2017年7月14日
【獣医師監修】良性?悪性?犬の皮膚がんの種類と症状
監修にご協力いただきました!
中村匡佑先生
アイリス犬猫病院 院長
2009年 日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業、その後札幌市内の動物病院を経て
2015年 アイリス犬猫病院開院
[日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属]
皮膚の腫瘍には良性と悪性がありますが、一般的に外から見ただけでは判断できません。
今回は、腫瘍の種類や治療方法、予防はどのようにすればよいのか解説します。
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犬の皮膚がんの症状って?
皮膚の腫瘍にはできもののようなものだけでなく、「傷のように見えるもの」や「皮膚炎」のように見えるものなど腫瘍らしくないものもあります。なかなか治らない皮膚炎は要注意です。
皮膚の腫瘍の一般的な見た目には次のようなものがあります。
・硬いしこりがある
・目立つこぶのようなものがある
・なかなか治らない傷のようなものがある
・肛門がただれたようになる
・慢性的な皮膚炎がある
・目立つこぶのようなものがある
・なかなか治らない傷のようなものがある
・肛門がただれたようになる
・慢性的な皮膚炎がある
当てはまるものがあれば様子見をせず、早めに受診することをおすすめします。
犬の皮膚がんの種類
犬の皮膚の腫瘍は発生する場所によって「皮膚自体にできるもの」「皮下にできるもの」「皮膚の付属器(毛包やアポクリン腺など)にできるもの」に分けることができます。それ以外にも悪性度によって分類することもできます。ここでは、悪性か良性かに分けて解説します。
悪性腫瘍と良性腫瘍の違い
悪性腫瘍は発育のスピードが速く、周りの組織を破壊しながら増殖していく傾向があります。
一方、良性腫瘍は発育のスピードが緩やかで、周りの組織を押すように増殖していきますが、周囲の組織に浸潤したり破壊したりすることはほとんどありません。
皮膚の腫瘍の種類
次に、皮膚の腫瘍について悪性と良性に分けて解説します。<悪性の腫瘍>
肥満細胞腫
肥満細胞腫は皮膚表面のどこにでもできる腫瘍です。ごく小さな腫瘤を形成することが多く、見た目やさわり心地からは判断できないくらい、その形状は多岐にわたります。悪性度の高い肥満細胞腫は、多発する傾向にありますので注意が必要です。できものがあり、それを触っているうちに周囲が赤くなってくる場合には注意が必要です。
扁平上皮がん
扁平上皮がんは激しく増殖し、見た目は潰瘍のように見えることが多い悪性腫瘍です。日光にさらされる部分に発生する可能性が高く、色素の少ない犬に発生しやすい傾向があります。毛色の黒い犬は爪の周囲にできやすい傾向があるので、爪の付近にできる腫瘍で悪化や成長のスピードが速いものは要注意です。
頭部・四肢・腹部・股に発生することが多く、潰瘍化していて簡単に出血します。
早期発見し切除すれば転移することは稀ですが、悪性度が高い扁平上皮がんの場合は切除しきれないこともあり、付近のリンパ節に転移することもあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
メラノーマは目立たない黒い斑点から急激に大きくなる腫瘤までさまざまです。色は黒いものばかりではなく、灰色や茶色、無色のものもあります。初期は平坦で黒い腫瘍ですが、進行するにつれだんだん盛り上がってきます。悪性のメラノーマは大きく、皮膚が潰瘍を起こし細菌感染を起こしていることがしばしばあります。
皮膚にできるメラノーマの多くは良性ですが、爪の根元にできるメラノーマは悪性度が高いので要注意です。
リンパ管や血液から転移し、腫瘍の近くのリンパ節へまず転移し肺に転移することが多いと言われています。
皮膚型リンパ腫
皮膚型リンパ腫はシニア犬に発生しやすく、 9 ~ 10 歳での発生率が高いと言われています。なかなか治らない皮膚炎のような経過を取り、膿ほうができたり痒みが強くでたりすることも多くあります。皮膚型リンパ腫は、できている部分の表面が脱毛していることが特徴です。なかなか皮膚炎が治らないと思っていたら、実は皮膚型リンパ腫だったということもあります。
肛門腺がん
去勢していない雄犬に多く見られ、良性の肛門周囲腺種と見分けがつきにくい外見をしています。肛門周囲の腫瘤の進行が早く、潰瘍のようになってしまう場合は悪性である可能性が高くなります。良性の場合は去勢すると退縮する場合もありますが、悪性の肛門腺がんの場合は退縮せずその後も進行します。排便がしにくくなったり、手術できずに放射線治療になる場合もあります。
血管肉腫
血管肉腫はあらゆる部位にできますが、皮膚の血管肉腫は被毛が薄く、皮膚の色素の薄い犬に多く発生します。また、シニア犬に発生しやすく、特に去勢していない犬に多くみられます。日光性皮膚炎が認められる皮膚に血管肉腫が起こることが多く、日光が誘発すると考えられています。
<良性の腫瘍>
脂肪腫
脂肪細胞の良性腫瘍で中齢から高齢の犬に多く、雌の発生率は雄の 2 倍です。胸部、腹部、四肢、腋下によく発生します。通常は柔らかく、成長が遅いという特徴があります。浸潤しながら成長するのではなく、周囲を押し広げ膨張するように成長していきます。
四肢、胸部、腹部に多く見られますが、そのほかの箇所にでも発生する可能性があります。
組織球腫
組織球腫は高齢犬より若齢犬に多く発生する腫瘍です。ほとんどの場合 2 歳以下で発生しますが、それ以上の年齢でまったく発生しないわけではありません。組織球腫は急速に成長する円形、ドーム状の腫瘍です。頭部(特に耳)、四肢、胸部によく見られます。腫瘍の表面は毛がなく、光沢があり、潰瘍を起こしている場合もあります。
赤くはれているケースもありますが、犬は痛みや違和感を感じていないようです。
基底細胞腫
基底細胞は皮膚を構成する細胞の一種でそれが腫瘍化したものです。中齢から高齢でよく見られ、小型で硬く、皮膚を盛り上げるようにできる腫瘍です。頭部と頚部に発生しやすいと言われています。肛門周囲腺腫
去勢していない雄で中齢~高齢の犬で多く発生します。肛門の周囲に盛り上がるような形で発生します。小さい場合は去勢手術を行うと退縮することもありますが、一般的には腫瘍摘出と去勢手術は同時に行います。
肛門腺がんと初期の外見はほぼ変わりませんので早めに受診することをおすすめします。
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次ページ:犬の皮膚がんの原因とは
犬の皮膚がんの原因とは
犬のがんには様々な原因が影響しますが、皮膚がんの場合には特に日光が影響します。遺伝
レトリバーやシェパードなど純血種はがんの発生率が高いといわれていますが、基本的にはすべての犬種で発生します。純血種で発生率が高くなるのは血統を継続していくために同じ血統で交配していくため、血が濃くなることが一因かもしれません。遺伝子異常
発がん性物質や紫外線、その他の要因で遺伝子の配列に異常が起こることで発がん率が上がる可能性があるといわれています。日光にあたる
特に、血管肉腫や扁平上皮がんは日光の当たる部位に発生しやすく、色素の薄い犬は特に発生率が高くなります。日照時間が長い、日照量が多い標高の高い地域などは注意が必要です。
犬の皮膚がんの治療法
犬の皮膚がんの治療には、手術や放射線、抗がん剤などが中心になります。それぞれの治療のメリット・デメリットと、どのような場合に各治療法を選ぶのかについて解説します。外科手術
外科手術は「治癒」「生活の質の向上」などの目的で行うことが多いです。皮膚の腫瘍の場合は治療を目的にする手術を行うことがほとんどで、腫瘍の種類によって切除する範囲が異なりますが、腫瘍の取り残しがないように切除します。
“生活の質の向上”を目的に行う場合の手術は、完治を目指すものや、生存期間を延ばすためのものではないことがほとんどです。
例えば肺に転移があるが無症状の犬で、腫瘍が大きく腫瘍の一部が破れてしまっている場合がこれにあたります。
腫瘍の一部が破れたことで出血や感染が発生し、排膿が伴っていることで生活の質が低下している場合には、(肺への転移があるため完治は難しいが)生活の質を向上させるために出血や排膿のある腫瘍を切除する、という選択肢を選ぶこともあります。
外科手術は、生活の質を向上させたり、完治を目指すことが目的で、手術する前より状態が悪くなる可能性があるなら選択できない治療方法になります。
また、できている場所、腫瘍の大きさによっては切除後に皮膚の縫合ができない場合もあります。
放射線
放射線治療は、放射線照射装置を持っている施設でしか行うことができない治療法です。腫瘍組織に直接放射線を当てることで、腫瘍細胞を死滅させます。しかし、腫瘍周囲の正常細胞にも影響が及ぶことがあり、場合によっては障害が起こることもあります。障害の代表的な例としては脱毛、皮膚の黒変などが挙げられます。
放射線治療は複数回照射する必要があり、その都度全身麻酔が必要になります。
抗がん剤
抗がん剤治療は、外科手術では取り切れない場合や、診断時に付近のリンパ節や肺などに転移してしまっている腫瘍、悪性度が高く手術だけではほかに転移することがすでに分かっている腫瘍の場合に行います。外科手術は局所に対する治療になりますが、抗がん剤治療は全身に対する治療となります。
白血球減少や消化器症状など、抗がん剤による副作用も起こる可能性がありますので、定期的に検査を行いながら投与する必要があります。
次ページ:犬の皮膚がん予防で気を付けたいポイント
犬の皮膚がん予防で気を付けたいポイント
愛犬を病気から守りたい、という想いはすべての飼い主が抱く共通の願いです。では、具体的にどのようにすればがんは予防できるのでしょうか。がんが発生する原因には「遺伝(犬種)」「環境(日光・食事・肥満・汚染物質など)」が考えられます。
食事
食事で気を付けるのは“適量を食べること”と“添加物に気を付けること”です。肥満は万病のもとであることは犬も同様です。適度な運動
適度に運動することで、心肺機能も強くなり免疫力も上がります。環境
除草剤や殺虫剤などの化学物質、受動喫煙、直射日光などもがんの発生率を上げますので極力避けましょう。被毛の白い犬種は特に直射日光は浴びないようにしましょう。
早期発見につながる習慣
定期的に動物病院を受診したり、トリミングに行ったりすることで普段気づかないことに気づくこともあります。また、自宅でも全身を触る習慣をつけるようにしましょう。毎日のスキンシップが早期発見につながります。
まとめ
がんはどの犬種にも発生する可能性がありますが、高齢になるにつれ発生率がさらに高くなります。普段からしっかり体に触ることで皮膚の腫瘍は見つけることができます。また、なかなか治らない皮膚炎がある場合「この子は肌が荒れやすい体質だから」と自己完結せず、すぐに動物病院で診断してもらうことが大切です。
皮膚にできものを見つけたら大きくなる前に受診し、小さいうちに対処するようにしましょう。
大きくなると切除できないこともあります。
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文:Qpet編集部
犬の病気やしつけ、犬との暮らしに役立つハウツー情報などをお伝えしていきます。
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