2017年6月13日

【獣医師監修】犬の元気がないときの理由や考えられる病気とは

監修にご協力いただきました!

2009年 日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業、その後札幌市内の動物病院を経て

2015年 アイリス犬猫病院開院
[日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属]

いつも元気な愛犬が、急に元気がなくなったら…飼い主としては心配ですよね。

食欲がないわけでも、下痢や嘔吐をするわけでもないけど、いつもと様子が違うという場合、そこには何か原因があるかもしれません。

そんな犬からのSOSを感じたら早期に対処しましょう。原因が体調不良の場合や、それ以外にもストレスなどが原因となることもあるようです。

今回は「犬の元気がないときの理由」と症状から考えられる病気についてご紹介します。

「元気がないかも?」まずは犬をよく観察しましょう

ゴールデンレトリーバーの顔を覗き込む女性
犬の元気がなくなったのは、いつ頃からでしょうか?急に暑くなったり湿気の多い時期が続いたり。

極端な気候の変化や、何かストレスの原因となるようなことはありませんでしたか?

人間がストレスを感じるのと同じように、犬もさまざまな場面でストレスを感じます。

また、病気が原因となっている場合もありますので、歩き方に変化がないか、体を触ってみて痛がる部分がないか、口、目、耳なども含めて全身をよくチェックしてみましょう。

犬の元気がない時に考えられる原因

窓際で伏せているビーグル

気候によるもの

犬は寒さには強いですが、暑さにはとても弱い生き物です。

暑い日が続くと人間も体調を崩しやすくなるように、犬も「夏バテ」しやすくなります。

犬は人間のような汗腺がないため体温を下げるのが得意ではありません。

口を開けて外気と体内の空気を交換することで温度を下げようとしますが、湿度の高い日本では効率よく体温を下げられないのが「夏バテ」の原因の一つと言われています。

日本犬やシベリアンハスキー、ゴールデンレトリーバー、ポメラニアン、マルチーズ、ポメラニアンなどのダブルコートの犬種は寒さには強いですが、暑さには特に弱いと言われています。

またパグ、フレンチブルドック、ボストンテリア、ブルドックなどの短頭種の犬も、軟口蓋過長症などのために呼吸がしずらく体温を下げるのが苦手なので夏バテを起こしやすい犬種ですので、特に注意が必要です。

夏バテの対処法として、散歩は日が沈んでから涼しくなった時間帯にする、普段居る場所を見直す、室温の設定を徹底する、こまめに水分補給をする、ブラッシングをするなどがあります。

脱水症状や下痢、嘔吐などの症状がある場合は、熱中症の危険性もあるため早急に獣医師に診てもらいましょう。

怪我によるもの

犬は、病気やケガで弱っている姿を外敵に見せない習性を持っています。痛いからといって飼い主へ主張するようなことはありません。

飼い主が抱っこをしたり、触って「キャン」と鳴いて初めて気づくこともあります。

毛で覆われているため分かりにくいですが、患部が赤くなって腫れていたり、歩き方がおかしかったり、いつも同じ場所を気にして舐めているなどの行動が見られる場合は、怪我の可能性が考えられます。

数日様子をみて、改善されないようであれば獣医師に診てもらうようにしましょう。

ストレスによるもの

犬は人間と違って言葉を話すことができないため、自分の欲求を飼い主へ伝えることができません。

よく観察してみると、飼い主へストレスサインを出すことがありますので、見逃さないようにしましょう。

犬がストレスを溜める原因としては、飼い主とのコミュニケーション不足、子犬を新しく迎えた、引っ越しをした、酷く怒られた、環境が落ち着かない、お散歩が足りないなどが挙げられます。

心当たりがある場合は、ストレスによる可能性が高いでしょう。

ストレスの原因となるものを改善したり、思いっきり遊んであげる、いつもと違ったコースを長めにお散歩するなどして、ストレスを解消してあげましょう。

老化によるもの

犬は、生後7年目を迎えたころから(大型犬はもう少し早いようです)シニア期に突入します。

シニア期に入ると、1日のほとんどを寝て過ごすようなことも珍しくありません。これは「老化」によるものと考えてもいいかもしれません。

犬も年をとることで体が疲れやすくなったり、内臓の機能が低下してくるためです。

病気ではありませんので、無理に起こして遊んだり、お散歩へ連れて行ったりはせずに犬のペースに合わせてあげましょう。

このような症状が出てきたら、お散歩のコースや、お散歩時間を見直し、ドックフードを高齢犬用のものに変えるなどしましょう。

老化は個体によっても差がありますので、犬に合った対処をしてあげるとよいでしょう。

病気の症状によるもの

病気に関しても、犬は症状を飼い主さんへ伝えることができません。「元気がない」=病気のサインになることがあります。

病気は、比較的軽いものから、手術が必要なくらい重篤なものまでいろいろと考えられます。

「背中を丸めてじっとしている」「食欲がない」「お散歩へ行きたがらない」などがみられるようであれば、できるだけ早く獣医師に診てもらいましょう。


健康状態を見分ける9つの方法

ご飯を食べているダルメシアン 「元気がない」という漠然としたものでは、何が理由なのか判断がつかないためもっと詳細を観察してみましょう。

その方法として、まずはこの9つに該当するものがないかをチェックしてみましょう。

1.食欲

食欲がないからと言って、一概に病気だとは限りません。健康な犬であれば、1~2日何も食べなくても問題はありません。

しかし、食べない状態が3日以上続いていたり、いつもは大好きなおやつに、まったく興味を示さないようであれば注意が必要です。

食欲不振はストレスが影響している場合や、主に消化器官の病気が考えられます。

また食べる速度が遅くなっている場合や、食べ方に変化がみられる場合は、歯周病や口内の疾患である可能性も考えられます。

2.排泄物

お散歩のときに、便や尿の状態を確認しましょう。

尿が赤くなったり、濃い黄色になったりしていませんか?赤い場合は血尿の可能性があり、尿毒症や腎臓、膀胱、尿道炎が疑われます。

濃い黄色い場合は、肝臓障害の可能性があります。

また、1日に何度も下痢を繰り返し軟便や水様便が出たり、嘔吐も伴う場合は、夏バテによる胃腸炎、気候の急激な変化による体調不良、ストレスが疑われます。

3.目元

まずは指で犬のまぶたを少しひいて、白目の色を観察します。

白目や瞼の裏が赤くなっていませんか?もし赤くなっている場合は、結膜炎、緑内障、角膜炎などの可能性があります。

目ヤニが出ている場合は、その色をチェックしましょう。白や黒、グレーの目ヤニは特に問題はありませんが、緑や黄色の目ヤニは要注意です。緑や黄色の

目ヤニは、菌が繁殖して膿になっていると考えられます。この場合、結膜炎や緑内障などの、目の病気が疑われますので早急に受診しましょう。

4.皮膚(傷、湿疹、腫瘍はないか)

犬の頭から尻尾の先までの皮膚をよく観察します。

チェックするポイントは、毛づやがあるか、毛がパサついていないか、フケや毛が抜けている部分はないか、体臭は強くないかなどを観察しましょう。

次に、被毛をかき分けて皮膚の状態を調べます。

赤くなっていたりカサブタはないか、皮膚の一部が黒く変色したり、黒ゴマのようなものが付着していないか、皮膚にしこりなどはないか、触って痛がるところはないかなど、全身をくまなく観察します。

これらの症状が見られる場合、ノミ、ダニ、外傷、アレルギー性皮膚炎、細菌、真菌などの感染、免疫異常、ホルモン分泌異常、腫瘍などが考えられます。

5.口の中

やさしく抱っこして唇をそっとめくり上げます。まずは歯茎の色を確認します。

健康な犬の歯茎はピンク色です。白や青っぽい場合は貧血が考えられます。赤く腫れてしている場合は、歯周病や腫瘍などが疑われます。

次に歯を観察します。歯が茶色に変色していないか、歯石が溜まっていないかを確認します。

最後に口を大きく開いて、粘膜に傷や突起(腫瘍)などがないかをチェックしましょう。

6.肛門周り(寄生虫やただれがないか)

健康な犬の肛門はきれいに引きしまっていて、分泌物などもありません。肛門の周りが赤くただれていたり、お尻が腫れている場合は、肛門嚢炎や肛門周囲腺炎の可能性があります。

また犬が頻繁にお尻を床にこすりつけるような仕草をしていたら、寄生虫がいる可能性があります。

肛門をよくみると、細くて白い成虫が出ている場合もあります。何か異常があれば、獣医師に診てもらいましょう。

7.耳の中

耳の中の皮膚が炎症を起こして赤くなっていたり、カサカサしていたり、脱毛、かさぶた、ひっかき傷がないかを調べます。

ほかにも耳の中の臭いが強い、湿った耳垢が溜まっている、耳を痒がる、頭をよく振るなどの症状がないかをチェックします。

耳の中にライトを当てると奥まで見やすくなります。

ただし、犬と人間の耳の構造は違いますので垢が溜まっているからといって綿棒などを使って取るのは控えましょう。

必ず、獣医師に診てもらって、指示に従いましょう。

8.体温

下腹部の比較的被毛の薄い部分に手をあてて体温を確かめます。犬の平熱は、人間より少し高い38.0~39.0℃くらいです。

それよりも高い、あるいは低いと感じるようであれば獣医師に診てもらいましょう。

夏場で震えも伴うようであれば、熱中症や夏バテの可能性が高いです。

いざという時に備えて、日頃から体温チェックをするように心がけましょう。

9.体重

ペット専用、もしくはベビー用の体重計で量ります。

お持ちでない場合は、飼い主さんが犬を抱っこした状態で測定し、飼い主さんの体重を差し引いた体重を算出します。

大きな変化はないかをチェックします。こちらも日頃から測定しておけば、いざというときに分かりやすいですね。

一つでも該当するものがあったり、不安に感じるようであれば獣医師に相談することをおすすめします。

まとめ

コーギーが竹の玩具を咥えて戻ってきています 犬の健康を管理してあげられるのは飼い主です。こまめに健康チェックをしてあげることは、とても大切です。

発熱や嘔吐など目立った不調が伴わない場合は、病院へ行きづらいという方もいるかと思いますが、「元気がない」というのも立派な通院の理由になります。

また、病気のサインである場合もありますので、躊躇せずに獣医師に診てもらいましょう。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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