2017年7月6日

狆ってどんな犬?その性格や歴史とルーツ

日本原産にも関わらずオリエンタルな雰囲気を放ち、由緒正しい古い歴史とチャーミングな外見を併せ持つ、とても魅力的な犬種が狆です。
日本人の中でも「この犬は知らなかった」という方は多いのではないでしょうか。

中国のペキニーズにも似た狆は聖武天皇の愛犬だったこともあり、浮世絵に描かれていたり、はたまた古くは日本書紀にも登場したり、はたまたあのペリー提督にイギリスへ持ち帰られたりと、歴史のある日本犬です。

狆の基礎知識

狆の歴史

公園で座っている狆 狆という犬が誕生した歴史は諸説ありますが、最も有力なのが仏教伝来とともに日本に入ってきたという説です。

これは西暦500年頃、今から1500年以上も前です。632年の日本書紀には朝鮮から狆が送られたという記述が残っており、続日本記にも732年に新羅(当時の朝鮮)から聖武天皇に送られたという記録があります。

そしてその後の歴史的文書にも狆の記述は多数残されており、その時代から日本の皇族たちにとても大切にされていたと言います。

戦国時代に日本に入ってきたという説もありますが、17世紀に日本にやって来たイギリス人が狆を持ち帰ったとされているため、戦国時代よりも前に日本で交配が進められていたと考えるのが自然です。

余談ですが、ペリー提督が黒船に乗ってやって来た時も、狆を2匹のつがいで持ち帰り、犬好きで知られるエリザベス女王に献上したとされています。

ベンチに座っている狆
生類憐みの令で知られる徳川綱吉の時代には、江戸城の大奥で女性たちの愛玩犬として大変可愛がられていたと言います。

その頃には日本の上流階級の人たちの間で大流行していたため、狆は贅沢三昧の日々を過ごしていたと言われています。

長い間上流階級で可愛がられていた狆ですが、江戸時代になり天下泰平の時代が訪れると、庶民の間でも狆を飼って育てることが流行しました。江戸の文化に浸透した狆は浮世絵にも多く描かれて人々の生活に溶け込んでいったのです。

そして、ペリーの黒船が来航したことで鎖国が解かれ、少しずつ海外の犬が持ち込まれる様になると、狆は少しずつ数を減らしていきました。

逆に、イギリスやアメリカ合衆国、フランスでは鎖国していた国から持ち帰られた珍しい犬種としてブームとなり、繁殖家たちによって交配と改良が進んでいきました。

現在、日本の家庭にいるのは、この時代に繁殖され、種として固定化された狆が祖先だと言われています。激動の歴史の中で、世界を旅しながら日本に戻って来た狆は祖国でまた少しずつ注目されつつあります。

狆の名前の由来

原っぱで仰向けに寝転んでいる狆 狆という名前は「ちん」と読みますが、これは「ちいさいいぬ」という言葉が短くなったものだと言われています。

漢字の雰囲気が猫に似ているのも、猫のように小さな犬だったためこの字が使われたという説が一般的です。

狆の特徴

狆の横顔 狆は体高と体長がほぼ同じスクエア型の体型をした犬種です。小さな体を豊かな長毛が覆った気品溢れる容姿が魅力的です。

頭部は丸くて幅広くマズルがとても短く、この鼻ペチャな顔がチャーミングだと言われています。

離れ気味についた大きな丸い瞳はいつも濡れていて、鼻も漆黒。耳は三角形で垂れ耳型です。

被毛は絹糸状の直毛で、耳や首、大腿、尾には美しい飾り毛があります。

狆のサイズ

体高はオスが25cm、メスはそれよりも若干小さめです。

狆の性格は?

子どもと公園で休んでいる狆 狆はおよそ1500年以上も人間のそばにいた犬なので、人の気持ちや感情を察するとても繊細な犬です。そのため、周囲に対して神経質になってしまう傾向もあります。

全体的におとなしく、人と一緒にはしゃぐというより、人にそっと寄り添うような性格です。

狆のしつけ

利口で賢く、物覚えも良いのでしつけをしやすい犬種です。見た目の通り、少しお高く、プライドが高い一面があるので、いうことを聞かないときは少し厳しく躾けるようにしましょう。

小さい頃から色んな人や犬と会わせることで社会性を身につけさせることが大切です。


狆の平均寿命と長生きのヒント

狆の平均寿命

ベンチの上で座っている狆 狆の平均寿命は、12~13歳と、犬の平均よりも少し短くなっています。ただ、これはあくまで目安なので、適切な健康管理をしっかり行うことで平均より長生きしてくれる可能性はあります。

狆がかかりやすい病気

狆のようなマズルが短い所謂短鼻の犬は、呼吸器や心臓の疾患にかかってしまう子が一定数存在します。

そういったことを避けるためにも、お迎えするときには信頼できるブリーダーから譲ってもらうようにして、事前に数世代前までの遺伝的疾患の有無を知ることも大切です。

目が少し飛び出た構造になっている犬は、総じて角膜などが傷つきやすく、目のトラブルを抱えることが多くなります。散歩の際には目に枝などが当たらないように注意しましょう。

狆を飼うときのポイント

狆の日々のお手入れ

狆の顔 シングルコートの長毛で厚い下毛が無いため、見た目ほど被毛のお手入れは難しくありません。

毎日スピンシップを取りながら、ピンブラシとコームでとかしてあげるだけで十分です。毛玉ができてしまうと皮膚疾患の原因にもなるので注意が必要です。

涙が多い犬種で涙やけもでやすいので、固く絞った布でこまめに拭いてあげてください。鼻がクシャッとしているのがチャームポイントですが、この鼻と口の周りのシワにも汚れがたまりやすいので丁寧に拭いてあげましょう。

また、垂れ耳の犬種なので耳の中に雑菌がたまり外耳炎の原因となるので、こちらもお手入れが必要です。

狆の運動量とお散歩は?

リードをつけて立っている狆 小柄な体型で性格もさほど活発な犬種ではないので、室内や家の庭で少し運動させるだけでも、一日に必要な運動量をクリアすることができます。

ただ、室内の運動で十分とはいえ、外界との触れ合いは社会性の育成やストレス発散にも有効ですので、短時間のお散歩にも定期的に連れて行ってあげましょう。

適度な運動で肥満を防ぐのも健康を保つ重要なポイントです。

狆は暑さに弱い!

舌を出してパンティングしている狆 マズルが短い犬種は総じて暑さに非常に弱く、命に関わる事態になることもあるので十分注意してあげましょう。

抜け毛も少なく、体臭もほとんどない犬種なので、室内飼い出来る家庭でお迎えする事をお勧めします。空調を管理して、年間を通して25度程度の部屋で生活させてあげましょう。

また、炎天下でのお散歩も避けましょう。

まとめ

若い狆の顔 知られざる日本犬、狆の魅力が伝わったでしょうか。歴史を紐解いて、こんなにも歴史上の偉人の名前が挙がってくる犬種は珍しい部類です。

遣唐使に聖武天皇、徳川綱吉にペリー提督、エリザベス女王………。歴史を駆け抜け、その時代の偉人たちに愛されながら、巡り巡ってまた日本で花開きそうな狆。

美しく品のある犬種、狆はあなたの人生にそっと寄り添ってくれるような、ベストパートナーとなれる犬です。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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