2017年9月18日

【専門家が解説】初心者でもOK!自宅で出来る犬のカット術

監修にご協力いただきました!

トリマーライセンス取得後に、マーケティング・広報宣伝としてペット用品メーカーに勤務。

現在は愛犬をご自宅のような環境でストレスなく預かる“いぬのホームステイ”『Pet sitter & Doggy Daycare Lima Lima 』を運営。

ホームステイ中の犬のケア、ご自宅まで訪問するペットシッター、トリミングの知識を活かして自宅で出来るグルーミングレッスンなど飼い主様に合わせたプライベートサービスをを行ってます。

「少し伸びた毛を自宅でカットしてあげたい」「毎月必要なトリミング費用を節約できたら…。」そうお考えの飼い主も、道具選びや正しい知識がない状態では難しく、犬を自宅でカットをすることはハードルが高いと感じられるでしょう。

自己流で始めても挫折しないために、安全に自宅で犬をカットする際のポイントを紹介します。

犬のカットはどこまで必要?

カットされるポメラニアン まずは、自分の犬に必要なアイテムを知ることも大切です。

チワワやダックスフント、ポメラニアンなど、基本的には換毛期で毛が生え変わるダブルコートの犬は、顔周りやお尻周り、手足の先だけのカットで済ませられる犬種です。

暑さ対策や汚れ対策として、本来のロングコートの毛を短くバリカンで刈ってしまう方もいますが、基本的には、犬種本来の毛の長さは暑さ・寒さ・皮膚を守るために機能していて必要なものです。

体全体の毛は、短く刈り込むよりも、生え変わりで抜け落ちる毛をしっかりブラシで取り除くことが必要になります。

一方、トイプードルやヨークシャーテリア、マルチーズ、シュナウザーなど毛がほとんど抜けずに伸びる犬種は、定期的に体全体をカットする必要があります。時にはプロのトリマーに任せる必要もありますが、練習次第で自宅カットも可能です。

どんな犬種も短くカットすることが良いとは限りません。犬種の原産国と風土の異なる日本でペットとして快適に過ごさせる場合、カットだけで解決する事はできない事があります。

適切な温度や湿度も、犬に必要な健康管理として考えてあげましょう。

しっかりとした“準備”と“注意”でカットの仕上がりに差が出ます

カット道具とトイプードル プロのトリマーが、犬のカットを行う前に必ず行うことは「犬の健康チェック」です。

犬の体調が良く、穏やかで機嫌の良い時にリラックスした状況で行うようにしましょう。日常的にスキンシップしていても、カット前には必ず健康状態をチェックしてから行いましょう。

サロンでは、犬をシャンプーしてドライヤーでしっかり乾かし、ブローした状態でカットを施しますが、自宅でカットする場合、せめて酷い汚れやもつれが無い状態で行いましょう。

また、自宅でカットする際には環境も安全で、衛生的にカットができるかどうかも注意しましょう。

犬の健康状態のチェックと注意すること

・皮膚の状態(赤み、湿疹、乾燥)、イボや腫れが無いか?
・体や手足、関節など触れて痛がったり、嫌がる、怒る場所は無いか?
・食後は消化にエネルギーが必要なため避ける
・過度に興奮していないか?
・ひどく汚れたり毛がもつれたりしていないか?

自宅カット環境のチェックと注意すること

・掃除がしやすい場所を選びましょう(洗面所、バスルーム、玄関など)
・自宅の庭やベランダを含め屋外ではしない(必要であれば、床に新聞紙やビニールシートを広げておくと便利)
・愛犬がリラックスできる落ち着いた環境か?(子供やほかの動物が走り回る環境は危険)
・台に乗せる時は落ちないように手を離さない(壁面や部屋の角を利用すると危険度が減る)


何から揃えれば良い?犬の自宅カットで役立つアイテムと使い方

カットするための道具 初めての自宅カットでは、まず道具を揃えることからはじめましょう。高価なプロ用アイテムは仕上がりも美しく性能が高い製品がある一方、初心者には使い方が難しいものもあります。まずは、ペット用として市販されているカットグッズを使ってみることをオススメします。

スリッカーブラシ

スリッカーブラシ 日常のお手入れにも欠かせないブラシです。ハサミやバリカンを使用する前は、しっかりブラッシングを行い、もつれの無い状態にしておくことで、安全で美しいカットの仕上がりにつながります。

長毛犬にはソフトスリッカーブラシを、短毛犬にはハードスリッカーブラシを使用します。

<使い方>

※ブラッシング記事参照
「犬のブラッシングの基礎知識」嫌がる愛犬には工夫と継続を。

コーム(クシ)

コーム(クシ) カット時に毛のもつれをチェックしたり、皮膚を傷つけないためにコームの先を皮膚に軽く当てて毛の長さを確認できるアイテムとしても使用します。

コームはピンの間隔が広いものと狭い2Wayになっているペット用で、素材はステンレス製のものが便利です。

<使い方>

※ブラッシング記事参照
「犬のブラッシングの基礎知識」嫌がる愛犬には工夫と継続を。

犬用ミニバリカン(電動)

犬用ミニバリカン(電動) 足裏の伸びた毛や、汚れやすい肛門周りの毛、お腹や股の内側など小さな部分をこまめにカットできるため、日常のお手入れのアイテムとして持っておくと便利です。

カットできる毛の長さを表示する刃の表示が“1ミリ以下”のものを選ぶようにします。コードの無い電池式、または充電式が便利です。

<使い方>

毛の流れと逆(毛先から根元に向かって動かす使い方がメインです)刃は皮膚に押し付けないように注意して、力を入れずペンを握るように軽く持つのがコツです。

[お尻まわり]
肛門を中心として中心に触れず、中心から外側に向けてバリカンで肛門に覆いかぶさった毛のみをカットします。

この時バリカンを持たない片方の腕で犬の身体を脇に抱えるようにして近くに支え、手は尻尾を上に挙げるようにして保持すると安定しやすいです。
 
[足裏]
プロは足裏の皮膚も上手に広げて根元から毛を刈りますが、自宅では肉球に被さる表面だけでも剃ってあげるだけで充分です。足裏をカットする場合、カットする足の先だけを持たず、足の付け根から全体を支えて持ち上げてあげるのがコツです。

[おなか]
とても皮膚が柔らかい場所です。乳首や陰部など突起している部分をバリカンの刃で傷つけないように注意しましょう。夏場など暑い時期、お腹だけでも短くカットしてあげると、フセした時にフローリングやタイルの上で身体の熱を逃がしやすいので効果的です。

お腹や内股がオシッコで汚れがちな雄の場合、お腹はペニスの先端より少し上のヘソ辺りまでバリカンでカットし、内股もミニバリカンで広めに毛を剃っておくと衛生的です。

犬用全身用バリカン(電動)

犬用全身バリカン(電動) 主にトリミングが必要な犬種に使用します。広くカットできて、長さを均一に揃えられるため、短時間で美しくカットできるアイテムです。

プロ用バリカンは、本体に替刃(ブレード)を付け替えるものが多いのですが、替刃タイプは刈り込む毛の長さによって刃先の間隔も広くなるため、初心者が使用する場合、誤って皮膚を挟んで怪我をさせてしまう可能性があります。

初心者には、刃に樹脂製やステンレス製のアジャスター(刈り込む高さを調節できる付属品)装着できるバリカンがオススメです。

<使い方>

バリカンでカットしたい部分は、必ずもつれがないようにしっかりブラッシングしておきます。

もつれがあると、綺麗に均一にカットすることができません。仕上がりの長さを調整したい場合、長めのミリ数から順(12ミリ→9ミリ→6ミリ→3ミリ)に使用していくと、刈りすぎる失敗は少なくて済みます。

バリカンは、刃が皮膚に当たらないように気をつけながら、刃先は皮膚と並行に沿わせ、毛の流れと同じ方向に動かして刈ります。

このとき、皮膚にたるみがある場合はしっかり伸ばすことがポイントです。皮膚が平らな状態でバリカンを使用するようにしましょう。

犬用カット用ハサミ

顎の毛をカットされる犬 紙や布を切る文房具のハサミではなく、犬の毛を切るためのものを選びましょう。プロ用の物は1つ数万〜数十万するものがありますが、家庭で使用する一般的な用途であれば、ペット用品店で手軽な価格なものが手に入ります。

<使い方>

伸びて気になる部分をこまめにカットする場合に使用します。ハサミを使用する時は必ず刃先が犬の身体に向かないように気をつけましょう。

また、ハサミの刃は閉じて持つようにします。カットが必要な部分で刃を開き、素早くカットします。

ハサミの刃を開いた状態で迷いながら犬の身体に近づけるのは怪我に繋がり危険です。

毛をカットする時は、なるべく毛先から少しずつカットします。

また、必ず刃先が犬の皮膚に当たらないことを確認してからカットするのですが、慣れるまでは毛を指でつまんでカットすると安全です。

犬用カット用スキバサミ

スキバサミでカットされる犬 毛の量を少しずつボリュームダウンさせたい時に使用します。フェルト状になった毛玉を切ったり、もつれをほどく時、ハサミの跡を残したくない時にも便利です。

<使い方>

ボリュームダウンさせたい場合や、刃の跡を目立たせたくない場合、同じ場所で何回も刃を開閉させず、毛の根元から毛先に向かって切る場所を移動させながら数回刃を動かして毛を梳き切ります。

フェルト状になった酷い縺れがある部分は、もつれた部分を「+(プラス)」や「井の字」に縦横の切り込みを入れてからスリッカーブラシでもつれをほどきます。ハサミを使用する時は、必ず刃先が犬の身体に向かないように気をつけましょう。

自宅カット上達のコツ

カットされるトイプードル せっかく道具を揃えたのに、使わず(使えず)に自宅でのカットを挫折してしまわないために、自宅カットを続けられるためのポイントを紹介します。

回数を重ねる

カットの機会があれば、恐れずチャレンジしてみましょう。

プロのような完璧な美しさを求めすぎない。

最初は上手くできなくても当然。怪我させないことが何より大切です。

長時間は避ける

ついつい夢中になりがちな方は、今日はここまでを決めておくことも必要。犬にも負担がかからないように気をつけましょう。

1回で全部を仕上げず、数日に分けて行う

気軽にカットできるのが自宅カットの良いところです。今日は足だけ、顔だけ、体だけ…と決めると気持ちも楽になります。

時にはうまくゴマかすのも飼い主次第

切りすぎてしまった場合、時には「また伸びる」と気長に次のカットのタイミングを待ちましょう。お散歩など一時的に洋服を着せてあげることで、寒さや日差しから守ってあげることもできます。

時にはプロに頼りましょう

トリマーに抱えられる犬 苦手な部分(顔周りや足先など)はプロにお任せしながら、自宅でのお手入れ方法を教えてもらうと上達の近道になります。プロのトリマーもお手入れに熱心なお客様は大歓迎です。動画サイトでプロのトリミングレッスンを見て学ぶこともできます。

まとめ

トリマーにカットされる犬 プロで活躍するトリマーも誰もが皆最初は初心者でした。犬に怪我をさせないように細心の注意を払いながら、専門学校で沢山の犬の協力を得て練習をします。自宅カットは飼い主と愛犬の信頼関係が何より大切です。

日頃から犬の性格や健康状態をしっかり把握し、スキンシップを欠かさないこと。そしてお互いが無理せず自宅カットの回数を重ねていきましょう。

櫛部優子 文:櫛部優子(くしべゆうこ)

トリマー、愛玩動物飼養管理士、ペットシッター士
トリマーライセンス取得後に、マーケティング・広報宣伝としてペット用品メーカーに勤務。
現在は愛犬をご自宅のような環境でストレスなく預かる“いぬのホームステイ”『Pet sitter & Doggy Daycare Lima Limam』を運営。ホームステイ中の犬のケア、ご自宅まで訪問するペットシッター、トリミングの知識を活かして自宅で出来るグルーミングレッスンなど飼い主様に合わせたプライベートサービスをを行ってます。

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