2017年12月15日

【獣医師監修】犬の目から涙が出ている~流涙症(涙やけ)の原因・対処法~

監修にご協力いただきました!

岡田雅也先生

そら動物病院  院長

2007年帯広畜産大学卒

京都大学大学院医学研究科中途退学(在学中、臨床獣医師としてバイトを経験)

兵庫県内の動物病院で3年

愛知県内の動物病院で3年(副院長)

2015年11月8日そら動物病院開業

愛犬の目が涙でウルウルしていたり、涙やけによって目の周りが黒く(または茶色く)変色していて目立つようになった。

そのような症状が頻繁にみられるようになったら、注意が必要です。

放っておくと、目の周りだけでなく顔全体に涙やけが広がる可能性があります。

今回は、涙やけについて原因と対処法をご紹介します。

犬の涙やけとは?

ソファに横たわるトイプードル 涙やけは「流涙症」とも呼ばれます。

通常、涙腺→涙管→鼻へと排出されていくはずの大量の涙が、常に目にたまっている状態を指します。

その溜まった涙によって目の周りや、ひどくなると鼻の横の毛まで変色させてしまうこともあります。

涙やけ(流涙症)になりやすい犬種

トイプードルやポメラニアン、マルチーズ、シーズ、パグ、チワワなど小型犬や目が大きく鼻が短い犬種に多いと言われています。

毛色が白い犬は比較的分かりやすいですが、それ以外の場合、気付かずに放置してしまうこともあります。

小まめに目の周りをコットンなどで拭いてあげ、チェックするようにしましょう。

犬の流涙症(涙やけ)の原因

目を気にするジャックラッセルテリア

外的刺激によるもの

<特徴>
・目ヤニは無色、または黒

いくつかの原因が考えられますが、まず目に埃やゴミ、花粉などが入ってしまい眼球を刺激し、涙が出ている場合があります。

この場合は、目薬や精製水などで目を洗ってあげたりコットンで軽く拭いて取り除いてあげましょう。

目ヤニの色は、透明もしくは黒などの場合がほとんどです。

炎症などを起こしていないようであれば、特に心配はいりません。

まつ毛が内側に向いてしまい眼球を刺激してしまう「逆さまつ毛」や、瞼の皮膚が内側に入り込んでしまうことで、被毛が目に入りやすくなり、目を刺激して涙が増えてしまう「眼瞼内反」も考えられます。

眼瞼内反は、遺伝的な要素が大きく小型犬ですとトイプードル、シーズー、ヨークシャーテリア、パグ、ペキニーズなどに多く、大型犬ですとチャウチャウ、マスティフ、セントバーナード、ニューファンドランドなどに多く見られます。

また、毛の長い犬種においては、目の周りの毛が眼球を刺激してしまっていることも考えられます。

その場合は、小さなハサミで目の周りの毛を切ってあげるか、トリマーさんへカットをお願いするようにしましょう。

炎症によるもの

<特徴>
・目ヤニは黄色や黄緑色
・周囲に腫れがみられる場合もある

結膜炎や角膜炎、眼瞼炎が涙やけの原因となっている場合があります。

犬の結膜炎は、白目部分からまぶたの裏側を覆う結膜に、炎症が発生した状態をいいます。

結膜炎になると、痛みや痒みがでるため、しきりに目をこすったり、目を床にこすりつけたりという仕草が見られるようになります。

涙や目ヤニが多くなり、白目も充血します。

角膜炎は、黒目を覆っている角膜が炎症を起こしてしまう病気です。角膜炎も結膜炎と同様の症状がみられます。

特に目ヤニが黄色や黄緑の場合は、結膜炎や角膜炎が疑われます。

眼瞼炎は、眼瞼(まぶた)の周辺に炎症が発症する病気です。

瞼は、上まぶた、下まぶた、またはその両方に炎症を起こすことがあります。

涙が多くなるほかに、目の周りが赤く腫れたり、脱毛することもあります。

こちらを見つめるパグ また、結膜炎や角膜炎を伴うこともあります。

逆に目が乾燥するドライアイの原因にもなります。

ほかにも、ものもらいなど目の炎症によって瞼が腫れ、涙が出やすくなることもあります。

また、副鼻腔炎や鼻炎など、鼻の炎症によって鼻涙管が圧迫されることで涙が出やすくなることもあります。

涙のほかに、目ヤニが出てる、充血している、瞼が腫れている、鼻水が出る、くしゃみをするなどの症状があれば炎症による涙やけの可能性も考えられます。

一つでも当てはまる症状はある場合は、動物病院で診察をしてもらいましょう。

鼻涙管閉塞症によるもの

<特徴>
・涙や目ヤニの量が非常に多い
・目頭から鼻にかけて炎症が起きることもある

鼻と目を繋いでいる鼻涙管や涙管が詰まる病気です。

炎症や外傷、異物などによってこれらが詰まったり、狭くなったり、涙の流れが悪くなることで涙があふれ流涙症を起こします。

症状としては、多量の涙や目ヤニが出てる。目頭から鼻のわきが被れ、皮膚が赤く炎症を起こすこともあります。

先天的に鼻涙管閉塞症になりやすい犬種は、プードル、マルチーズ、コッカ―スパニエル、ゴールデンレトリバー、フレンチブルドック、パグなどの短頭種に多い疾患です。

その他病気によるもの

目の診察を受ける犬 「白内障」や「緑内障」など、目の病気が原因となっている場合もあります。

また、腫瘍が涙道を圧迫し涙が排出されにくくなることもあるので、気になるようであれば動物病院を受診しましょう。

新陳代謝の低下によるもの

涙はカラダの中の老廃物や不純物を排出する働きがあります。

しかし、老化によって新陳代謝が低下すると、体外に排出できなくなって溜まることで涙の量が増えることがあります。

特に新陳代謝が低下した、高齢犬に多くみられます。

食事の影響によるもの

体質によっては、ドックフードの主原料のタンパク質によるアレルギーや「保存料」「着色料」「酸化防腐剤」などの添加物が涙やけの原因となることもあります。

アレルギーを起こすことにより、眼瞼炎などが起こり、涙が多くなります。


流涙症(涙やけ)を放置しない方がいい理由

飼い主の両手に顔を乗せる犬 涙は栄養分が含まれた液体です。

栄養が豊富なうえ、湿っているので放置しておくと雑菌が繁殖しやすい状況になり、皮膚炎や感染症などを併発するリスクもあります。

また、常に目の周りが濡れていることで犬もストレスを感じることになりますので、涙目は放置せずに何らかの対処をしましょう。

流涙症(涙やけ)の応急処置・予防法

応急処置

目の中に異物が混入している場合は、ホウ酸や目薬で目を洗います。

目ヤニが出ている、目の周りが濡れている場合は、ホウ酸で湿らせたコットンで取り除きます。

目の周りの毛が原因である場合は、カットしてあげましょう。

結膜炎や角膜炎などの目の疾患がみられるような場合は、それらの疾患の治療を優先します。

予防方法

一度涙やけになってしまうと、被毛を元の状態に戻すのはなかなか難しいですので、日頃から予防しておくことが大切です。

お手入れの方法は、目の周りを清潔に保つようにしましょう。

涙が出ている場合は、やさしくコットンで拭き取ります。

マルチーズやシーズーなど目の周りに毛がかかってしまうような犬種は、こまめにカットするようにしましょう。

涙やけ(流涙症)は、見慣れるとそれほど大したことではないように思えてきますよね。

しかし、放置することで別の病気に繋がってしまう可能性もあるので、気になった時点で早めに対処しましょうね。

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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。


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