2018年2月1日

【獣医師監修】犬の睡眠時間はどうして長い?

監修にご協力いただきました!

櫻井洋平先生

BiBi犬猫病院  院長

2008年3月 麻布大学獣医学部獣医学科卒業

2008年4月〜2013年11月 横浜市内動物病院勤務

2011年4月〜2015年3月 麻布大学附属動物病院 腎泌尿器科・外科 専科研修医として研修

2013年12月〜2015年5月 千葉県内動物病院勤務

2015年7月〜2016年2月 宮城県内動物病院勤務

2016年11月〜 仙台市にBiBi犬猫病院を開院

「最近、愛犬の睡眠時間が長い気がする……」

「睡眠時間が長くて大丈夫かしら?」

このように、犬の睡眠時間が長いことを不安に感じている飼い主の方もいらっしゃるかと思います。

そこで今回は、犬の平均睡眠時間について、そして犬が長時間寝る理由についても含めてご紹介したいと思います。

犬の睡眠時間の平均は?

ベッドで丸くなってジャックラッセルテリア

人間と犬の平均睡眠時間


・人間:7~8時間
・犬 :11~15時間

並べると非常に長く感じますね。さらに、年齢によっても睡眠時間は異なります。

成犬の睡眠時間

健康な成犬の平均睡眠時間は11時間くらいと言われています。

これは人間よりも5時間以上も長く、1日の半分近くを寝て過ごしていることになります。

また犬種によっても睡眠時間は異なり、チワワやダックスフントなど、小型かつ活動的な犬種は10~11時間くらいが平均的です。

ポメラニアン、トイプードルなどのさらに活発な犬種は比較的長く12~18時間寝る犬も珍しくないそうです。

逆に、もともと番犬や作業犬として活躍してきた柴犬は9~10時間と若干短め。他の犬種よりも、柴犬は比較的体力があるのかもしれませんね。

子犬の睡眠時間

子犬の場合は、16~18時間と成犬に比べて長めですが、1歳を迎える頃から徐々に睡眠時間が短くなってきます。

また子犬の場合は、好奇心からチョコチョコと動き回ったり、体力がまだないために長い睡眠時間が必要となります。

老犬の睡眠時間

老犬も子犬と同様に16~18時間と長めです。

老犬は疲労回復に時間がかかるため、ご飯やトイレ以外は寝ている、なんてこともよくあります。

これまでは日中よく遊んでいたのに「最近は寝てばかりいて大丈夫かしら?」と心配する飼い主さんもいるかと思いますが、加齢によって睡眠時間が増えるのは特に心配しなくても大丈夫そうです。

犬が寝ているときは無理に起こしたりせずに、ゆっくりと休ませてあげるようにしましょう。

犬の睡眠時間が長い理由

顔を隠して寝るチワワ 犬が長い時間、眠っていられるのには、もともと狩りをする動物であったという”犬のルーツ”が関係しています。

目覚めてすぐ行動する必要があった

狩りをする動物だった犬は、寝ている間に自らも敵に攻撃される心配がありました。

このようなリスクを回避するために、敵の気配を感じたらすぐに動き出せるよう、睡眠時間の多くは”浅い眠り(レム睡眠)”となったようです。

そのうえ、狩りをするためには大量のエネルギーを消費するので、睡眠時間を多くとる必要がありました。

つまり体力を温存するためには、睡眠時間を長くとる必要があり、自然とこまめに眠れるようになったのです。

犬は日中に寝る

犬は夜行性の動物であり、狩りをするのは主に夜でした。

その方が気配を隠しやすく、獲物を狙うのに都合がよかったからです。

そのため、犬は活動をしない”日中に寝る”という習慣があったようです。

しかし人間とペットが一緒に生活するようになった昨今、犬は次第に人間の生活リズムに合わせて寝起きを共にするようになりました。

昼に起きて、夜に長く寝るようになるにつれ1日中寝て過ごすように変化していったのです。

犬の睡眠は浅い

犬の睡眠時間も人間と同様に、レム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)の2種類あります。

浅い眠り(レム睡眠)

筋肉の緊張がゆるみ全身の力が抜け、体がリラックスしていますが、脳が起きているときに近い状態です。

瞼の裏側で眼球がキョロキョロしていたり、手足がピクピク動くときはレム睡眠の状態です。

深い眠り(ノンレム睡眠)

脳が休息を取っていて、体は起きている状態のことです。

眠りが深いノンレム睡眠のときは、多少の物音では起きません。

人間は90分ごとにレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返すのに対し、犬は20分ごとのサイクルなので、眠りが非常に浅く、犬はすぐに物音や人の気配に気づくのは睡眠による特徴だと考えられます。

レム睡眠とノンレム睡眠の割合をみてみると、人間の平均睡眠時間7~8時間のうち6時間以上は熟睡しているのに対し、犬はわずか3時間ほどしか熟睡していないという計算になります。

そのためにも愛犬が熟睡しているときは、できるだけ安心して睡眠がとれるように配慮してあげましょう。


犬の健康と睡眠時間の関係

女の子と横になるシェパード 上記の通り、犬は眠りが浅いため長時間の睡眠を必要とします。

睡眠時間が不足すると人間も体調不良になるように、犬も体調を崩したりストレスによって不調を招く原因となります。

睡眠不足はストレスに

睡眠が不足することによって、犬は大きなストレスを感じると言われています。

睡眠時間が10時間未満の犬は、ストレス度が非常に高くなり、逆に睡眠時間が長い犬は、ストレス比較的少ないとも言われています。

そう考えると、お散歩、食事、遊びなど以外は1日のほとんどを寝て過ごしている状態にもなりかねませんが、実はそれが犬にとってはベストの状態なのです。

飼い主さんも、愛犬が安定した睡眠時間を確保できるように配慮してあげるようにしましょう。

病気の場合は注意が必要です!

甲状腺機能低下症

喉にある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、別名”元気ホルモン”とも言われていて、働きが弱くなることで過剰な眠気を引き起こします。

しかし、症状が現れていても病気によるものか、老化によるものなのか判断が非常に難しいところです。

ぼんやりして散歩に行きたがらない、体重増加、顔のむくみ、皮膚の乾燥、脱毛などの異常が併せて見られる場合は、甲状腺機能低下症を疑ったほうがよいかもしれません。

特に高齢の犬に多く見られる疾患で、小型犬や大型犬に多いのも特徴です。

関節痛

主に老犬に多く見られます。

関節や背骨などに痛みがある犬は、痛みを抑えるために動かずにじっとしていることがあります。

その場合、お散歩やトイレ、ご飯を食べるときなど、いつも行っている動作に変化がないか、体を触ってみて痛む箇所がないかなどをチェックしましょう。

ナルコレプシー

別名「眠り病」とも呼ばれる病気で、自分の意志とは関係なく眠ってしまう睡眠障害の一種です。

詳しい原因などは分かっていませんが、遊んでいるときに突然コロンと横たわって寝てしまうなどの行動が見られる場合は、ナルコレプシーの可能性が高いといえます。

この場合は、早急に動物病院で診てもらうことをおすすめします。

病気を患っている

糖尿病や感染症などを患っている場合、病気が進行するにつれ、倦怠感が増し睡眠状態が長くなることがあります。

これらの病気の場合、命に関わる危険性があるので注意が必要です。

病気が疑われる場合は、動物病院で適切な治療が必要となりますので、獣医師へ相談しましょう。

横になるビーグル 犬が人間よりも睡眠時間が長いのには、きちんとした理由があります。

よく寝ているからといって神経質になる必要は特になさそうです。

ただし「睡眠時間が長くなった」と感じたのと同時期に、先ほど触れたような病気の症状がみられるようになった際は、動物病院を受診することをおすすめします。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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