2017年10月22日
【獣医師監修】犬がストレスを抱えている時にみられる7つのサイン
監修にご協力いただきました!
小竹正純先生
多摩獣医科病院 院長
2002年麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2006年多摩獣医科病院 勤務
2016年多摩獣医科病院 院長就任(現在に至る)
[川崎市獣医師会、日本小動物歯科研究会、再生医療研究会所属]
最近、愛犬がしきりに身体を気にする、無駄吠えをするようになった、よくあくびをしているなど、愛犬の様子に違和感を感じていませんか?
また、愛犬がストレスを抱えていないか心配で、確かめてみたいと思っている飼い主のみなさん。今回は「犬のストレス」についてご紹介します。
犬がストレスを感じているときに起こる症状やサインなどチェックポイントがありますので、一度チェックしてみることをおすすめします。
もくじ [非表示]
犬がストレスを感じているサイン(症状)
1.身体を過剰に舐める
犬が”自分の身体をペロペロ舐める”行為は、毛や皮膚を掃除するグルーミング(毛づくろい)といって、どの犬でも行われる正常な行動です。これが、カーミングシグナル(ストレスサイン)かどうかを見極めるポイントは、舐めている場所にあります。
身体のいろいろな場所を舐めるのは、グルーミングとみなしても良いと思います。しかし、手や指の間など同じ場所だけを舐めている場合は、カーミングシグナルの可能性があります。
手や足、指の間の毛が茶色く変色していませんか?犬の舌はザラザラしているので場合によっては赤くなったり、毛が抜けてしまうこともあります。
2.身体を掻く
”身体をやたらと舐める”と同様に、同じところを掻き続ける行為もカーミングシグナルである場合があります。もし同じ場所を掻き続けるような場合、皮膚炎の可能性も考えられます。まずは掻いている場所がどのような状態かを観察しましょう。
もし炎症を起こしている場合は、すぐに獣医師に診てもうことをおすすめします。
3.自分のしっぽを追いかける
犬が自分のしっぽを追いかけてクルクル回る場合、いくつかの理由が考えられます。まずはストレスが溜まっている場合、自分のしっぽを追いかけることで発散させます。
次にクルクル回る行為を見て、過去に飼い主が喜んでくれたことがある場合。犬は、クルクル回る=飼い主が喜んでくれると学習します。
飼い主を喜ばせたいがために、クルクル回る行為をすることもあります。
もう一つは、退屈している場合です。特に子犬の場合、自分のしっぽという認識はあまりありません。
目に入ったものを追いかける犬の習性から、グルグル回ることが楽しくなってしまう場合もあります。
3つのうちどれに当てはまるか、よく観察をし、もしストレスが溜まっているようであればストレス解消をする工夫をしましょう。
4.無駄吠え
犬は吠えるのが自然な動物です。意思表示をするために、色々な吠え方をします。しかし、それが人間にとってはときとして迷惑な行動であったり、うるさいと感じたりします。それが無駄吠えなのです。
でも犬にとっては意思表示の一つであり”無駄吠え”は存在しないということを、まずは覚えておきましょう。
「お散歩に連れていって欲しい」「構って欲しい」「ご飯やおやつが欲しい」など、吠える原因には必ず理由があります。
このようなカーミングシグナルがみられた場合は、犬がストレスを感じている場合があります。
特に前よりもよく吠えるようになった場合は、犬との関わり方を少し見直してみるのも良いと思います。
また子犬期の社会化が不十分であった場合、不安や恐怖からよく吠えることがあります。犬にとって不安や恐怖を感じることはストレスとなりますので改善が必要です。
4.パンティングが頻繁にみられる
パンティングとは、犬が体温を調整するときにハアハアとする行為をいいます。人間は、全身に汗をかき発汗することで体温を調整することができますが、被毛に覆われている犬は汗をかくことができません。
パンティングをすることによって、温度を下げることができるのです。お散歩直後で、小型犬で 1 分間に 60 ~ 120 回、大型犬で 60 ~ 80 回と言われています。通常の場合、お散歩のあと少し経てばパンティングはおさまります。
しかし異なる原因によって起こるパンティングもあります。例えば、花火や雷など過度の不安や興奮を感じた場合に起こることがあります。
その場合、パンティングの他にもよだれを垂らす、落ち着きがない、人に触られるのを嫌がるなども併せて見られることがあります。
これらはすべてストレスによる行為ですので、対処する必要があります。
6.あくびをする
眠いときにするあくびですが、犬にとってあくびはもう一つ意味があります。ストレスを感じたときに、心を落ち着かせるためにするあくびです。例えば、飼い主から怒られたとき「争う意思はない=飼い主さん落ち着いて」という意味であくびをします。
またトリミングや動物病院などで緊張したり、知らない人に触られたりしたときも緊張を解くためにします。
7.同じ行動をとり続ける
これは動物園のチンパンジーやゴリラにもみられる行動で、柵の中を行ったり来たりしている光景をみたことがあると思います。犬で例えると、ドアの前やゲージの中を行ったり来たりする場合、ストレスを感じているサインです。
お散歩へ行きたい、ゲージから外へ出たいなどの欲求が考えられます。
犬がストレスを感じた時に出すサインをいくつか挙げましたが、見覚えのあるものはありましたか?
もし頻繁に見られるサインがあれば、日々の生活でストレスを感じやすくなっている可能性があります。
犬がストレスを感じる原因を減らす方法とは?
ストレスの原因を放置すると犬が負担を感じるようになり、その疲れがさまざまな不調や問題行動を引き起こす場合があります。先ほど挙げたサインの中で気になる項目があった方は、愛犬がストレスを感じる原因について考えていきましょう。
食事の見直し
まずはストレスをなくすことが第一ですが、併せて栄養管理もしておきましょう。というのも、ストレスによって消費しやすい栄養素があり、代表的なものとしてビタミンCがあります。また、栄養素にはビタミンE、ビタミンB、カルシウム、カリウム、亜鉛などもあります。これらを積極的に取り入れるようにしましょう。
また食事の量が適切でないと、これもストレスに繋がります。食事の量も含めて、再度見直しをしましょう。
環境の見直し
空調
室内が暑い、または寒いと感じている可能性はありませんか?犬と人間で気温の感じ方は違いますし、もちろん自分で気温を調節することはできないので、空調によるストレスは意外と多いものです。基本的に、エアコンをつけた状態で 25 ~ 28 ℃くらいを保つようにしましょう。
特にパグ、フレンチブルドッグなどの短頭種や、シベリアン・ハスキー、グレートピレニーズなどの寒い国出身の犬は暑さにとても弱いので注意が必要です。
騒音
人間よりの耳のよい犬は、音に対してとても敏感です。さらに恐怖や不安が強い、臆病な犬は、騒音がストレスに感じることもあります。例えば、工事や電車の音、他の家の犬の鳴き声が心理的なストレスになることがあります。
「近くで始まった工事の騒音がストレスとなりお腹を壊してしまう」といったケースも実際に聞きます。
そのような場合は、犬が日頃過ごしている部屋を変えるなどして、ストレスを軽減する工夫をしましょう。
パーソナルスペース
パーソナルスペースとは「近付かれると不快に感じる空間」のことです。見知らぬ人に抱っこされても友好的な態度をとる犬もいれば、尻尾を丸めて隠れてしまう犬もいます。逆に牙を剥く犬もいたり個体によって反応はさまざまです。
これは人間を敵対視しているのではなく、パーソナルスペースを侵害されることを不快に感じています。
その場合、無理にその距離を縮めたりしようとすると犬にとってストレスになりますので、犬舎やゲージなど、リラックスして過ごせる場所を確保してあげましょう。
トイレなど
室内トイレは清潔に保ちましょう。トイレシーツは汚れたらすぐに新しいものに変える、トイレトレーはこまめに洗うように心掛けてください。トイレが汚れていることがストレスとなり、問題行動に発展することも少なくありませんので注意が必要です。
体調の見直し
被毛のケア
長毛の犬は、毛が絡まってしまうとストレスに感じます。また、被毛が絡まることで蒸れて皮膚炎を起こすこともありますので、週 2 ~ 3 回くらいを目安にブラッシングをし、チェックするように心掛けましょう。
その際、皮膚に炎症がないかもチェックするとよいでしょう。
運動不足でないか
運動不足はストレスの原因となります。目安は小型犬で 1 日 30 分~ 1 時間程度、中・大型犬 1 ~ 2 時間程度が理想です。ただし、暑い日や雨の日は愛犬の様子をみて調整しましょう。
分離不安に陥っていないか
もともと群れで暮らしていた犬にとって、ひとりぼっちになることに強く不安を感じるという傾向があります。「分離不安」とは、飼い主から離れ、犬がひとりになることで過度に不安を感じることをいいます。
分離不安によるストレスにより、ストレスホルモンを分泌することで様々な病気を引き起こす原因にもなります。
コミュニケーションの見直し
「一人遊び」は上手か
飼い主と遊ぶことは、犬にとってストレス解消になります。しかし、飼い主も常に構ってあげるというわけにはいかないと思います。特にお留守番のときなどは、一人遊び用のおもちゃで遊べるようにしつけておくことで、一人の時間を楽しむことができます。
飼い主との交流の時間は十分か
飼い主とのコミュニケーション不足は、犬にとってストレスの原因となります。平日は、時間を決めてその間は思いっきり遊んであげたり、休日はお散歩コースを変えたり、少し遠出をしたりして気分転換することもストレス解消に繋がります。
まとめ
「ストレス」は目に見えないため、なかなか見つけにくいものです。しかし、ストレスを放っておくと、問題行動やあらゆる疾患の原因ともなりますので、早めに気づいてあげることが大切です。
いつもと何か違うと感じたら、まずはよく愛犬を観察しましょう。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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