2017年6月30日
【獣医師監修】犬の外耳炎は気づきにくい?飼い主が注意すべきこと
監修にご協力いただきました!
中村匡佑先生
アイリス犬猫病院 院長
2009年 日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業、その後札幌市内の動物病院を経て
2015年 アイリス犬猫病院開院
[日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属]
「愛犬が耳や首を頻繁にかくけど、これって何か意味があるの?」と思っている飼い主のみなさん。
それはただの痒みでなく、耳の病気のサインかもしれません。特に耳の毛が長い犬や、垂れ耳の犬は耳の通気性が悪いので注意が必要です。
普段あまり気にすることがないかもしれませんが、ぜひ一度、愛犬の耳の状態をチェックしてみてください。
もくじ [非表示]
犬の外耳炎の症状って?
初期症状
・しきりに首をかく
犬が後ろ足でしきりに首を掻いている場合、耳の痒みを感じている可能性があります。犬は耳をかいているつもりかもしれませんが、ピンポイントで耳をかくことが難しいようで、首をかいているように見えます。
飼い主には「首が痒いのか」と思われ、耳の異常に気づかれないケースがあります。
・頭をふる
足で耳をかくほかにも、耳の中の痒みや痛みによって頭をふる場合もあります。これはシャンプーをした後の、ブルブルと頭を振る行動と同じです。大型犬の場合、頭を振り過ぎることで耳の軟骨の血管が切れ別の病気を招くことにもなりますので、しきりに頭をふっているようであれば獣医師へ相談しましょう。
・床や壁に頭をこすりつける
耳の中の痒みや傷みから、床や壁に頭をこすりつける場合もあります。日常的な行動に見えるかもしれませんが、犬からのサインでもありますので見逃さないようにしましょう。
さらに進行すると
・耳だれが出る
健康な犬の耳垢は黄色っぽく、臭いやベタつきもなくポロポロとしています。外耳炎が進行すると、ドロッと膿のような耳だれが出るようになります。・耳の中から出血
耳の中から出血することもあります。耳の中に、できものができている場合、痒みによって足の爪で掻きこわしてしまったなどの原因が考えられます。・臭いがある耳垢がたまる
細菌や真菌が繁殖することで、臭いが発生し粘り気のある耳垢が溜まります。・外耳道の皮膚が厚くなる
耳介から鼓膜に繋がる道を「外耳道」と呼びます。炎症を繰り返すことで皮膚が徐々に厚くなり、外耳道が狭くなります。最悪の場合、塞いでしまうこともあります。・痛みが伴い、頭部を触られるのを嫌がる
外耳炎が、さらに悪化すると痛みが伴います。そうなると、ほとんどの犬は飼い主に頭部や耳を触られるのを嫌がるようになります。犬の外耳炎の原因とは
外耳炎は、なりやすい犬種以外にも、気候や寄生虫、アレルギー、細菌や真菌など、さまざまな原因により発症します。要因となるもの
①犬種
垂れ耳…ビーグル、ペキニーズ、ダックスフンドなど耳が垂れ下がっていることで通気性が悪くなり、外耳炎になりやすい傾向にあります。耳の中の被毛が多い…プードル、キャバリア、シュナウザー、シーズー、アメリカン・コッカ―・スパニエルなどは耳の中に毛が生えているため、お手入れをしっかりしないとなりやすい犬種です。
短頭種…パグ、ブルドッグ、フレンチブルドッグなどの短頭種はシワが多く、耳垢が溜まりやすいので細菌が繁殖しやすい傾向にあります。
耳道が狭い…チワワ、マルチーズ、ポメラニアンなどの小型犬種は耳道が狭いので発症しやすくなります。
体質…ジャーマンシェパード、ウェスティなどは、アクアポリンが分布され、脂漏性の犬種は耳の中が湿っていることが多いため罹りやすくなります。
耳の中の構造や、体質によっても外耳炎に罹りやすくなるということも覚えておきましょう。
②湿気
ヨーロッパや、アメリカの犬種にとって、高温多湿の日本は耳道内の温度も高温になるため、外耳炎をしやすい環境です。特に梅雨~夏にかけては注意しましょう。この時期、室温は25℃以下に保ち、湿度も60%以下になるように調節してください。
また、エリザベスカラーを装着する場合も注意が必要です。エリザベスカラーを装着すると顔周りの通気性が悪くなるため、長期間装着していることで外耳炎を起こす犬もいるようです。
発症していても気づきにくい箇所なので、エリザベスカラーを装着している期間は耳周りをこまめにチェックしてあげましょう。
ご自宅でシャンプーをする際も、耳に水が入らないように注意をしながら行いましょう。犬がシャンプーの途中に頭をブルブルとするのは、水が耳に入らないように防ぐためでもありますので無理に止めさせない方がよいという意見もあります。
③不適切なケア
脱脂綿、綿棒、ガーゼなどを使って耳のお手入れをされている方も多いかと思います。しかし、よかれと思ってやっているお手入れも、やり方が間違っていれば耳に傷をつけてしまったり、耳垢を奥に押し込めてしまったりと、外耳炎を招く一因になることがあります。
お手入れの知識に自信のない方、自己流でやってきたという方は、専門家にお手入れの方法を確認するとよいと思います。
原発要因
①寄生虫
ミミヒゼンダニが寄生していると、ダニがつけた傷や排泄物によって炎症が起こりやすくなります。稀にですが、ニキビダニ、イヌセンコウヒゼンダニが原因となっている場合もあります。②異物
お散歩中に植物の実や種が入った、被毛が伸びている、耳垢が過剰に溜まっているなど、耳の中にある異物が外耳炎の原因となることがあります。③アレルギー
「アトピー性皮膚炎」や、牛肉・乳製品・小麦など特定の食品によりアレルギー反応を起こす「食物過敏症」。または、特定のものに接触することで起こる「接触過敏症」、「薬物反応」によって起こるアレルギー反応によって皮膚が炎症を起こし、外耳炎の発症に繋がることもあります。
④角化異常
「原発性特発性脂漏症」というアメリカン・コッカー・スパニエルやシーズーに多く発症する遺伝性の疾患や、甲状腺ホルモンの減少により起こる「甲状腺機能低下症」、性ホルモンが増えすぎたり、減りすぎたりして起こる「性ホルモン不均衡」によって発生する皮膚炎が原因となることもあります。⑤自己免疫性疾患
天疱瘡とは、本来守るはずの生体を免疫系統が異常とみなし、皮膚を攻撃することで発症する皮膚病のことです。紫外線や遺伝的要因、細菌やウイルス感染、アレルギーが引き金となっていると言われていますが、はっきりとした原因は解明されていません。
「落葉状天疱瘡」は耳介に発症することが多く、かさぶたや脱毛が見られます。重症になると全身に広がってしまうこともあります。
他にも「紅斑性天疱瘡」は、血管の充血によって起こる発疹“紅斑”ができるのが特徴です。
「全身性エリテマトーデス」も免疫系統の異常にみられる疾患です。遺伝的要因やウイルス感染などが考えられますが、明確な原因は分かっていません。
⑥耳垢腺
耳垢腺(じこうせん)は外耳道にあり、耳垢が作られる場所です。この耳垢腺の分泌異常によって外耳炎を引き起こします。⑦腫瘍、ポリープ(皮脂腺由来、耳垢腺由来、鼻咽頭など)
皮脂腺由来の腫瘍「皮脂腺腫瘍」や、耳垢腺(アポクリン腺)由来の良性の腫瘍、鼻から上顎にかけてできるポリープや腫瘍によっても外耳炎を引き起こします。⑧ウイルス性疾患
犬システンバーウイルスに感染することで外耳炎を発症します。ただし犬ジステンバーウイルスに関しては、毎年ワクチンを接種していればほとんど問題はありません。永続化因子
①細菌
ブドウ球菌や、緑膿菌、大腸菌、コリネバクテリウムなどの細菌が耳垢に繁殖することよって、外耳道に炎症が起こり発症します。細菌による外耳炎の場合、根気強く治療をする必要があります。②真菌(マラセチアなど)
マラセチアという真菌(カビ)が耳垢に過剰に繁殖し、皮膚トラブルによる外耳炎を発症します。マラセチアは正常な皮膚にもいる常在菌ですが、梅雨の時期などのジメジメしたときには異常繁殖します。症状としては痒みが強いのが特徴で、細菌と同様に根気強く治療する必要があります。
③進行性病理学的変化
内腔の組織に炎症や腫瘍ができ、内腔が狭くなることで外耳炎を発症しやすくなります。基本疾患の治療をしながら、同時に外耳炎の治療をする必要があります。④中耳炎
外耳炎が進行すると、さらに奥にある中耳や内耳にも炎症を起こし、聴力に異常をきたすケースもあります。犬の外耳炎の治療法
外耳炎は治療しても完治しにくいうえ、再発しやすいと言われています。「よくなったみたいだから」と自己判断で通院をやめてしまう方も多いのですが、そのほとんどがすぐに再発してしまう結果となります。また、再発を繰り返すと内耳や中耳にまで炎症が達し、徐々に重症化します。初期の段階でしっかりと治療に取り組み完治させることが大切です。
外耳炎の治療法としては、細菌や真菌、寄生虫、アレルギーなどが原因の場合、外耳道を洗浄し耳垢をキレイに除去したあと、点耳薬を使用するのが一般的です。ミミヒゼンダニの場合は、駆除薬を耳の中や全身に投与し除去します。
最近では、ビデオオトスコープ(耳内視鏡)療法といって、L字型に曲がった犬の耳の中を、耳道や鼓膜まで見ることのできる内視鏡治療もあります。
犬の外耳炎予防チェックリスト
外耳炎は早期発見・治療がとても大切です。月に2回くらいは、愛犬の耳垢が溜まっていないか状態をチェックする習慣をつけましょう。ご自宅でシャンプーをする場合、耳の中がなかなか乾かないようなら、脱脂綿や綿棒を使って、しっかりと乾かすようにしましょう。特に垂れ耳の犬や、耳の中に毛が生えているような犬種は念入りに行うとよいでしょう。
日頃から耳のケアをされている方も、いまのケア方法が本当に正しいかどうか再度確認してみましょう。市販の耳洗浄液などを使うのも有効ですよ。
もしも、お手入れ方法に不安がある場合は動物病院へ相談するのがおすすめです。
まとめ
「外耳炎」についてまとめてみました。犬が首や耳を頻繁に掻く場合、外耳炎が隠れている場合があります。外耳炎は放置してしまうと、治りにくいばかりか重症化してしまうことがありますので、早めに治療をすることをおすすめします。
また日頃から耳のお手入れや、チェックをする習慣をつけると早期発見に繋がります。おかしいなと思ったら、早めに獣医師へ相談しましょう。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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