2017年6月13日
【獣医師監修】愛犬を熱中症から守るには~症状・原因・対策~
監修にご協力いただきました!
櫻井洋平先生
BiBi犬猫病院 院長
2008年3月 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2008年4月〜2013年11月 横浜市内動物病院勤務
2011年4月〜2015年3月 麻布大学附属動物病院 腎泌尿器科・外科 専科研修医として研修
2013年12月〜2015年5月 千葉県内動物病院勤務
2015年7月〜2016年2月 宮城県内動物病院勤務
2016年11月〜 仙台市にBiBi犬猫病院を開院
熱中症(または日射病、熱射病)は夏の暑い時期に増える病気です。
犬は発汗による体温調節ができないため、飼い主の皆さんがしっかりと管理する必要があります。
例えば、いつも通りの散歩コースを歩いているだけでも、条件によっては突然体調を崩してしまうケースもあるのです。
もくじ [非表示]
- 1 犬の熱中症の主な症状
- 1.1 熱中症が疑わしい症状
- 1.2 熱中症の初期症状【危険度★★★☆☆】
- 1.3 熱中症が重症化した時の症状【危険度★★★★★】
- 2 犬の熱中症の応急処置はとにかく迅速に
- 2.1 すぐに涼しい場所へ移動
- 2.2 可能な限り身体を冷やす
- 2.3 応急処置後の素人判断に注意!
- 2.4 意識がない場合は病院と連絡をとりながら…
- 2.5 飼い主がパニックにならないよう注意!
- 3 犬の熱中症につながる3つの原因
- 3.1 ①熱中症になりやすい「環境」
- 3.2 ②熱中症になりやすい「犬種」
- 3.3 ③その他、熱中症につながりやすい要因(既往歴や体型、性格など)
- 4 犬を熱中症から守る予防法
- 4.1 屋内のお留守番は場所に気を付ける!
- 4.2 屋外のお留守番は可能な限り避ける!
- 5 まとめ
犬の熱中症の主な症状
熱中症が疑わしい症状
- 浅くペースの速い呼吸(パンティング)
- 粘膜部分の充血
- 足取りがフラつく
- 大量のよだれ
- 体のふるえ
- 嘔吐
- 下痢
- 血尿、血便
- 痙攣(けいれん)
人間が暑さを感じた際は発汗により体温調節をするのに対し、犬は口呼吸(パンティング)で体内の熱を逃がそうとします。
それだけでは放熱が追い付かないほど体内に熱がたまってしまうことで、内蔵の動きが鈍くなるなどの障害を引き起こした状態を熱中症といいます。
次に、症状の段階に分けて細かくご説明していきます。
熱中症の初期症状【危険度★★★☆☆】
- 浅くペースの速い呼吸(パンティング)
- 粘膜部分の充血
- 足取りがフラつく
- 大量のよだれ
軽く運動をしたり高温多湿な環境にいたりすれば、犬は体温調節のために「ハッハッ」と口呼吸(パンティング)を始めます。
パンティングは日常的にみられる行動なので、熱中症か否かの判断は難しいもの。
健康体の場合は、パンティングで逃がしきれなかった熱を処理するためにお水を飲んだり、ひんやり冷えた場所に体を寄せたりといった行動をすることで、パンティングは徐々に落ち着いていきます。
しかし、呼吸の荒さが落ち着かない時は熱中症を疑いましょう。
熱中症は重症化すると死に至るケースもあるので、初期症状だからと軽視せず、すぐに動物病院に行くことをおすすめします。
上記のような初期症状を見逃して重症化してしまった場合、次のような症状が現れ始めます。
熱中症が重症化した時の症状【危険度★★★★★】
- 体のふるえ
- 嘔吐
- 下痢
- 血尿、血便
- 痙攣(けいれん)
最初に触れたように、高体温はさまざまな臓器の働きに障害を引き起こします。
熱中症により腎臓に負担がかかり、「尿の出が悪くなる」「血尿が出る」といった症状が現れている場合は、非常に危険な段階にはいっているといえます。
この段階までくると死亡率も高くなるため、迷わず動物病院へ行くようにして下さい。
連れて行くまでの道中も、出来る限り身体を冷やす工夫をするようにしましょう。
犬の熱中症の応急処置はとにかく迅速に
熱中症は初期症状の段階で迅速に、かつ適切な処置をする必要があります。
すぐに涼しい場所へ移動
屋外で症状があらわれた場合は、速やかに日陰へ移動します。地面が熱くなっている状態であれば、移動の最中に症状を悪化させてしまう可能性もあるので、あまり歩かせないよう注意してあげて下さい。また、屋外や日陰であっても換気が十分でなければ回復し辛いので、必ず風通しの良い場所を確保し、すぐに水分補給をしてあげましょう。
人間と同様、犬の熱中症にもスポーツドリンクは有効です。
スポーツドリンクと水を1:1の割合で混ぜ飲ませてあげて下さい。(※)
(※)…スポーツドリンクには糖分も多く含まれているため、普段は与えないでください)
可能な限り身体を冷やす
水分補給と同時に、身体の表面を冷やして体温を調節します。お風呂場や水場が近くにある時は身体全体に水をかける、またはワキ、頭、首、足の付け根などに、冷水で濡らしたタオルをあてるといった方法がオススメです。
この時、とにかくスピーディーに体温を下げてあげることが重要となります。
逆に体温を下げ過ぎても悪影響となるので、身体を冷やす際はこまめに体温測定をしてください。
体温を40~39度ほどまで下げられたら、その時点で近くの動物病院へ連れて行きましょう。
応急処置後の素人判断に注意!
身体を冷やすことで一時的に意識がしっかりし、すっかり熱中症も収まったように錯覚するケースもありますが油断は禁物です。どんなに元気を取り戻しても、必ず動物病院の診察は受けてください。
意識がない場合は病院と連絡をとりながら…
呼びかけてもまったく反応しない、意識がない、という状態まで重症化している時はいかに早く動物病院での診察を受けられるかがカギとなります。連れて行く道中で身体を冷やし、常に搬送先の動物病院と連絡をとり、判断を仰げる状態にしておくようにしましょう。
飼い主がパニックにならないよう注意!
愛犬が弱っている様を目の間にしたら、ほとんどの方が狼狽えてしまうと思いますが、逐一犬の容態や様子の変化を伝えるためには、飼い主が状況を正確に把握しておく必要があります。心配で焦る気持ちがあっても、冷静に対処できるよう意識しましょう。
ご自身だけでなく、近くにご家族などがいらっしゃるようでしたら、片方は移動または移動手段の確保、片方は犬の様子を見る人と役割分担しておくと心の余裕ができますよ。
犬の熱中症につながる3つの原因
①熱中症になりやすい「環境」
午後など熱い時間帯での散歩
真夏の場合、アスファルトは表面が50度近くまで熱くなることがあります。四足で歩く犬は人間よりも地面に近いため、照り返しの放射熱も受けやすいので注意が必要です。
なかには陽が落ちた夜の散歩だったにも関わらず、地面がまだ熱かったために熱中症になったケースもあります。
靴を履いたり帽子を被ったりしている人間は暑さに鈍感になっていることもあるので、決して自分の体感で判断しないように気をつけましょう。
車内での留守番
車内での留守番は熱中症の原因として多く挙がる場所です。ドライブ中にコンビニなどに入るためのたった数分の留守番とはいえど、エアコンをかけていなければ車内はすぐに熱がこもります。
「たった数分」という感覚が熱中症を招くわけです。
犬が稀なお出かけに興奮気味なようであれば、体温もすぐに上がりやすくなってしまいます。
空調が万全であったとしても、愛犬が入っているケージの中は温度が下がりにくかったりもするため、くれぐれも車内に犬だけ残すようなことがないように気をつけましょう。
高温多湿な室内での留守番
「直接日に当たらない室内であれば大丈夫だろう」と、換気用の窓を少し開けるだけで外出する方もいるようですが、室内といっても熱中症のリスクはあります。外気温や日当たりの強さによっては室内も蒸し暑くなるので、エアコンは必ずかけた方がよいでしょう。
また、家を長時間空ける場合には、水分もしっかり確保してあげましょう。
器の場合、元気のいい子なら動いた時に水をこぼしてしまう可能性もあるので、心配なら容器にも気を付けてあげるといいかもしれません。
また、ケージの中ではトイレをしないなど、留守番中に排出をスムーズに出来ない癖がある子も注意してあげてください。
排尿の我慢も熱中症のリスクを高めてしまいます。
炎天下の屋外で遊ばせる
海や川など、水場が多いところなら大丈夫かと思うかも知れませんが、直射日光があたる環境であれば熱中症にかかる可能性は十分にあります。また、砂浜や岩場も熱くなっているので、靴を履かずに肉球で直に触れる犬には辛い環境です。犬自身も屋外で遊べることに興奮してはしゃぎすぎることがあるので、アウトドアの際は常に日陰を確保し定期的に休ませる、涼ませるといった工夫が必要です。
②熱中症になりやすい「犬種」
北方出身の犬種
サモエド、セントバーナード、シベリアンハスキーといった北方出身の犬は被毛が厚く、体内の熱を逃がすのが苦手なので要注意です。大型の犬種
小型犬に比べてゴールデンレトリーバーなどの大型犬は、体温を下げにくいので熱中症にかかりやすい傾向にあります。大型犬の場合は体力があるので、普段と同じ感覚で距離を歩かせてしまうというというのもひとつの要因です。
こまめな水分補給を心掛け、呼吸が荒いようであれば地面が涼しいところでしっかり休ませ、散歩も早めに切り上げて下さい。
犬の性格によっては「もっと歩きたい!」と主張するかもしれませんが、子どもの体調管理と一緒で、第三者の目線で状況を判断してあげることも大切です。
口吻(マズル)が短い犬種
パグやペキニーズのようにマズルが短い、つまり鼻の低い犬種は、息の通り道が他の犬種より狭くなっています。犬はパンティング(口呼吸)で口鼻に息を通し、粘膜の水分を蒸発させることで体温を下げるため、鼻が低い犬種は熱を逃がすのが少し苦手なのです。
他のお家の犬が平気そうでも、こうした犬種には辛い環境だということも大いにあるので、常に呼吸の状態などを観察してあげるようにして下さい。
③その他、熱中症につながりやすい要因(既往歴や体型、性格など)
肥満体型
身体に脂肪がたくさんついていると体内の熱を逃がしにくくなります。また、肥満は心臓に負担をかけるため循環機能が正常に働かない可能性もあり、体温調節には最新の注意を払う必要があります。興奮しやすい性格
興奮しやすい性格の場合、他の犬より体温が急激に上昇しやすくなります。はしゃぎすぎている時はクールダウンさせるなど、飼い主の方が上手にコントロールすることが大切です。子犬、老犬
子犬期は各機能が未発達なため、体温調節が難しい状態です。また、老犬の場合は内臓機能の衰えにより昔より順応が下手になっているケースもあります。成犬の頃と同じ感覚で接しないよう注意しましょう。
他の病気で療養中
心臓や呼吸器関連の病気を持っている場合は、熱中症にかかりやすい傾向があるため要注意です。循環機能、呼吸機能が正常に働かないことで体温調節が難しくなります。
犬を熱中症から守る予防法
屋内のお留守番は場所に気を付ける!
カーテンは必ず閉め、風の通り道を確保するようにしましょう。温度だけでなく、湿度の高さも体調を崩す原因となるので、エアコンは除湿に設定することをおすすめします。
また、ケージを置く場所にも注意が必要です。せっかく部屋を良い環境にしても、窓際にいれば外気の熱の影響を受けてしまいます。
意外と見落としがちなのが家電で、部屋を冷やすために稼働させた家電が近くにあることによって、モーターの熱にさらされてしまうこともあります。
屋外のお留守番は可能な限り避ける!
外に犬小屋を置いて飼っているご家庭もあるかと思いますが、長時間お留守番をさせる場合は出来る限り室内にいれてあげるようにしましょう。玄関にケージを置いてあげるだけでも随分と違います。
先ほども触れたように、玄関ドアに近すぎると外気の熱にあたってしまうので、陰になるよう工夫してあげて下さい。
どうしても中に入れられない場合は十分な日除けを設置し、水分補給にも気を付けてあげてください。
暑くなると犬によっては穴を掘ってその中に入り、身体を冷やそうとします。
もし犬小屋近くに穴をたくさん掘っているようであれば、それは「暑くて辛い!」というサインかもしれません。
まとめ
「いつも一緒に生活しているから、自分が暑くなければ愛犬もきっと大丈夫」「すこし呼吸が荒いけど、ゆっくり休ませればそのうちよくなるよね?」
熱中症の場合、こうした素人判断をした結果、愛犬の症状がどんどん悪化してしまうケースは非常に多いものです。
“少しいつもと違うかも?”は、十分、動物病院に行く理由になると思っておきましょう。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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