2017年10月5日

【専門家が解説】「犬の臭い」の原因は?ケア方法や対策について

監修にご協力いただきました!

氏原由佳理先生

トリマー 

トリマー歴9年。愛玩動物飼養管理士1級。ホリスティックケア・カウンセラー。

動物の専門学校を卒業後、ペットショップ、動物病院でトリマーとして勤務。

現在は自宅でサロンを開業し「心地よいトリミング」をテーマに、犬の気持ちに寄り添った負担の少ないトリミングを実践中。ちょっと大きめトイプードルと暮らしてます。

身近で生活する室内犬の場合は、一緒に過ごしている家族は匂いに鈍感になります。
その為、愛犬の匂いなどで他人に不快な思いや、迷惑をかけていないか気にする飼い主の方は多いようです。

臭いの原因から対策方法までご紹介しますので、ご参考ください。

犬の臭いの原因その1 体臭

顔を隠す犬 犬の汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類があります。

エクリン腺は犬の鼻先や足の裏などにあり、水分が多く含まれているサラッとした汗をかきます。アポクリン腺は犬の全身にあり、脂質やタンパク質を含んだ粘度のある汗をかきます。

アポクリン腺から出る粘度の高い汗が空気に触れ、酸化する事で臭いとなってあらわれます。

また、犬の皮膚や毛穴に存在している雑菌は、アポクリン腺から出る汗(皮脂)を食べて生活しています。このときに雑菌が汗を分解することで、独特の臭いが発生します。アポクリン腺が全身に存在している犬は、体の臭いが強くなりやすいのです。

また、雑菌は高温多湿な環境で繁殖します。そのため、雨が降り続く時期は増えすぎた雑菌によって皮膚炎が発生し、さらに体が臭いやすくなります。

犬の臭い対策 シャンプー

犬の臭いは定期的なシャンプーで防ぐことができます。シャンプー剤に含まれる界面活性剤は、油分と水分を乳化させて汚れを落とす作用があります。

つまり、シャンプーによって余分な皮脂を除去し、雑菌の繁殖を防ぐことで臭いを軽減できます。

自宅でシャンプーする場合は、だいたい2週間~1ヶ月の間隔で洗ってあげると良いでしょう。ただし、洗った後に生乾きのまま放置すると雑菌が繁殖してしまいます。

良かれと思って行ったシャンプーが、皮膚炎の原因となることもあります。しっかりと最後まで乾かすことを心がけましょう。

自宅でのシャンプーが難しい場合は、1ヶ月に1度の間隔でトリミングサロンを利用すると良いでしょう。

犬の臭い対策 毎日のブラッシング

犬の臭い対策には毎日のブラッシングも有効です。ブラッシングをすることで、犬の毛についたほこりや汚れが取り除かれ、皮膚を清潔に保ちやすくなります。

また、換毛期のある犬はブラッシングによって抜け毛がなくなれば、皮膚の通気性が良くなり臭いを予防できます。

犬の臭いの原因その2 口臭

パンティングする犬 犬の臭いは、口臭が原因となることもあります。歯磨きをしないでいると、犬の歯に歯垢(プラーク)がつきます。すると、歯垢に含まれる細菌が少しずつ歯茎を攻撃し始め、歯肉炎を発症します。

犬の場合は3日もあれば歯垢が歯石に変化すると言われています。歯石がつくと、その上からさらに歯垢がつきやすくなります。この頃から徐々に口の中が臭い始め、さらに進行すると歯周病となり、口の臭いが強くなっていきます。

犬の口の臭い対策 スケーリング

犬の口の臭いは、スケーリングと呼ばれる手術によって解消します。しかし犬の歯石取りは、全身麻酔をかけて行う必要がありますが、事前の血液検査で出た数値が悪ければ、麻酔がかけられないこともあります。

特に、犬が高齢になると手術ができない可能性が高まるので、早めの対策や予防が肝心です。

犬の口の臭い対策 毎日の歯磨き

スケーリングによって歯石を除去しても、毎日の歯磨きを怠ればすぐに元の臭いに戻ります。前述しましたが、犬は歯石へと変化するまでの時間が早いので、歯ブラシによる毎日のブラッシングが重要です。

また、歯肉炎を発症したことで歯茎が後退している犬は、歯周ポケットが深くなっています。磨くときは、歯と歯茎の内側まで念入りに磨きましょう。

奥歯など、歯ブラシが磨きにくい場所に歯垢が残りやすいため、とくに意識して磨いてあげることが大切です。


犬の臭いの原因その3 耳の汚れ

耳に薬を注入される犬 耳の中に汚れがたまっていたり、炎症が起きている場合も臭いが出やすくなります。立ち耳の犬は、風通しが良いので比較的に耳の病気になりにくいです。

しかし垂れ耳の犬は、耳道にふたをしている状態なので通気性が悪く、湿気がたまって汚れがたまりやすくなります。

耳が汚れる原因は複数ありますが、皮脂を栄養に繁殖するマラセチアという真菌によるものがほとんどです。この場合は、犬の耳から甘酸っぱいような臭いがします。

犬の耳の臭い対策 耳掃除

耳が汚れやすい犬は、こまめな耳掃除が大切です。特に、シーズーやコッカースパニエルなど、脂性肌で垂れ耳の犬種は汚れやすいです。

臭いのある犬の耳は、茶褐色の汚れが溜まっている事が多いので、汚れを綺麗に取り除いてあげましょう。

犬の耳掃除のやり方を解説します。

まずは、イヤークリーナーを犬の耳に直接流し込みます。そして耳の付け根をクチュクチュと揉み、耳道についている汚れを浮かします。

しばらく揉んだら犬にブルブルと首振り運動をさせ、出てきた汚れをコットンで優しくふき取ってあげてください。この時、ゴシゴシと強く拭くのではなく、すくい取る感じで優しく行ってください。

この作業を、耳の汚れ具合に応じて数回繰り返しましょう。

触ると痛がる場合

耳掃除をするときに、耳を触ると犬が痛がる場合は、耳の中で炎症が起きている可能性が高いです。自宅では耳掃除を行わずに動物病院で診察を受けましょう。炎症が落ち着くと同時に耳の中の臭いも徐々に解消されます。

犬の臭いの原因その4 肛門腺

お尻の臭いを嗅ぐ2匹の犬 犬の肛門には、肛門腺と呼ばれる臭腺があります。そして肛門嚢(のう)と呼ばれる袋の中には、臭いの強い分泌液が詰まっています。

分泌液にはその犬の情報が詰まっていて、犬がお尻の臭いを嗅ぎ合うのは、肛門腺の臭いを嗅ぐことで情報交換を行っているからだと言われています。

肛門腺は、犬が排泄するときに少しずつ排出される為、本来であれば溜まることはありません。しかし、中には自力で絞り出すのが困難で溜まりやすい犬もいます。

そして、肛門腺が溜まることで臭い始める犬もいます。

また、溜まっていた肛門腺は、何かの拍子に一気に飛び出すことがあります。例えば、怖がりな犬の場合は知らない人に抱かれたとき、体が緊張状態になることで、グッと力が入って肛門腺が飛び出してしまうことがあります。

すると、あたり一面に肛門腺が飛び散り独特な強い臭いが漂います。

肛門腺の臭いはとても強力なので、肛門周りの毛につくことで嫌な臭いが強まります。また、飛び散った肛門腺が床や絨毯に付着することで、異臭として部屋の中に充満することもあります。

犬の肛門腺の臭い対策 肛門腺絞り

肛門腺がたまりやすい犬は、こまめな肛門腺絞りが欠かせません。肛門腺絞りは、肛門を時計に見立てたときの4時と8時の位置よりも少し下の方から押し上げる感覚で絞ります。もむようにゆっくりと絞り出してあげましょう。

ただ、肛門腺がかたくてなかなか絞れなかったり、犬が嫌がってできなかったりする場合もあります。そんなときは無理をせず、動物病院やトリミングサロンに任せましょう。

犬の臭いの原因その5 住環境の臭い

掃除機と犬 犬の毛には、住環境の臭いが移りやすいです。実際にその家に住んでいる人が臭いを認識するのは困難ですが、他の人が嗅ぐとその家独特の臭いがする場合があります。そのため、家が汚れていると、犬の毛の臭いも強くなります。

また、犬の臭いは犬が生活するスペースの汚れ具合にも左右されます。犬のケージやトイレが汚れていれば、犬の毛も汚れてしまいます。毛についた排泄物の汚れは、臭いの原因になります。

犬のウンチの臭いは、日常的に食べているフードに影響されることがあります。原材料の中に脂質やタンパク質が多すぎるフードは、消化されずに残った栄養がウンチに混じって臭いが強まります。

他にも、食べるフードの種類によっては、ウンチだけでなく犬の体臭が変わることがあります。

犬の住環境の臭い対策 家の掃除

住環境による犬の臭いを予防するためには、家を掃除することが大切です。床やカーペットに落ちた抜け毛は掃除機で吸い取り、布団のシーツやクッションカバーなど、洗えるものはこまめに洗濯しておきましょう。

また、家の中でタバコを吸われている場合は犬の毛にも移ります。家の外で吸うなど分煙することを心がけましょう。

そして、犬のケージやトイレの掃除も大切です。ケージに敷いてあるタオルや毛布はこまめに洗い、おしっこやウンチのついたトイレシーツはすぐに片付けましょう。

こまめなシャンプーを行っているにもかかわらず犬の体臭が気になる場合や、ウンチが臭う場合は、今食べているドッグフードを見直してみましょう。

まとめ

顔を見つめ合う犬と飼い主 犬の臭いを防ぐには、シャンプーや耳掃除、肛門腺絞りなど、こまめなケアが肝心です。また、犬が住む環境を掃除したり、フードを変えてみたりするのも良いでしょう。

それでも犬の臭いが気になるなら、病気で体調を崩している可能性もあります。犬の様子を観察し、必要なら病院に連れて行ってあげましょう。

氏原由佳理 文:氏原 由佳理

トリマー歴9年。愛玩動物飼養管理士1級。ホリスティックケア・カウンセラー。

動物の専門学校を卒業後、ペットショップ、動物病院でトリマーとして勤務。現在は自宅でサロンを開業し「心地よいトリミング」をテーマに、犬の気持ちに寄り添った負担の少ないトリミングを実践中。ちょっと大きめトイプードルと暮らしてます。

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