2017年6月13日
【獣医師監修】子犬の時からはじめたい歯磨きトレーニング
監修にご協力いただきました!
櫻井洋平先生
BiBi犬猫病院 院長
2008年3月 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2008年4月〜2013年11月 横浜市内動物病院勤務
2011年4月〜2015年3月 麻布大学附属動物病院 腎泌尿器科・外科 専科研修医として研修
2013年12月〜2015年5月 千葉県内動物病院勤務
2015年7月〜2016年2月 宮城県内動物病院勤務
2016年11月〜 仙台市にBiBi犬猫病院を開院
初めて子犬を迎える方のなかには「犬に歯磨き?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は犬にとって歯磨きはとても重要で、お口の中が汚れることで様々な病気を引き起こすことがあります。
初めて子犬を迎える飼い主さんにとっては、どうやって歯磨きをするの?頻度はどのくらい?嫌がらず歯磨きをするには?などなど悩みも多いのではないでしょうか。
今回は、初心者でも簡単にできる犬の歯磨き方法や、歯磨きを嫌がる子におすすめのグッズなども併せてご紹介します。
もくじ [非表示]
犬の歯磨きはなぜ必要?
犬の歯は全部で42本あります。人間の歯が全部で32本なので、顎の大きさを考えるとかなり多いですよね。でも人間の歯と違って、犬の歯は虫歯になりにくい性質を持っています。犬の歯が虫歯になるのはわずか5~6%です。
その理由は、以下などが挙げられます。
- ・犬の唾液はph8.0以上でアルカリ性であること(人間は6.5くらいです)
- ・犬の食事には糖質が少なく、消化酵素(アミラーゼ)が唾液中に含まれていない
- ・咬合面がある歯が少ない
- ・人間と違って咀嚼する時間が短いため、食べ物が口の中にたまってる時間が少ない
では、なぜ犬が歯磨きをするのか?というと「歯周病の予防」のためなんです。
犬が歯周病にかかる割合は3歳以上の犬でなんと80%との高く、ほとんどの犬が歯周病の問題を抱えているといえます。
なぜそんなに多いのでしょうか?隠れ歯周病の原因には、見ためだけでは分かりにくく、犬がほとんど異変を示さないという点にあります。
飼い主さんが気づかないうちに進行し、気づいた頃にはすでに歯周病にかかってしまっていることがほとんどなのです。
犬の歯周病とは?
歯周病とは「歯肉炎」と「歯周炎」の2つを合わせた病名のことです。まず歯垢に潜む細菌が毒素を作り、歯の周りの「歯周組織」の中で一番外側にある歯肉が炎症を起こします。この段階を軽度の「歯肉炎」と呼び、この段階でしっかりとケアすれば健康な状態に戻すことができます。
しかし軽度の歯肉炎を放っておくと、本来ピンク色の歯肉が赤く腫れ、わずかな出血が見られるようになり口臭や食欲低下などもみられるようになります。
犬の歯垢は3~5日で歯石化し、歯石化すると歯の表面が凹凸になってさらに歯垢がつきやすくなります。(そのスピードは人間の5倍といわれています)
これを放っておくと歯垢の中の細菌がどんどん繁殖し、歯肉炎から「歯周炎」になってしまいます。
病状が進行すると最終的には歯がグラグラして抜け落ちるなどの症状や、細菌が血流にのって心臓や腎臓、肝臓にまでまわり内臓疾患を引き起こすことがあります。
歯周病になりやすい犬種は要注意!
- ・歯が密生していて歯石がたまりやすい小型犬
- ・短頭種(フレンチブルドック、パグ、シーズー、チャウチャウなど)のように頭蓋が広く鼻口部の短い犬種
- ・シニア犬
- ・免疫力が低下した犬
- ・口腔ケアをしていない犬
歯垢や歯石を除去する場合、麻酔をかけて処置をすることが多く、犬に負担がかかることが考えられます。
歯周病を予防するためには、まずしっかりと歯磨きをして、「歯垢」や「歯石」をつけないようにすることが重要です。
歯周病の主な症状
- ・歯茎が赤い
- ・前より口臭がひどくなった(腐敗臭)
- ・歯茎から出血している
- ・歯がグラグラする
- ・歯が長くなったように見える
- ・食べるのが以前より遅くなった
- ・涙、くしゃみ、鼻水がよく出る
- ・頭をよく振る
- ・口を気にして触っている
このような症状がみられる場合は、獣医師へ早めに相談をしましょう。
子犬の歯磨きはいつから?
犬の乳歯は、生後4ヶ月くらいから抜けはじめ7ヶ月頃にはすべて永久歯に生え変わります。永久歯が生え揃ってから歯磨きを始めればOKと言われていますが、できるだけ早めに「歯ブラシに慣れさせる」ようにしましょう。
子犬のうちは警戒心が比較的少ないので、遊びやおやつを上手に取り入れて歯ブラシに慣れさせておくことがポイントです。
子犬の歯磨きの頻度
できれば毎日行うことがベストですが、毎日しっかりと磨くことは結構大変です。食べかすが歯垢や歯石になるのは2~5日ですので、週2~3回磨いてあげられれば十分です。犬の歯磨きは、回数より質が大切です。歯磨きをするときは、丁寧に食べかすを除去してあげましょう。
ウェットタイプのドッグフードは歯に溜まりやすく、落ちにくいので虫歯が気になる方は、カリカリのドライフードがおすすめです。
固いものを噛むことで、溜まった食べかすも落としてくれますし歯磨きガムなども有効です。
子犬を歯磨きに慣れさせる方法
いきなり歯ブラシを入れようとしても、たいていの犬は嫌がります。そんな場合は、どうすればよいのでしょうか?口の中に触れる習慣をつける
なぜ歯ブラシを嫌がるのかというと、犬のマズル(口の上部の部分)はとっても敏感な場所なのです。だから、ほとんどの犬が口の周りを触れられるのをとても嫌がります。まずは、スキンシップをはかるときに、できるだけ手や指先で口の周りを触れる機会を増やすことから始めましょう。
その方法は次の通りです。
①顔や口元をやさしく触り、できたらおやつを与えます。触れる時間を少しずつ長くして慣らしていきましょう。
②マズルを触られても平気になったら、次は口唇をめくったり、歯を触ったりしてみましょう。できたらおやつを与えることをお忘れなく。段々と慣れてきますので、大きく奥歯が見えるくらいめくってみましょう。
③口唇をめくることに慣れてきたら奥の方に指を入れて、奥歯に触られることにも慣らしましょう。ご褒美を効果的に使い「口を触られるといいことがある!」と教えてあげます。
④口を触られることに慣れたら、今度は歯ブラシを口に入れる練習をしましょう。このときも、いきなり口に入れるのではなく一瞬だけ歯に当てます。
そして褒美を与えます。これを繰り返して少しずつ時間を延ばすようにしていきます。
②マズルを触られても平気になったら、次は口唇をめくったり、歯を触ったりしてみましょう。できたらおやつを与えることをお忘れなく。段々と慣れてきますので、大きく奥歯が見えるくらいめくってみましょう。
③口唇をめくることに慣れてきたら奥の方に指を入れて、奥歯に触られることにも慣らしましょう。ご褒美を効果的に使い「口を触られるといいことがある!」と教えてあげます。
④口を触られることに慣れたら、今度は歯ブラシを口に入れる練習をしましょう。このときも、いきなり口に入れるのではなく一瞬だけ歯に当てます。
そして褒美を与えます。これを繰り返して少しずつ時間を延ばすようにしていきます。
初めの段階で、嫌がっているのにしつこく触ったり、押さえつけてしまうと次からマズルを触られるだけでも暴れるようになってしまうことがあります。
短時間、回数を重ねて慣らしていくのがポイントです。すぐに慣れる子もいれば、時間がかかる子もいますので、気長に根気強く続けていきましょう。
口に触れさせてくれない時の方法
小さめのおやつを手で握り、犬の前に差し出します。おやつに夢中になっている間に自然と口と手が触れるようになります。これを繰り返しているうちに慣れてくる場合があります。慣れてきたらおやつ無しで練習をしてみましょう。
犬が歯磨きを嫌がる時に考えられる理由と対策
犬が歯磨きを嫌がる理由はいくつか考えられます。歯磨きが怖い
犬は「歯磨き」の意味が理解できません。そのような状況で口においしくない異物が入ってくることは犬にとってストレスとなります。無理に歯磨きをしようとすると噛まれる恐れもありますので、無理強いは禁物です。まずは歯磨きシートなどを使い、慣れてきたら歯ブラシを使うようにしましょう。
体勢がイヤ
犬は正面に身構えられると緊張します。また仰向けになることにも不安を感じますので、小型犬であれば膝にのせ、大型犬であれば横に座って後ろから手を回すような格好で磨いてあげましょう。
楽しくない
歯磨きは人間にとってもあまり楽しいものではありませんよね。犬にも同じことがいえます。歯磨きの間はできるだけやさしい声で声掛けをし、終わったらたくさん褒めてあげることで歯磨きは楽しいというイメージを作ってあげます。
口の中に傷がある
犬は固いものや尖がったものを食べると、歯茎がすぐに傷つきます。その傷から炎症が広がり歯肉炎が発生します。最近、急に口を触られるのを嫌がるようになった、ご飯を食べるときどうも様子がおかしいという場合は必ず獣医師へ相談しましょう。
おすすめの歯磨きグッズ
犬の歯磨きグッズには「犬用歯ブラシ」のほかにも、「歯磨き効果のあるおもちゃ」「歯磨きシート」「歯磨きガム」「歯石取り」などたくさんあります。それぞれがどんなものなのかをご紹介します。
犬用歯ブラシ
犬用の歯ブラシといってもいくつか種類があります。360度型の歯ブラシ
初心者の方や子犬、小型犬におすすです。角度を気にせずに磨け、柄も長いので奥歯まで磨くことができます。指サック型歯ブラシ
全犬種に向いています。歯ブラシは嫌いだけど、飼い主さんが指で歯を触ることはOKという犬におすすめです。シリコン製で指にはめて使うタイプで、歯茎もマッサージすることができます。
柄のついたブラシ
こちらは人間用の歯ブラシと同じ見た目です。中型・大型犬に向いています。波型スポンジブラシ
高齢犬や口の中を触られるのを極端に嫌う犬におすすめ。歯磨き効果のあるおもちゃ
嚙みながら歯垢や歯石の付着を予防するデンタルトイは子犬には最適です。プラスチック製、ロープ製、布製、木製など色々な素材があるので個体の大きさなどに合わせて選ぶことができます。
歯磨きシート
指にクルリと巻き付けて使うタイプのもので、歯ブラシの前段階で使うことが多いです。歯ブラシは苦手だけど、飼い主さんの手ならOKという犬にもおすすめです。
歯磨きシートはドライのものとウェットティッシュのようなものと2種類ありますが、どちらも役割は同じです。
歯磨きガム
歯磨きは週に2~3回という場合は、合間に歯磨きガムを使うのもおすすめです。ただし歯磨きガムを与える場合の注意点として、骨ガムやひづめは歯が欠けてしまう恐れがありますので注意しましょう。
また個体に合った適正サイズを選ばないと、丸飲みして消化管に傷をつけてしまう可能性があります。
歯磨き粉
犬用の歯磨き粉は、うがいをしなくてもOKなものがメインです。バニラ、チキンなどフレーバーの種類が豊富なので、おやつと勘違いして喜んで舐めてくれる子も多いようです。
まとめ
子犬の歯磨きについてまとめてみましたがいかがでしたか?犬にとって歯磨きは健康を守るため、長生きするためにもとても大切なんですね。歯磨きを始めるのは早い方が良いとされていますので、子犬のうちから遊びの一環として歯ブラシに慣れることから始めましょう。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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