2017年6月13日

【獣医師監修】犬の生理期間はいつまで?気になる症状も解説!

監修にご協力いただきました!

櫻井洋平先生

BiBi犬猫病院  院長

2008年3月 麻布大学獣医学部獣医学科卒業

2008年4月〜2013年11月 横浜市内動物病院勤務

2011年4月〜2015年3月 麻布大学附属動物病院 腎泌尿器科・外科 専科研修医として研修

2013年12月〜2015年5月 千葉県内動物病院勤務

2015年7月〜2016年2月 宮城県内動物病院勤務

2016年11月〜 仙台市にBiBi犬猫病院を開院

これからメス犬をお家に迎えようと考えている皆さん、犬にも生理があるのは知っていますか?生理といっても、人の生理とは大きく異なります。

「基本は人と同じでしょ?」と誤った認識で対処していたら、望まない妊娠をさせてしまったなど、予期せぬことにもなりかねません。

犬の「生理」について正しい知識を身に付けて、愛犬のことをもっと理解できるようになりましょう。

犬の生理と人間の生理は少し違う?

「生理」は人でも起きますよね?実は、犬の「生理」と人の「生理」は仕組みが大きく異なります。

人の生理は、約1か月間隔でやってきます。その仕組みは、卵巣から卵子が排卵されると、黄体というものに変化します。

その黄体からプロジェステロンという性ホルモンが分泌され、妊娠に備えて子宮の粘膜を肥厚させます。

この時、精子と受精した受精卵が着床しなかった場合、この肥厚した子宮粘膜の一部が剥がれ落ちて、出血します。

つまり、妊娠しなかった時の出血が人の「生理」です。

一方、犬の生理(ヒート)は年に1~2回の間隔でやってきます。その仕組みは、排卵に備えて卵胞からエストロジェンという性ホルモンが分泌されます。

このホルモンの影響で、妊娠に備えて子宮が充血し、その充血した子宮の粘膜から溢れ出た血液が陰部から出ます。

つまり、犬の「生理(ヒート)」は、妊娠に向けて準備をしているという状態です。

同じ外陰部からの出血でも、人と犬では仕組みと意味合いが大きく異なります。

この事を理解していないと望まない妊娠をしてしまう事があるので、注意して下さい。

犬の生理(ヒート)の症状について

愛犬と向き合って座る女性 ヒートとは、次でお話する発情前期の期間を一般的には言います。ヒート中は、外陰部がぷくっと腫れ、陰部から出血します。

この出血量は、個体差があり、多い犬もいれば、飼い主が気付かない程、少ない犬もいます。

少ない犬の場合は、自分で血を舐めとってしまうので、おしりの方をよく気にしている場合、ヒートの可能性があります。

その他、おしっこの回数が増え、マーキングをするようになります。

また、そわそわ落ち着きがなくなったり、食欲がなくなったり、吐き戻しや下痢をしたりすることもあります。

この時期のおしっこには、オスを誘うフェロモンが含まれているの、オスが寄ってくるようになります。なので、お散歩の時には注意しましょう。


メス犬に訪れる「4つの発情周期」とは

犬の発情期は4つに分かれます。発情前期・発情期・発情休止期・無発情期の4つです。

それぞれ特徴があるので、それぞれの時期に気を付けないといけない事や、もし妊娠を希望する場合、そのタイミングなどをお話したいと思います。

発情前期

「発情前期」は、陰部から血様の分泌液が出るところから始まり、オス犬への交尾を許容するまでの期間です。

期間は、個体差がありますが、3~27日と様々で、平均期間は約8日間です。

この時期には、卵巣で卵胞が発育し、卵胞からエストロジェンという性ホルモンが分泌されます。

このホルモンの影響で、陰部が膨れ、子宮内膜が充血し、溢れ出た血液が陰部から出てきます。

この時期の犬は、落ち着きがなくなり、頻尿になります。個体差はありますが、食欲がなくなる、吐き戻すなどの消化器症状が出たりすることがあります。

また、性フェロモンが分泌されるので、オス犬が寄ってくるようになります。

発情期

「発情期」は、メス犬がオス犬に交尾を許容する期間です。期間は、個体差がありますが5~20日間です。排卵は、発情期の3日目に起こり、その後、約1週間発情期が持続します。発情期が進むにつれ、膨れていた陰部は小さくなり、発情出血の量も減っていきます。

このような特徴から、交配は発情出血が起こってから、13~15日目に行うことが多いです。

発情休止期

「発情休止期」とは、発情期の終了から黄体期の終了までの約2か月の期間です。この時期に、妊娠していなくてもホルモンの影響で乳腺が腫れてきたり、乳汁が分泌されたりなど、妊娠している状態と同じ身体の変化を起こすことがあり、これを偽妊娠と言います。

無発情期

「無発情期」とは、卵巣において卵胞も黄体もなく休止している期間です。この期間の長さは、3~8カ月と個体差があります。

犬がもつ発情周期の長さは、この無発情期の長さによって左右されます。

犬種によってはじめての生理(初ヒート)や期間、出血量が違う?

初めてのヒートは、もちろん個体差がありますが、8~16カ月齢で起こります。

一般的に、小型犬は早く、大型犬は遅いと言われています。

発情周期は、6~10カ月の間隔で繰り返されます。その期間も、小型犬だと短くなり、大型犬だと長くなる傾向があります。

出血量に関しては個体差がありますが、小型犬では少なく、大型犬だと多くなる傾向にあります。

小型犬の場合、出血量が少なく、飼い主が気付かないこともあります。

犬の生理中のケアについて

椅子の下からこちらの様子をうかがっているマルチーズ 犬のヒート中、室内で飼育しているとポタポタと血が落ちるのは気になると思います。

出血量にもよりますが、多い場合は、オムツやマナーパンツを使用するのも良いかもしれません。

しかし、普段オムツなどを履かないのに、ヒート中にいきなり履かせようとすると嫌がることもありますので、普段から服を着させるなどをして、慣れさせるのは一つです。

また、ヒート中は犬自身が精神的に不安定になっている事もあります。この時期には多くのストレスがかかるような事は控えた方が良いでしょう。

生理中の雌犬の飼い主が気を付けるべきこと

ヒート中は、先ほどもお話したように、オス犬を許容するための準備期間になります。

ですので、他の犬が多く集まるドッグランや公園に行くときは注意が必要です。

オス犬を過剰に興奮させてしまう事もありますし、お相手の犬が去勢していない場合は、タイミングによっては妊娠してしまうかもしれません。

他の犬が集まる場所に出かける時は、オムツやマナーパンツを履かせることで、ヒート中であることを他の犬の飼い主様に知らせるようにするのもいいかもしれません。

犬の生理と間違われやすい病気について

タオルケットにくるまっているビーグル 陰部から出血しているから、「生理(ヒート)」が来たと思っていたら、実はそれは病気だったってこともあります。

ヒートなのか、病気なのかを、見極めるポイントを病気の解説とともにお伝えします。

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症とは、子宮に膿が溜まる緊急疾患の一つです。本来、無菌の環境である子宮に外から細菌が入り込み、膿で子宮がパンパンになることもあります。

子宮蓄膿症には、開放型と閉鎖型があります。開放型とは、子宮内の膿が陰部から排泄される状態です。

一方、閉鎖型とは、子宮内の膿が陰部から排泄されず、子宮内でパンパンになってしまう状態です。

ヒートと間違えてしまうのは、開放型の子宮蓄膿症です。陰部から出てくるのは膿ですが、多くは血膿状のものが多いので、見た目だけでは区別が難しいこともあります。

ヒートと見分けるポイントとしては、時期と症状です。子宮蓄膿症は、発情期に起こる事は少なく、多くは発情休止期になることが多いです。

つまり、ヒートがきて、2~3か月後にまた出血が起こっていると要注意です。また、症状を伴っていることが多いこともポイントです。

子宮蓄膿症の症状とは、多飲多尿、元気・食欲の低下、嘔吐などがみられます。

子宮蓄膿症は、様子をみていると危険な状態になるかもしれない病気なので、「おやっ?」と思ったら、必ず動物病院に連れて行きましょう。

子宮内膜炎・膣炎

子宮内膜炎とは、子宮に外から細菌が感染して起こります。

全く症状を示さないことも多いですが、示す場合は、陰部から粘性のおりもの(膿状や血様など様々)が出たり、元気・食欲の消失が起こったり、発熱をしたりします。

膣炎は、膣に外から細菌が感染しておこります。症状は、全身症状を示すことは少なく、陰部から膿状や血様などのおりものが出ることが多いです。

このどちらも、犬の発情周期との関連はありません。

診断には症状、とくにおりものが出ていれば、おりものに細菌が含まれている事、そして、レントゲン検査やエコー検査を用いて行われます。

ヒートと見分ける事は、お家では難しいかもしれません。

膀胱炎・膀胱結石

メスの犬は、膣に尿道が開口しているため、陰部からおしっこも出てきます。

陰部から血が出ている場合、生殖器(子宮・膣)と膀胱のどちらに原因があるかは見分ける必要があります。

膀胱炎は、膀胱に外から細菌が感染して起こります。膀胱炎になると、血尿が見られたり、頻尿になったり、お水をよく飲むようになったりします。

膀胱結石は、膀胱内に結石ができてしまい、その石が膀胱粘膜を傷つける事で血尿が出ます。

膀胱結石があると、血尿が見られたり、頻尿になったり、排尿する時に痛みがあったりします。

膀胱炎や膀胱結石を診断するときに、まず有効なのは尿検査です。しかし、ヒート中に自然排尿で尿検査をすると、多くの場合、血液が混入してしまいます。

このような状況の時は、膀胱に針を刺して採尿する膀胱穿刺という方法を用いて、尿検査するのがお勧めされます。

この方法は、お家ではできないので、動物病院でしてもらうことになります。

この時、尿検査以外にも、レントゲン検査やエコー検査を合わせてする事で、総合的に判断していく事になると思います。

きちんとヒートと膀胱のトラブルを見極めるためには、動物病院での検査が必要になります。

まとめ

元気に草原を走るラブラドールレトリーバー 犬のヒートの特徴を理解して頂けたでしょうか?人との違いを理解してもらうだけで、何に注意が必要か分かってもらえたと思います。

ヒートとは、生理的な現象の一つです。突然ヒートが始まって驚くこともあるかもしれないですが、冷静に受け止めましょう。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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