2017年6月9日
【獣医師監修】犬の血尿の原因は何?その症状と対処法
監修にご協力いただきました!
中村匡佑先生
アイリス犬猫病院 院長
2009年 日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業、その後札幌市内の動物病院を経て
2015年 アイリス犬猫病院開院
[日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属]
皆さんは「愛犬の今朝の尿」について質問されたら、状態やいつもと変わったところがなかったかなどを即答できますか?健康管理をするうえでチェックするべきポイントは、回数や色、臭いなどたくさんあります。
そんな愛犬の健康のバロメーターともいえる尿のトラブルの中で一番多い症状は「血尿」です。「血尿」と一口に言っても、原因はさまざまです。どんな原因があるのかを知ることで、いざ愛犬が血尿を出した時に正しい対応ができるようになります。
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血尿だけじゃない!犬の尿に表れる異常のポイント
愛犬が尿をした時、その尿が正常なのか、異常なのかを普段からしっかり見極める必要があります。普段の状態を把握しておかないと、異常が起きた際にも「何が変わったか」がわかりづらく発見が遅れてしまうからです。尿のチェックポイントは以下の4つになります。・色
・臭い
・回数
・様子(痛みを感じている様子か、など)
・臭い
・回数
・様子(痛みを感じている様子か、など)
愛犬の尿に気になる点があれば、上記のポイントを病院に行ったときに可能な限り具体的に伝えることで、原因追究のヒントとなります。
血尿の原因として考えられる病気は何?その症状と治療法について
細菌性膀胱炎・腎盂腎炎~症状、原因、治療法~
膀胱や腎臓に細菌が感染した場合に血尿が起こることがあります。尿から細菌をみつけることで診断されます。また、細菌性膀胱炎は、尿道の長さが短い女の子に多いと言われています。
細菌性膀胱炎・腎盂腎炎の主な症状
・血尿
・おしっこの回数が増える
・お水をよく飲む
・おしっこの臭いがきつくなる
・おしっこをする時に痛そうな様子を見せる
・おしっこの回数が増える
・お水をよく飲む
・おしっこの臭いがきつくなる
・おしっこをする時に痛そうな様子を見せる
本来、細菌がいない無菌的な環境である膀胱に、身体の外から細菌が感染すると言われています。細菌性膀胱炎の一番の原因菌は大腸菌です。その細菌が、膀胱から尿管、そして腎臓にまで感染が広がった場合を腎盂腎炎と言います。
腎盂腎炎に至った場合の症状
・発熱
・食欲不振
・急性腎不全
・食欲不振
・急性腎不全
このように症状が重症化することが多いので、要注意です。
細菌性膀胱炎・腎盂腎炎の治療法
治療法は、抗生剤や止血剤の内服が中心になります。ただし、尿検査をした時にpHがアルカリ性に傾いており、ストラバイト結晶(尿の中につくられる結晶のうちの一つ)が出ていた場合は、おしっこのpHを酸性に傾ける療法食を食べる必要がある時があります。おっしこのpHがアルカリ性に傾いていると、ストラバイト結晶が作られやすくなり、こういった環境だと細菌が繁殖しやすいと言われています。
尿路結石~症状、原因、治療法~
膀胱や尿道、尿管に結石があった場合に血尿が起こることがあります。結石によって、膀胱や尿道、尿管が傷つけられることで出血します。尿路結石の主な症状
・血尿
・おしっこが出にくそう
・おしっこの回数が増える
・おしっこをする時に痛そうな様子を見せる
・おしっこが出にくそう
・おしっこの回数が増える
・おしっこをする時に痛そうな様子を見せる
おしっこ検査だけでは、結石があるかどうかまでは分からないので、診断にはレントゲン検査やエコー検査が必要になります。
結石にはさまざまな種類がありますが、結石の8割以上がストラバイト結石とシュウ酸カルシウム結石です。ストラバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の比率は、ほぼ1:1と言われています。
ストラバイト結石は、リン・マグネシウム・アンモニアで形成され、細菌性膀胱炎を併発しているなどでおしっこがアルカリ性に傾いている場合にみられる結石です。おしっこ検査をした時、ストラバイト結晶がみられることもあります。
尿路結石の治療法
細菌がおしっこの中にいる場合は感染をコントロールしつつ、下部尿路ケア用の療法食を食べてもらうことで溶かすことができます。シュウ酸カルシウム結石は、シュウ酸とカルシウムで形成され、酸性に傾いているおしっこでできやすいと言われています。ミニチュアシュナウザーは発生が多く、それには先天的な代謝異常や結石を形成しやすい病気が多いことに関連していると言われています。尿検査では、ストラバイト結石と同様、シュウ酸カルシウム結晶が見られることがあります。
治療法は、シュウ酸カルシウム結石は溶解ができないため、外科的な摘出が第一選択になります。
結石は、存在している場所によっては重篤な症状を示すことがあります。特に、尿管(腎臓と膀胱を繋ぐ管)に結石があった場合は、腎臓でつくられた尿が膀胱にいかないため、腎臓に大きな負荷がかかり、急性腎不全になることもあります。
また、尿道に詰まった場合も同様に腎臓に大きな負担がかかります。早急な治療が必要になるため、尿が出ないなどの症状が見られた場合はすぐに動物病院に行きましょう。
結石は一度治療して完治しても、再度形成されることが多くなります。食事やサプリメント、おやつなどの見直しも同時に必要になってきます。
前立腺炎~症状、原因、治療法~
男の子は前立腺に炎症が起きたことが原因で血尿になることがあります。多くは、身体の外から菌が侵入することで感染を起こします。前立腺炎の主な症状
・血尿
・発熱
・痛み
・強張ったような歩き方
・発熱
・痛み
・強張ったような歩き方
急性の場合は血尿の他に上記の様な症状が見られます。多くの場合は、前立腺が肥大していたり、前立腺に液体が溜まっていたりするのが、レントゲン検査やエコー検査で認められます。
前立腺炎の治療法
治療法は抗生剤を飲むことが中心となります。去勢手術をしていない場合は、去勢手術が効果的とされる場合もあります。腫瘍~症状、原因、治療法~
中高齢以上では、腫瘍が尿路系(腎臓・尿管・膀胱・尿道・前立腺)に発生することで血尿がみられることがあります。尿路系に発生する腫瘍は悪性のものが多いため、早期発見・早期治療が重要になってきます。腎臓では腎細胞癌、膀胱では移行上皮癌、前立腺では前立腺癌が多いです。腫瘍の症状
症状で見分けるのは非常に難しく、特に膀胱がんの場合は、血尿や頻尿など膀胱炎や膀胱結石とほぼ同じ症状がみられます。膀胱炎や膀胱結石は尿検査で発見できるので、尿検査で原因が見つからなかった場合は腫瘍の疑いがあるとして超音波検査を受ける流れになるでしょう。検査の際に腫瘍を疑う明らかな異常がみられた場合には、血尿の原因が腫瘍の可能性があります。
腫瘍の治療法
治療法は、腫瘍の種類によって異なりますが、手術、抗がん剤、放射線などで行われます。犬の場合は放射線治療があまり行われず、一般的に摘出手術となります。
玉ねぎ中毒~症状、原因、治療法~
犬は特定のものを食べてしまった時にも尿が赤くなってしまいます。その代表が玉ねぎ中毒です。しかし玉ねぎ中毒の場合、厳密には血尿ではなく血色素尿という症状になります。- 「血尿」と「血色素尿」の違いって?
・血尿
尿が体外へ排出されるまでに通る器官で出血が起きており、尿に血が混ざってしまった状態。つまり血液が尿に混ざっていることで尿が赤くなっています。
・血色素尿
血液内の赤血球が何らかの形で壊れ(溶血)、その赤血球の色素が処理されず腎臓から排出されることにより尿が赤くなります。この場合は血が混ざっているわけではありません。
玉ねぎ中毒は、玉ねぎに含まれているある化学物質によって赤血球が破壊され、血管の中で溶血が起こることで“赤い尿”が出てしまっているわけです。加熱の有無や腐敗、乾燥、粉末などといった加工の有無によって毒性が失われることはないため、注意が必要です。
中毒症状は、体重の0.5%以上の玉ねぎを一度に食べた場合に高い確率で認められます。ワンちゃんの体重1kgあたり玉ねぎ(小)1/2~1/4玉相当を食べる量に相当します。玉ねぎ以外にも、ニンニク、ネギ、ニラなども同様の中毒を示すことが知られています。
玉ねぎ中毒の主な症状
・血色素尿
・コーヒー色の尿
・貧血
・食欲不振
・呼吸の乱れ
・粘膜の色が白くなる
・コーヒー色の尿
・貧血
・食欲不振
・呼吸の乱れ
・粘膜の色が白くなる
玉ねぎ中毒の治療法
玉ねぎ中毒に関しては特効薬が存在しないため、症状に合わせた治療がメインになってきます。フィラリア症~症状、原因、治療法~
心臓にフィラリアという寄生虫の親虫が寄生することで血尿が出ることがあります。フィラリアは、蚊によって媒介される感染症です。フィラリアの親虫は、心臓の肺動脈や右心房、右心室に寄生をします。血液中に虫が存在するので、虫がいることで赤血球が破壊され、血色素尿が出ます。フィラリア症の主な症状
フィラリア症が重篤だった場合、おしっこがコーラの色になります。このようなおしっこが出た場合は、非常に危険な状態ですので、早急な対応が必要になります。
フィラリア症は、血液検査で調べることができます。見つかった場合、さまざまな治療法が存在しますが、完治まで時間がかかることが多いです。この病気は、感染してから治す病気ではなく、予防をする病気の一つです。きちんと予防することで、ワンちゃんをフィラリア症の脅威から守ることができます。
血液の病気~症状、原因、治療法~
血液の病気が原因で尿が赤くなることがあります。血尿、血色素尿を示す病気としては、免疫介在溶血性貧血と免疫介在性血小板減少症があげられます。
免疫介在性溶血性貧血(血色素尿)
自分で自分の赤血球を破壊し、赤血球が壊れる病気です。壊れた赤血球の成分がおしっこに出ることで血尿を示します。おしっこ検査をした際、溶血を示す所見があり、血液検査では重度の貧血がみられます。免疫介在血小板減少症(血尿)
自分で自分の血小板を破壊することで、血小板の数が減る病気です。血小板とは血を止めるために必要な成分で、この血小板の数が減ると血が止まりにくくなり、血尿が起こります。血液の病気の治療法
血尿はこの免疫介在性溶血性貧血あるいは免疫介在性血小板減少症を治療することで、治すことができます。子宮卵巣のトラブル~症状、原因、治療法~
血尿が出ると、尿路系からの出血をまず疑いますが、避妊手術をしていないメス犬の場合は、膣に尿道が開口しているため、子宮卵巣の病気によっても血尿と似たような分泌物が会陰部から出ます。病気としては、子宮内膜炎や子宮蓄膿症が挙げられます。特徴として、子宮蓄膿症の時には、血混じりの膿が会陰部から出てきます。子宮蓄膿症は緊急疾患の一つです。
子宮卵巣のトラブルで起こる主な症状
・会陰部から分泌物が出ている
・元気がない
・食欲不振
・お水をよく飲む
・元気がない
・食欲不振
・お水をよく飲む
上記のような症状が見られたら、すぐに動物病院で診てもらいましょう。
血尿と子宮からの血混じりの分泌物を見た目だけで区別することは難しいので、自己判断は控えることをお勧めします。
愛犬が血尿を出した時に飼い主がするべきこと
血尿の原因は今までお話ししたように、尿路系の問題、それ以外の問題があります。きちんとした診断をすることにより、正しい治療ができます。まずは血尿の状態を観察する
血尿が出た場合、まず尿の状態をチェックして、獣医師に伝えましょう。尿の色は?
その日の排尿の回数は?
臭いは?
痛みはありそうか?など
その日の排尿の回数は?
臭いは?
痛みはありそうか?など
最初にも触れたように、これらが原因を追究する上で重要なポイントです。
血尿は出来る限り動物病院に持参する
色は主観が入ってしまうため、おしっこをペットシーツにした場合は、ペットシーツを持参するのも良いかもしれません。持っていけない場合は、写真を撮っておくのも良いと思います。しかし、一番必要なのは尿そのものです。動物病院に行って、待っている間に排尿させられるようであれば病院で採尿しても良いですし、お家でしかできない子は事前に家で入れ物にいれて持って行くと良いと思います。尿検査はとってから時間が経ってしますと検査結果が変わってしまうことがあるので、できるだけ新鮮なものを持って行きましょう。
もし、尿を持って行けない場合は、膀胱穿刺やカテーテルによる採尿ができますので、動物病院で相談してみましょう。ただし、疾患によってはこの方法で採尿できない場合もあります。
まとめ
血尿は自然に治るものではありません。正しい診断をして、適切な治療をしてあげる必要があります。尿に血が混じっていたら、まず動物病院で診てもらいましょう。その時にはお話した4つのポイントをぜひ伝えて下さい。
言葉を話せない愛犬の苦しみを伝えられるのは、飼い主だけです。日々、愛犬の様子をしっかり観察して、少しでも様子がいつもと違ったら動物病院に相談しましょう。
文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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