。

患部をかばうような寝方や行動をとることがあります。

<症状>重度のやけど

皮膚に水ぶくれが見られる

やや重度の火傷の場合、赤み、痛みに加え、水膨れがみられます。

さらにひどくなって重度になると真皮を形成しているコラーゲンが破壊されるため、ケロイド状態になります。

低温やけどは気づきにくい

低温やけどとは、ホットカーペット、床暖房、こたつなどの比較的温度の低い暖房器具によるやけどを指します。

熱源が44℃の場合、約5~6時間ほどで低温やけどを起こすそうです。46℃になると1時間ほどで発症すると言われています。

低温やけどの場合、飼い主がなかなか気づかないケースも多いようです。

犬が痛みをあまり感じていないこともあるのですが、痛みは無くても実は皮膚の奥で進行している場合もあり、とても治りにくいのです。

重度の場合は、皮膚組織が壊死してしまい手術が必要であったり、感染症にかかってしまう危険もあるので十分に注意が必要です。


【予防のために】犬がやけどを負うきっかけ

ドライヤーをあてられるポメラニアン

暖房器具の熱

石油ストーブやヒーターのすぐ前で、愛犬が長時間寝ているという光景を目にしたことはありませんか?人間だと熱くて近寄れない距離であっても、犬は気持ちよさそうに寝ていることがあります。

実は、犬は被毛があることで暖房器具から受ける熱に鈍感になっています。

普段は寒さなどから皮膚を守ってくれる被毛ですが、それが逆に“火傷するまで高温に気づかない”要因にもなり得るのです。

子どもや犬がストーブに近づけないようにするサークル(柵)の利用もおすすめですが、サークル自体が熱を帯びた場合、それ自体が火傷の原因となるので設置場所には気を付けて下さい。

ストーブのほかにも、ホットカーペット、床暖房、こたつなども長時間使用していると低温やけどの原因となります。

人間より体高が低い分、熱の受け方も大きく変わることも注意しておきましょう。

アウトドアの火元

近年のアウトドアブームにより、キャンプ地でも愛犬連れのご家庭を見かけることが多くなりました。

アウトドアの醍醐味でもあるBBQ

食材が焼けていい匂いがしてくると犬はつられて火の側に近づこうとします。

直接火元に触れていなくても、炭が飛んできて誤ってやけどしてしまうケースがあるようです。

BBQなどで火をおこしているときは、犬は必ず少し離れたところにしっかりと繋いでおくようにしましょう。

河原の石などにも注意

また河原などでBBQの後、炭をおこしていた周辺の石が熱くなっていることがあります。

片付けが終わったからと、安心していると足や肉球をやけどしてしまうなんてことも考えられますので注意しましょう。

間違ったケア

意外と知られていないのが、シャンプーをした後に使うドライヤーによるやけどです。

犬が暴れないうちに乾かせようと焦るあまり、近距離でドライヤーをかけて皮膚がやけどしてしまうというケースもあるようです。

必ず、自分の手を添えて確認をしながら一ヵ所に風が集中しないように注意しましょう。

猛暑日の散歩

日中のアスファルトは、およそ50~60℃にも達すると言われています。

肉球で歩いている犬は、50℃以上のアスファルトを裸足で歩いているのと同じことです。

知らぬ間に、肉球がやけどをしているなんてことに。

同じように、マンホールや砂浜、タイル、コンクリートなどもかなり温度が上がりますので注意が必要です。

夏場のお散歩はまず地面を「ワンタッチ」を心掛けましょう。5~10秒ほど触れて、熱さを感じるようであればそのコースは避けるべきです。

【おさらい】犬がやけどした場合の治療内容と予防法

足に包帯を巻いている犬 応急処置のおさらいも兼ねて、やけどが発覚してから治療までの流れをお話しします。

1. 患部を冷やす

被毛をよけて患部を探しましょう。皮膚が赤くなっていたり、脱毛している箇所があればそこを重点的に、冷水、氷のう、保冷剤などを使い冷やします。

2. 患部の水分を軽く拭き取る

10分ほど冷やしたら、患部の水分をガーゼなどでトントン叩きながら拭き取ります。

ある程度拭き取ったら新しいガーゼを当てて、早急に動物病院へ行きましょう。

もし、水膨れやケロイドの状態である場合は、ガーゼに冷水を染み込ませ軽く叩き、患部が乾燥しないよう注意しながら動物病院へと急ぎましょう。

3. 動物病院での治療

軽度の場合は、抗生剤を投与し、併用して塗り薬が処方されます。

患部は包帯で覆われているので、自宅でこまめに交換したり、薬を塗ることになります。

重度の場合、一番怖いのが「感染症」です。

命に関わるケースもあるので必ず獣医師の指示に従いましょう。

熱傷部分の処置をし(場合によっては手術が必要となります)経過観察となります。ほとんどの場合、入院が必要です。

暖房器具を使用する場合は、必ず手を当てて熱すぎないかこまめに確認をするようにしましょう。

もっとも大切なのは、やけどしそうな器具は置かない、使用しないこと。

どうしても使用する場合は、直接触れないように工夫しましょう。

まとめ

包帯を巻いた犬の前足 愛犬がやけどしてしまった場合の応急処置についてまとめてみました。

もしも、やけどをしてしまった場合「まずは冷水でひやすこと」がとても大切です。

そして、冷やしたら早急に動物病院で診てもらいましょう。

やけどの度合いは、飼い主さんにはなかなか判断がつかないかと思いますので、必ず専門家の指示に従いましょう。

もし重度のやけどだった場合、すぐに「冷やす」という行動がとれたか否かがその後の経過に大きな影響を与えます。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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